第1話 植園の惑星


ずうううう


宇宙輸送船が目的地である受け入れ先の惑星に着陸する。

宇宙輸送船の船底から噴射口が吹き出し。ゆっくりと植物の生えてない平地へと降り立つ。


しゅううう ガパッ

ハッチ扉の圧縮された空気が抜け、宇宙輸送船の扉が上下に開かれる。

監視者に連れられ。手錠つけたまま俺は宇宙輸送船の外へと出る。

輸送船の入り口から出た景色は確かに植物であった。見たことない植物や見たことがある植物まであった。

地面に雑草と一緒に生えているのこれタンポポだよなあ?。

ここは本当に別の惑星なのか?。道端に生える黄色の花どうみても地球原産のタンポポなんだが。

よく見れば周囲には見覚えのある地球産の植物もはえていた。桜や水仙、ひまわり、季節など関係なく花まで開いていたのだ。

何だこの惑星は·····。

一つ一つ同じ植物などなく。一つ一つが全く違う種類の植物が植えられていたのだ。


俺は植物の季節も種類もあべこべなこの惑星に呆気にとられる。


「来たようだな。」


アースエジュケイション(地球教育機関)の監視者は遠くからやってくる人を見て呟く。

遠くから歩いてくるこの惑星の住人らしい人物は女性だった。

見た目は成熟した中年の女性であり。俺とその女性の違う異星人の特長は髪と肌の色の違いだけだった。植物のような深い緑の髪を靡かせ。鼠色の肌をしていた。その女性はゆっくりと俺の前まで歩いてゆく。

俺と監視者の前に立ち止まるとゆっくりと視線を俺と監視者に向ける。


「素行の悪い生徒を受け入れて真にありがとうございます。ネテリーク様。」


素行の悪いって·····確かにそうだけど。面と先で言う言葉か?。

確かに俺は不良だが。受け入れ先にまで言う必要性あるのだろうか?。


「うむ、それよりも何故手錠をかけているのだ?。」


ネテリークという異星人は俺は手錠をつけられていることに眉を上げ不快に顔をしかめる。


「はっ、このものは地球で暴行事件まで起こしております。ネテリーク様に危害を加えるかもしれないので。」



俺は監視者の言葉にカチンとくる。

ふざけるなあ!。俺は確かに不良だが。女や子供にまで手を上げるほど落ちぶれちゃいねえ!。あくまで俺の喧嘩する相手は俺より強そうな相手限定なのだ。暴行事件起こした不良仲間はカウントできないが。


「監視者!。ここは教育の場ではないのか?。犯罪者の預かりどころではないぞ。直ぐに外しなさい!。」

「は、申し訳ありません。」


アースエジュケイションの監視者は直ぐに俺の両腕から手錠を外す。


「もう、いってよい。アースエジュケイションは若者達の教育を担うと聞いていたが。素行の悪さで判断するとは不快だ。」

「も、申し訳ありません!。」


アースエジュケイションの監視者はネテリークの異星人の女性の一言の言葉でそそくさと宇宙輸送船に飛び乗り帰っていった。

この異星人何者だあ?。

アースエジュケイションの監視者を一言で黙らせたのだ。見たところどうみても温厚な異星人の中年の女性しか見えないが。


「自己紹介を遅れた。私はこの惑星の住人ネテリーク・カステナールだ。」

「俺は小田切大翔だ。でも本当に良いのか?。暴行事件起こしたのは実際事実だぞ。」

「善い。目を観れば解る。何か事情があったのだろう。私の母屋に案内しよう。」


ネテリーク・カステナールという緑色の髪をした異星人に案内され。植物、主に俺としては雑草類をかき分け。彼女の住む家に到着する。


「これは······。」


俺は彼女の母屋を全体像を垣間見て絶句する。確かに紛れもなく家、建物だったのだが。その家は巨大な樹木と一体化した家だったのだ。ツリーハウスという樹木の上に家を建てるのは解るが樹木と一体化した家など見たことがない。

根をはる大木の真ん中に普通に扉が備え付けられていた。


ネテリークはガチャリと木製の扉を開けた。

俺はその様子を微妙な顔で観察していた。

何故ならここまでくるのにほぼSFのような体験をしていたからだ。軌道エレベーター、転送装置、自動扉、それがここにきて木製の扉ときたら当然萎えてしまう。


「どうした?。早く入ろう。」


ネテリークは眉を寄せいぶかしがる。


「ああ·····。」


ネテリークに促され。俺は渋々樹木と一体化した家の木の扉の中へと入っていく。

監視者言われた通り本当につまらない惑星生活が始まるような気がした。


コトコト


鍋を煮出つ音が聞こえる。

それと同時に鼻にとてつもない悪臭が放たれていた。


「ぐっ、臭い!。」


我慢強い俺でもこの臭さには思わず口走ってしまう。


「そう言えば薬草を煮出していたなあ。」

「薬草?」


薬草という言葉にネテリークという異星人はもしかしたら魔女ではないかと疑ってしまう。はっきり言って辺境の遠い銀河、遠い宇宙、遠い惑星に魔女なんてものは世界観が合わない。

トコトコトコトコ


「ネテリーク、お帰り。」


地を這うような四足歩行な走り方で真っ白な毛皮に覆われた人型の獣が駆け寄り。ネテリークの前に二本足で立つとニッコリと微笑む。白い獣耳をぴくぴくさせ。くりくりとした亜麻色の円らな瞳を向けてくる。


「ただいま、このこはコジョ族のムムだ。私と暮らす同居人だ。」


俺はコジョ族という異星人をまじまじ眺める。

真っ白な毛皮に胴体が少し細長く。真っ白の毛に覆われた顔の左右に鮮やかな三本の髭が生えていたを。長い先が少し黒っぽい尻尾を左右に揺らしている。

この獣じみた異星人何処かで見たことがあるんだが。別にコジョ族という異星人に面識があるわけじゃない。目の前のコジョ族という異星人の姿が地球の特に日本でみたような気がしたからだ。

真っ白で胴体が長く。尻尾先が少し黒っぽい···あっ!?オコジョだ!!。

俺はハッと閃く。

コジョ族のムムという異星人は昔東北の田舎でみた動物のオコジョに似ていた。だからコジョ族なのかあ?んな分けないか。

俺はコジョ族のムムもどうでも良さげな眼差しで見つめる。

コジョ族のムムはじっと俺を視線逸らさずに眺めていた。


「お客様?。」

「いや、我々と暮らす新しい同居人だ。地球人で小田切大翔という。」

「宜しく。」


俺は適当に挨拶をかわす。

獣じみた異星人にどう対応したら解らないが。とりあえず舐められないようにしないためにあえてぶっきら棒に返したのだ。得体の知れない者に対してはこの応対がよい。特に相手に舐められないように挨拶をかわすのが重要だ。好感を持つのではなく。嫌悪するのでもない相手の出方を知るために必要なことだ。


「キィ!。」


バッ

スリスリスリ

突然コジョ族のムムは俺にすりより。太股に頬擦りをしてきた。


「な、何だ?何だ?。」


俺は突然の獣じみた異星人の行動に大いに困惑する。


「どうやらムムは大翔のこと気に入ったようね。コジョ族の頬擦りは異性に対しての愛情表現よ。」

「て言うと?。」

「ムムはメスよ。」

「キィ~。」


スリスリ スリスリ

コジョ族ムムは何度も俺の脚に頬擦りしてくる。俺はその行為にげんなりとした表情でただ一言こう思った。

獣じみた異星人のメスに好かれても嬉しくないんだが·····。


      ◇◇◇◇◇◇


ザッ ザッ

受け入れ先の異星人の毎日の日課の朝は薬草摘みからはじまった。

毎日毎日朝から薬草摘みなどはっきり言ってあきる。何れと何れが薬草なのか解らないし。だいち薬草なんて俺にとっては全部雑草にしか見えない。昔子供の頃親によくやらされた草むしりとなんら変わらない。


「大翔、その地面に根を張る赤い苺を取ってくれ。」


苺?。俺は雑草の生い茂る草と草の間に蔓のようにはった草から赤い実が見える。

ちっ何で俺がこんなことを····。

俺は舌打ちしてこの惑星の住人ネテリークの指示に素直に従う。

正直やりたくないが。この惑星のことや宇宙のことなど何も知らない。親教育者のもとから脱走しようものならこの人工的に植えられた植物の大自然の惑星にしか行くところがない。俺はこの惑星から出る手立てがないのだ。それ以前に言語、文字、お金、宇宙船の操作など俺がこの宇宙で生きていく術、知識などまだ何も知らないのだ。ただ嫌だからこの惑星から脱走するなど愚の骨頂である。何も知らぬまま宇宙に旅立って。何処かの惑星で野垂れ死ぬのが二の舞である。だからこそこの受け入れ先である異星人ネテリークからここの宇宙の情報を引き出す必要性があった。俺は無謀な喧嘩や駆け引きなどしない。確かに自分より強い相手と喧嘩するのは無謀だろうが。これは俺の癖のようなものなので致し方ない。

俺は何ともしてもこんなつまらない惑星から脱出したいのだ。人生の大半がこんな年配者好きそうな薬草摘みで終わらせたくない。絶対このつまらない惑星から脱出してやる。


「ネテリーク、蔓のように生い茂った草に実るこの小さな赤い実だけとればいいのか?。」

「ああ、というよりは知らないのか?。その苺は蛇苺と言って地球原産だぞ。確か大翔の国の日本にも生育していた筈だが。」


俺はふと蛇のように這う草から実る赤い実を

まじまじと見る。嗚呼、確かに森の草むらに生えていた気がするなあ。どうでもいいことだから気づかなかったけど。


「蛇苺は解熱作用がある。普通の解熱剤で効かない熱も蛇苺なら効くというのがよくある話だ。」

「そうですか。」


どうでもいいけど·······。

俺は地面に這うように生えている草の小さな赤い実を次々と取り。小さな皮袋にいれる。せめて四次元ポケットや腐敗防止用の容器に入れないのかよ。宇宙の技術は地球より進歩しているんじゃないのか?。ネテリークという異星人は近未来的な道具を一歳持ち合わせてはいなかった。道具も器具も木製や鉄製で原始的な生活をしている。

はあ~スリルが足りねえ~。

俺は深い落胆のため息を吐く。


薬草摘みをすませ帰路につく。この惑星には本当に危険な生物はいなかった。ミルクを出すモルトという動物と卵を生む鳥の動物クワルが家畜として飼っているだけである。


モフう~ アックワ

牛のような動物がモフぅ~と鳴き声をあげ。ダチョウ並みの巨大な鳥もそれとあわせてアックワと鳴く。

モフぅ~と鳴くのは許せるとしてアックワはお前はやめろ!。色々アウトだ!。

ネテリークに頼まれモルトからミルクをとり。クワルから卵をとる。

用をすませ樹木と一体化した家に入る。


「ミルクと卵をとってきたよ。」

「ああ、ありがとう。」


俺は台所の机にとってきたミルクと卵を置く。


「キィ~。」


トタタタ

ムムが地の這うように駆けてきて俺の足許に着くと脚にスリスリと頬擦りしてくる。

俺に好かれる要素が何処にあるのだろう?。正直コジョ族のムムの対応はほぼ無視なのである。なのにコジョ族のムムというメスは何故か頬擦りするほど俺になついていた。


朝の食卓に巨大な鳥の目玉焼きが皿に置かれ。ミルクが木のコップに並々に注がれている。

後は草、草、草である。山菜ともゆうが。地球人の口に合うようにご丁寧にワラビやらゼンマイやらが用意されている。

俺はベジタリアンじゃねえぞ、。はあ~肉喰いてえ~。

一応育ち盛りの若者なのに。

俺は皿に盛られた草(山菜)をもくもくと食べる。


「やはりあきるか?。」


突然目の目の異星人が問い掛ける。


「いいえ、別に····。」


俺は本心を悟られぬよう言葉を濁す。


「まあ、この惑星は若者にとってはつまらないからなあ。私も隠居してこの惑星を買って住んでいるからなあ。」

「惑星を買う?。」


ネテリークという異星人が惑星を買う?という言葉に反応する。

惑星って買えるのか?。宇宙の常識を知らぬ俺には到底理解出来ない。


「私の若い頃に宇宙冒険者をやっててなあ。その稼いだお金で隠居生活にこの未開惑星を買ったのだよ。」

「宇宙冒険者!?。」


俺はその言葉に目を輝かせる。宇宙冒険者というのだから宇宙を冒険する職業に違いない。

俺は興味津々に聞き耳をたてる。


「大分食い付きが違うなあ。ならば折角だ。大翔が興味を祖剃られるような話をしよう。」


ネテリークの机に食器棚置き語り出す。

俺は真剣に話を聞く。


「まずはこの宇宙、中央銀河アレイストアには五つの謎が存在する。」

「五つの謎?学園7不思議のようなものですか?。」

「それに例えられるとどうかと思うが。まあ、そんなものだ。それはミスティックファイブ(五つの謎)と呼ばれ。ここの銀河で活動する宇宙冒険者なら誰しも挑まないものはいない。」


俺はじっとネテリークの宇宙冒険者の話を聞く。


「ミスティックファイブの五つ謎、それは文明、古代人、兵器、エネルギー、起源だ。」


ゴク

俺は喉唾を飲み込む。

隣ではムムが白い獣耳をピクピクさせていた。


「喪われし文明アレイスト、高度な技術、文明を持ちながらも何故か姿を消したとされる古代人アレイストア。惑星をも木っ端微塵に破壊できる兵器メトン、無限に循環するエネルギー回路、メビウス、そしてこのアレイストア銀河の根源、原初即ち始まりの起源。これらの合わせて五つの謎、ミスティックファイブと呼ぶ。」


男なら興味を祖剃られない筈がない。五つの謎、ミスティックファイブその言葉を聞くと熱く胸が燃えたぎるのを感じた。

ネテリークは大翔の生気の満ちた表情に唇が緩む。


「私は宇宙冒険者をしてこの五つの謎の内3つしか謎を解明出来なかった。」


ゴクり

俺には手の汗を握る。久しぶりにスリルありそうな話に巡り合わたからだ。

ネテリークは大翔の子供のような生き生きした素顔をみるとフッと含み笑いをして静かに語りだす。


「ではミスティックファイブ(五つの謎)を詳しく話すとしようか。」



▩▩▩▩▩▩▩▩▩▩▩▩▩▩▩▩▩▩▩▩


はみ出し者の不良少年である大翔は未開惑星のつまらない生活にうんざりしていたがこの銀河にあるという5つの謎に興味を抱く。


次回 社会不適合者の宇宙生活 上等‼️


第2話 『ミスティックファイブ』


不良少年は荒波の海へと飛び込む·····

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