第21話 芽吹きの涙
ザッザッザッ
明朝老練の宇宙冒険者ロドルは荒れ果てた土地で桑をおろし耕していた。
傍に子供背丈あるリスのような獣クイト族の三ぴきが老人の農作業を手伝っている。
「手伝うよ。」
かける声にロドルは腰をあげる。紫波だらけの顔にある白眉が不快げに寄る。
「金は出んぞ。」
ロドルの厳格そうな紫波を帯びた顔が厳しげな視線を向ける。
「いらない。あんたの漢気に惚れただけだ。」
大翔は少し茶化すように言葉を返す。
「けっ、勝手にしろ!。」
ロドルはそっぽを向き再び桑を盛り上がる畑の地面に打ち付ける。
「何をしているんだ?。耕しているのは解るが。」
大翔はロドルが荒れ地を耕しているのは理解しているが。何を耕しているのかは解らなかった。
「こいつらの主食である芋だ。クイト族はこの惑星の原産である芋しか食わん。だが儂に懐いていたこいつらだけは芋以外食べさせたことがあったから生き永びることができたんだがな。不幸中の幸いとうべきか····。」
ミウミウミウ
小さな子供の背丈のあるリスのような三ぴきの惑星人(ネヴィト)は耕した土に芋の苗のようなものを植えている。
「じゃがどうしても育たない。肥料も水も与えたんだが。主食とする芋だけは育たなかった。」
「土が死んでいるんじゃないのか?。」
ネテリークからはその土地に同じ作物が育て過ぎるとその土地の遺伝子が異常をきたし。死ぬと聞かされている。
「それも考えた。だが別の作物も植えたが普通に育った。こいつらの芋だけは育ったなかった。土地を休ませたりもしたんだかな。」
ロドルは歯に噛むように顔をしかめる。
ロドルは水も肥料も与えたと言った。土が死んでいるなら休ませたり。他の作物も育てたりもしたという。普通に実ったということは別の要因があると言うことだ。
環境の問題だろうか?。
企業が資源を堀尽くしてしまったならこの未開惑星の生態系は大きく変わってしまってもおかしくはない。
しかし…。
大翔はネテリークに教えられた知識を掘り起こす。
「大翔。宇宙の植物は以外と我が儘だ。一つでも何かしら欠けてしまうと育たないし実らない。だから育て実らせるためにもその植物が何を欲しているか見極めよ。それがその植物を育てさせるためのヒントとなる。」
師であるネテリークの言葉が頭に浮かぶ。
何を欲しているか…か。
大翔は土を手ですくい。指でこすってみる。
少し湿り気があるが。
別段土に異常はない。肥料も行き届いている。水もあげすぎてもいない。
ならば前の惑星環境と今の惑星環境が何かしら大きく違いがあるということだ。
何が違う?。
大翔は深く考える。
前と今で大きな違いがあるとすれば大翔はたった一つしか思い浮かばない。
そう、それは資源だ。
この惑星で採掘していた資源、エリクシル光石はこのへクサーギャラクシィ(六角銀河)の銀河外で宇宙船の燃料として需要と供給が多様されている燃料資源である。この惑星に前と今とで無いもの言えば企業、政府、組織が採掘していたというエリクシル光石しかほかならない。
「エリクシル光石か·······。」
このへクサーギャラクシィ(六角銀河)ではそれほど価値はないが。他の銀河では需要があるから高額て売買される。
このへクサーギャラクシィ(六角銀河)でも入手できるか?。
芋が育たない原因がエリクシル光石にあるかどどうか確証はない。だが昔と今のこの惑星の環境の違いがあるとすればそれしか考えられない。
兎に角、師であるネテリークに聞いてみるか。何か植物の芋のこともエリクシル光石のことも何か知っているかもしれない。植物にしか興味はないおの人だけど。人脈とか結構ありそうだしな。もしかしたらこのへクサーギャラクシィ(六角銀河)内でエリクシル光石の鉱脈を持っている知人の宇宙冒険者がいるかもしれないしな。
大翔は師であるネテリークの元に戻ることを決める。
バチバチバチバチ
大翔はロドルの家に帰ると老練の宇宙冒険者ロドルは夕飯の支度していた。
「ロドル、明日ネテリークの元に帰るよ。」
「そうか···早いな。引き留める理由もないからいいが。まあ、ネテリークに宜しく言っといてくれ。」
「ああ····ついでにネテリークに芋のこと聞いとくよ。植物に詳しいだろうし。」
「そりゃた有り難い。あの植物マニアならこいつらの主食である芋のことが何か解るやもしれねえ。感謝するよ。」
「ああ····」
ミウミウミウ
キィ
クイト族の三匹とコジョ族のムムが楽しそうに部屋で遊んでいる。
次の日の明朝、大翔は即惑星をたつ準備をする。
銀龍号に水や食糧など充分な補給を老練の宇宙冒険者ロドルに用意して貰った。
「悪いな。何から何まで。」
「いいさ、その代わりネテリークに伝えくれや。アイツとは仕事仲間とは言えんが。よくギルドで出逢った腐れ縁でもあるからな。」
「ああ····ネテリークに宜しく言っとくよ。」
ミウミウミウ
キィ
クイト族のミム、ラム、チム、三匹とコジョは寂しそうにお互いの自分の絡めている。あれが一種の別れの挨拶なのだろうか?。
「じゃ、ロドル。」
「ああ··若い宇宙冒険者に幸あれ。」
俺は軽い別れの挨拶をすませ。銀龍号に乗り込む。
コックピットの隣席に行儀よくムムが座る。
ムムがハンドルも何もない台に触れるとメタル感溢れる球体が現れる。
ふわふわと空中に停滞する球体をムムが触れる。
『生体認証確認。ナノ粒子放出。銀翼ヲ発動シマス。』
バサッ
銀龍号の船体の側面部分から銀色の翼が飛び出す。
ぶうううううう
銀翼から蒼白い粒子が放出される。
「ランディル文明の遺産を宇宙冒険者の探索船として使うとは····。」
普通に危険な代物でもあるランディル文明時代の宇宙船を新米の宇宙冒険者である大翔が普通に宇宙冒険者の探索船に使っていることに老練の宇宙冒険者であるロドルは半場呆れる。
ミウミウミウ
三匹のクイト族はぴょんぴょんぴょんと嬉しそうに飛び跳ねる
大翔は銀龍号のハンドルを握る。
バサッ
銀翼が動くと船体は膜でコーティングされる。
大気圏を突入しても重力作用を受けない特別な膜に覆われる。
船体がゆっくり角度を変え。上斜めで先端が空へと向く。
「銀龍号発進!。」
大翔は一気に銀龍号のペダル踏みつける。
バサァッ!
おおおおおおおおん~~~~
銀翼はバサッと音を立てると一気に静音の機械音を鳴り。物凄い勢いで銀龍号は大気圏を突っ切った。
「行ったか······。」
ミウミウミウ
老練の宇宙冒険者は去った新米の宇宙冒険者の若者を少し寂しげに見送る。
おおおおおおおおおーーーーー
静音が流れ。エヴェルティア(未確宇宙領域)の宇宙空間を進む。
「さて、結局、ネテリークにもう一つ頼み事する羽目になったな。聞き入れてくれるかな。」
「キィ?。」
ループの惑星でトキネソウを譲って貰った件もあるし。更にネテリークに頼み事するのは正直気が引ける。
「まあ、何とかるか。」
「キィ。」
大翔は取り敢えずネテリークに更に頼み事をすることにした。植物を譲ってくれる以外なら大丈夫だろう。多分。
「というわけだ。ネテリーク。エリクシル光石があるなら譲ってくれ。頼む。」
大翔は戻り。誠心誠意、師であるネテリークにお願いする。
「帰って来て早々頼み事とはいい御身分だな。全く。」
ネテリークは弟子が無事帰ってきて早々頼み事する態度に半場呆れる。
「ロドルと顔見知りなんだろ?。なら腐れ縁の由見でさ。」
大翔はロドルと顔見知りなら頼み事を引き受けてくれると思った。
「探眼のロドル。あいつもまだ生きていたか。お互いしぶといことだ。」
「探眼?」
「ロドルの二つ名だ。未開惑星の資源を見つけることに長けて出来たあいつの二つ名だな。そうか····あいつも己を省みれたのだな。お互い歳をとったものだ。」
ネテリークは少し昔を懐かしんでいた。
「しかしよくわかったな。ナノ植物に関して。」
ネテリークは素直に大翔の未開惑星の芋が育たない原因がエリクシル光石であることに感付いたことに感心する。
「ナノ植物?。」
「ナノマシーンを媒体として成長する植物だ。希にそういったナノマシーンで成長する植物があるんだ。」
「そうなのか?」
初めて知った。さすがは植物マニアと言われているネテリークである。俺の見知らぬ植物の知識を多く知っている。
「まあ、確かに植物を探索しているときにエリクシル光石の鉱脈のある未開惑星を発見したことあったな。植物しか興味なかったから放置していたけど。」
「放置って·····。」
へクサーギャラクシィ(六角銀河)の銀河外で多様に取引されている燃料資源を放置って。やっぱネテリークは植物以外興味がないのだと実感する。
「解った。昔の由見だ。ロドルにエリクシル光石を送る手配をしよう。」
「恩に着るぜ。ネテリーク。」
「何を言っている?。ただではないぞ。」
「えっ!。」
俺は突然ネテリークの発言に大翔は面喰らったように固まる。
ここは普通昔の由見で頼み事を引き受ける流れである。それなのにネテリークはただではないと抜かしたのだ。
「何を言ってるんだ?。腐れ縁の由見だろ?。」
「それはそれこれはこれだ。確かに困っているロドルを放っておけないが。依頼したのは大翔だろ?。」
「何じゃあそりゃあ?」
俺は激しく憤る。
何か附に落ちない。段々師であるネテリークにムカついてきた。
確かに頼み事をしたのは俺だけど。ここは昔の由見でただで頼み事を引き受ける流れだろうに。大翔は正直、師であるネテリークががめついと思えてきた。
「まあ、見返りはそんなに高くないぞ。とある植物を北西銀河ラビンクにある惑星レイケット届けて欲しいのだ。」
「へいへい、いわゆるパシりですね。どんな辺境の惑星にも届けて見せますよ。」
大翔はやさぐれるほどグレる。
既にぐれているが。
「まあ、そう腐るな。そこには大翔の好きそうなフード店があるぞ。」
「フード?俺は食べ物に釣られるほど安くはないぞ!。」
大翔は食べ物に釣られるほど自分は安くないと思っている。何故なら食べ物よりもスリルを求めるからである。
「何でもその惑星レイケットの料理人である惑星人(ネヴィト)が地球の大翔の故郷である日本でとある料理を完全にマスターするまで修行したそうだ。確か修行してマスターした料理名が『ラーメン?』····だったかなあ?。」
「なっ·····んだとっ!?」
大翔はラーメンという料理名に大きく目を見開く。
「ネテリーク!本当にレイケットの料理人がラーメンという料理をマスターしたのか!?。」
「ああ、確かにそう聞き及んでいる。宇宙冒険者からも濃厚なスープと麺がたまらんと大絶賛だと聞いている。」
「行くぞ!ネテリーク!。俺は惑星レイケットの植物を届けに行ってくる!!。」
大翔はものすごい勢いでネテリークに詰め寄る。
「そ、そうか。なら頼むぞ!。」
ネテリークの依頼を正式に大翔は引き受ける。
「よっ しゃああああああーーーーーーーーーーっっ!。これでネテリークの植物だらけの料理とはおさらばだ。」
「ああん?」
鋭い目付きでネテリークは俺を冷たく睨む。
「あ、いや、その、ネテリークの植物料理も充分に美味しいぞ(毎日は嫌だけど。)」
俺はネテリークの機嫌が悪くならないようにご機嫌とりをする。
「ふん、なら明日お使いを頼む。」
ネテリークは不機嫌になって家に引きこもってしまう。
ああ、こりゃあ暫く口を聞いてくれないな。
大翔は苦笑する。
「キィ?」
ムムの円らな大きな瞳が不思議そうに大翔を見つめる。
「まあ、これでロドルさんも何とかなるだろう。」
「キィ」
ムムの白い毛並みの顔とくりくりした大きな円らな瞳がニッコリと微笑む。
きっといつかナノマシーンの影響でクイト族の主食である芋も育つだろう。これで後悔の念が晴れるか解らないけれどそれは彼の問題であり。自分にどうこうできる事柄でもない。
大翔の口元が少しつり上がる。
「良いスリルだ·······。」
数年後·····
「これは一体どういうことだ?。」
ネテリークから送られたエリクシル光石と手紙の内容にロドルは畑の土壌にエリクシル光石の混ぜ合わせてみた。
それから暫く数年雑草しかはえなかった。
しかし、ロドルは畑に立ち寄ると大きなツタが伸び。辺り一面にびっしりとツタの植物が生い茂っていた。
三匹のクイト族はぴょんぴょんと飛び跳ね。その生い茂るツタの植物の真下を器用に幼い爪で掘り起こす。
ザッザッザッ
そこからなに蔓に繋がったものを掘り起こす。
ミム、ラム、チムの幼い爪の手には少し土に被っているが紛れもなく人間の大人の手のひらサイズの大きな芋が握られていた。
「ミウ、ロドル。芋が実った!。」
「ミウ、これで沢山食べられる!。」
「ミウ、豊作!豊作!」
ぴょんぴょんぴょんぴょん
三匹は嬉しそうに飛び跳ねる。
ドサ
ロドルの膝が畑の土の地面に崩れ落ちる。
ロドルの紫波がれた両手がゆっくりと素顔を隠すかのように大きく顔が塞がれる。
ううと呻き声が漏れる。
「良かった····本当に良かった······。」
両手で隠された紫波がれた顔の隙間から小粒の涙がぼろぼろとこぼれおちる。老人は悲痛まみれに泣き崩れる。
ぴょんぴょんぴょん
「ミウ、ロドル、どうしたの?どっか痛いの?。」
「ロドル、泣かないでミウ。」
「元気出して、ミウ。」
ミム、ラム、チムは突然泣き出す老人に心配そうに駆け寄る。
「うあああああーーっ!!ああああ~~!ああああああああ~~~~~~~~~~!。」
老いた老練の冒険者は何度も絶え間無いほどの嗚咽を漏らし。子供のように泣きじゃくる。
そんな老いた熟練の宇宙冒険者をリスのような姿をした三匹は傍をつかず離れずずっと寄り添う。
『うあ、ああ、あうあああ~、うあああああ~~~~。』
老人は激しく咽び泣く。
三匹は優しく幼い爪の手で何度も老人の頭を撫で続け慰める。
三匹のクイト族はまるで子供をあやすかのように何度も何度も何度も子供のように泣きじゃくる老練の冒険者をなぐさめ続けた。
▩▩▩▩▩▩▩▩▩▩▩▩▩▩▩▩▩▩▩▩
ネテリークの依頼とラーメンを求めて大翔はとある惑星に植物を運ぶこととなった。
次回 社会不適合者の宇宙生活 上等‼️
第22話
『無気力の怠惰』
不良少年は荒波の海へと飛び込む······
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