第15話 暴食の果実

おおおおお


ランディル文明の遺産である宇宙船を入手し。エヴェルティア(未確宙領域)と未開惑星探索を許可をおりてから数日。俺とムムはエヴェルティア(未確宙領域)を航行しながら未開惑星を立ち寄り。未開惑星を探索、冒険を繰り返していた。

目的は宇宙冒険者としての修行とネテリークの課題であるトキネソウと同等の価値を持つ植物を探し出すことである。

ループする惑星に囚われている少女を救うためにネテリークに貸しを作ってしまったのだ。かしでもあり宇宙冒険者の卒業の課題でもあるトキネソウと同等の価値を持つ植物を探し出さなくてはならない。


ぶおおおおおお

粒の光と漆黒の海とも呼べる宇宙空間を静かに航行する。


「ムム、そろそろ帰るか?。それとも何処か手頃な未開惑星で休むか?。」


コジョ族のムムと一緒にいるとエヴェルティア(未確宙領域)の航行で立ち寄る惑星が危険か安全か区別できた。獣の第六感というやつだろうか?。ゴジョ族であるムムが獣かどうか謎ではあるが。


「キィ、大翔。安全な惑星近くにある。食べ物も豊富。」

「本当か!?。幸先良いなあ~。」


ネテリークの惑星まで帰るのも面倒になっていたところなので助かった。


ぶおおん ぶおおん

「何だ?何の音だムム?。」


突然船内に聞いたことのない音が流れ。俺は少し緊張が走る。


「キィ、大翔。救難信号を傍受した。」

「救難?、誰かが遭難しているのか?。」

「キィ、遭難デス。」

「···········。」


俺はペダルと銀龍号のハンドルを再び掴み直した。


「さて、救難信号てことなら助けに行くか。」

「キィ、大翔。何で無視するの?。」


ムムの小さな白い獣耳がいじけたように閉じる。


ごおおおお

銀龍号は救難信号を発した宙域に到着する。


「こいつは······。」


救難信号が発していた宇宙領域では宇宙船の残骸ではなく。宇宙船そのものが打ち捨てられていた。船体に外傷はなく。船の外面事態には異常は見られない。それが一隻ではなく何隻もだ。


「なんでこんなに宇宙船が····。」


まるで宇宙船の墓場である。そう言えば船の墓場という幽霊船のような類いの話が俺の故郷の惑星にあったな。ホラー的な話だからSF は関係ないと思うが。

しかし何が起こるか解らないのが宇宙だ。用心に越したことはない。


「ムム、救難信号を発している船は何処だ?。」

「キィ、もっと奥だよ。大翔。」

「ここの船に人間はいないのか?。」

「キィ、生体反応無し。ただ認証マーカーが奥の救難信号を発している宇宙船に集まっている。」

「認証マーカー?。」

「その人物のタグのようなもの。識別コード。」

「つまりその人間の身分証のようなものか。」

「キィ。」


救難信号を発している船に他の宇宙船の乗組員が集まっているのか?。でも何の為に。

俺の背中に異様に冷たい電気が走る。久しぶりの身震い武者震いである。

へへ、中々良いスリルじゃねえか。

こういうものを待っていたんだ。

俺は気を引き締めて銀龍号のハンドルを操作する。

打ち捨てられた宇宙船を慎重に横切り目的地である救難信号を発する船を探す。


「キィ、大翔。あの船だよ。」


ムムが前窓の宇宙空間に指をさす。

確かに一隻の大きな船があった。


「あれか······。」


救難信号を発している宇宙船は宇宙冒険者が乗る宇宙探索船のようなものではなかった。どちらかと言えば物資を運ぶ貨物船のようなものである。何でエヴェルティア(未確宙領域)に貨物船があるのか疑問に思うところがあるが。もしかしたら未開惑星開拓の企業の物資船かもしれない。

俺の銀龍号より二まわり大きく大型タイプの貨物宇宙船である。

俺は少しずつ救難を信号を発している船に接近する。ただし直ぐに攻撃、回避できるように慎重にだ。もしかしたら罠という線もあるからだ。ネテリークによると宇宙には海賊となる宇宙冒険者を襲う奴等もいるらしい。


ぶうううう

物資船の入れる場所を探す。


「そう言えば宇宙探索船での船の乗り込みは初めてだったな。」


一応ガースの宇宙船同士の連結や入船の仕方は習っている。


「物資船の出入口は何処だ?。」

「キィ、大翔。あそこ。」


ムムの指を指した方向に視線を向ける。貨物宇宙船の船尾部分の外面が青ランプが点滅していた。そこからぽっかりと四角いがコンテナ口だろうか?開いている。

どうやらあそこから入るらしい。


「あそこから入るのか?。ムム船内に人は何人いる?。」


銀龍号には生体反応を感知する機能もあった。


「キィ。生体反応は·····一人。」

「一人?。周囲には?。」

「キィ、いない。」

「いない······罠ではないのか?。」


認証マーカーがあの物資船に集まっているのに船内に生体反応が一人とは矢張異常である。何らかのトラブルにあった可能性がある。生体反応が一人であるならば他の危険生物や未知エイリアンの襲来の可能性は低い。しかし生体反応に反応しない生物やエイリアンがいないという可能性もない。或いは未知の病原菌やウィルスの可能性も充分にある。


「········。」


大翔は判断する。ここは救難信号を発っしている船にそのまま乗り込むか。或いは仲間を呼ぶか。仲間といっても俺達には親しい仲間なんていない。呼ぶとしたら同業者。ギルドとちゃんと繋がりを持った宇宙冒険者であろう。俺等まだギルドに登録もしてないぺいぺいである。ムムは正式に宇宙冒険者のライセンスを所持しているが。宇宙船の異常事態に対処する能力はないだろう。宇宙冒険者の対処能力はあくまで未開惑星の生存能力に注がれる。船のトラブル、災害の対処はギルドの調査員か。或いは処理班と呼ばれるヘクサーギャラクシー(六角銀河)だけ存在する片付け屋が担当する。処理班の処理分野は宇宙船、生物、ウイルス、植物、鉱物、空間の多岐にわたる。未確宙領域(エヴェルティア)の開拓は危険と隣り合わせだ。だからこの処理班と呼ばれる危険な分野行う部隊ができたのかもしれない。処理班が危険な仕事を行うのなら宇宙冒険者よりもそっちにいったほうがスリルが味わえるじゃないかと俺は思ってしまうが。ネテリークに宇宙冒険者となると言った手前処理班になることは諦めている。


「キィ、大翔どうする?。」


ムムの小さな白い獣耳をピクピクさせ。円らな大きな豆粒のような瞳が訴える。


「船内を確かめよう。」


宇宙冒険者としてその選択は間違いなのだろう。わざわざ危険な場所に飛び込む馬鹿はいない。だが俺はそんな危険な場所が大好きな正真正銘の馬鹿である。そこに未知のスリルがあるならば俺はそれを貪欲に得ようとするだろう。そんな危険な場所で簡単に死ぬなら俺はそれだけの人間だったということだろう。自己責任である。ただ······

隣に座る長い白い胴体を持つ獣のような相棒に大翔は視線を向ける。


「ムム、銀龍号で待っててもいいんだぞ?。どんな危険が待っているか解らない。」

「キィ!、大翔の相棒はムム。何処でもついていく。」


白い毛並みの長い胴体の胸部分が大きく張る。


「そうか······。」


腰についているホルスターベルトに触れる。銃であるマシアルナノガディックV4とアマリルフォルッソンSAIen、そしてRAYザーナイフが納められいる。もしものときはこれらを使う可能性も出てくる。緊急事態は予想しておくべきであろう。

銀龍号をゆっくりと物資船のコンテナ口につける。船体を傷つけないよつに慎重に動かす。物資船のコンテナ口は無重力になっていた。船内に入るとアナウンスの声が聞こえる。

 

「小型宇宙船ノ搭乗ヲ確認。無重力モードヲ解除シマス。船体ノ消毒モ開始。」


「メインコンピューターは生きているのか?。」


大型の宇宙船にはそれを管理するメインコンピューターが内蔵されているとネテリークから聞かされていた。メインコンピューターが大型宇宙船内全てのフロワを維持管理しているそうだ。

しゅううううう。

無重力が無くなり銀龍号の船体をが静かにコンテナ口の着地床に降りる。

ぷしゅううううう

銀龍号の船体が洗浄消毒される。

ネテリークから聞いた話だが。ランディル文明の遺産である銀龍号は菌やウィルスを付着させない構造になっているそうだ。菌やウィルスを防ぐ宇宙船を少なからずあるが。ここまで徹底して防菌、防ウイルスの船は見たことないそうだ。なんでも銀龍号が採取船であることが要因になっているらしい。


ガッ シン

着地の下敷きが機械仕掛けのバネの仕組みで銀龍号の船体を支えていた。


ぶううううーーーーーん

バネの下敷きが滑るようにレーンに乗り。コンテナフロワへと運ばれる。

ふうううううーーーガチャン!

物資船もあってコンテナフロワは広く。コンテナが何段も積まれていた。


「さてと降りるか。」

「キィ」


俺とムムは銀龍号の操縦席から離れる。

銀龍号のハッチの扉の前に立つ。

用心のためにセーフティを解除したマシアルナノガディックV4のグリップを握りトリガーに手をかける。メインコンピューターが生きてるといっても異常事態である。何か起こるか解らない。


ぷしゅううう

ぶいいいいいい

銀龍号の出入口ハッチ扉の圧が抜け。扉が上へと上がる。

俺はマシアルナノガディックV 4を片手に身構えて飛び出し左右を確認する。


ガチャ

「誰かいるか!。」


俺は一人いるであろう生存者に声をかける。


「や、やあ·······。」


コンテナの物陰から男が現れる。

俺は警戒したまま声をかけたものを直視する。

物資船の乗組員だろうか?。少し顔色が悪くやつれていた。

胸板の名前付きのプレートに視線を向ける。

プレートにはジョン・コビンと書かれていた。


「あ、あんただけか?。」


銃を構えたまま俺は聞き返す。


「そ、そそ、そうだよ。た、たた、助けにくれて。あ、あああ、ありがとう。」


顔色の悪そうなやつれた男はにこやかな笑顔を浮かべる。物資船の乗組員であろう男の会話は何処となくたどたどしく。呂律が回らない様子であった。


「あんた一人か?。他の乗組員は?。」

「み、みみみ、みんなし、しし、死んでしまったよ。むむ、無限か、か、か回路メビウスのこ、こ、ここ、故障でね。船がエヴェルティアで立ち往生して。他のみみ、みんなも、も、しょ食料の、うう、う、奪いあいでで、こ、ここ殺しあって。」

「食料の奪いあいだって!?。」


俺は険しげに眉を寄せる。

この宇宙空間の中で食料の奪いあいで殺しあいが起こる可能性は否定できない。こんな未知の宇宙領域で立ち往生し。

しかも閉鎖的な場所で気が変になってもおかしくはない。


「無限回路メビウスが故障しても船のメインコンピューターは生きているんだな。」

「ゆ、ゆゆ唯一のす、す、すす救いだよ。め、めめメイン、こ、ここコンピューターはで、電力がど、どど、独立してい、いいるからね。だ、だから救難信号もで、でで、できたんだ。」

「そうか·······」



俺は警戒を解き。マシアルナノガディックV4をベルトのホルスターにしまう。。物資船の乗組員ジョン・コビンは何処かホッと安心した様子だった。

特に物資船の生き残りの乗組員であるジョン・コビンの会話に違和感はない。ただ俺は少し引っ掛かりを覚えた。


「あんたの船を通る途中に打ち捨てられたように宇宙船があったんだが。知らないか?。」

「さ、さあ?し、しし、知らないよ。う、うう、宇宙災害に、ま、まま巻き込まれたんじゃなないかななあ?。宇宙災害はえ、ええ、エヴェルティアにお、おお、多いと聞くから、ね、ねえ。」

「宇宙災害か·····。」


宇宙にも自然災害のようなもの存在する。太陽フレアや磁気嵐、ヴォルスといった空間に穴が空いてしまう現象さえ起こりえるのだ。未知の宇宙領域であるエヴェルティア(未確宙領域)で宇宙の自然災害に遭遇してもおかしくはない。

ただあの打ち捨てられた宇宙船のタグがこの物資船に集まっているのは矢張おかしいと感じた。この男が何か隠しているのではないかと大翔は勘繰る。


「船内の様子を確認していいか?。他の生存者も探したい。」

「も、もも、勿論、い、いい、いいけど?。船にはぼ、ぼぼ、ぼ、僕しか本当にい、い、いい、いないよ。」

「念のためだ。それと自己紹介がまだだっな。俺は小田切大翔。一応宇宙冒険者だ。こっちが相棒のムム。」

「キィ。」


ムムの小さな白い獣耳をピクピクさせ。円らな大きな豆粒の瞳をニッコリ閉じる。


「こ、ここ、こちらこそよ、よよ、宜しく。ジョン・コビンだ。」


物資船の船内を確認することにした。船内を乗組員であるジョン・コビンが案内する。


ん?、何か甘い匂いがする。

コンテナフロワで大翔の鼻腔に甘く嗅ぐわし匂いが。コンテナフロワで匂いの元を辿ると床に食べかすのようなものが付着していた。それと一緒に液体?、いや果汁だろうか。ブラッドオレンジ色の液体が床に垂れるように付着していた。植物の多いネテリークの惑星の生活でそれが果物の果汁だといち早く大翔は気付いた。


しかしこの匂い····何処かで嗅いだような····。


宇宙冒険者としてネテリークの植物の授業を受けていた。その授業で確か似たよう匂いを嗅いだ気がする。


確かとても重要なことだったような·····。


脳裏に引っ掛かるものがあったが。唯一の生き残りである生存者ジョン・コビンに物資船を案内される。


▩▩▩▩▩▩▩▩▩▩▩▩▩▩▩▩▩▩▩▩


大翔は唯一生存者であるジョンを何かを隠しているのではないかと怪しつつも遭難船である物質船を散策する。


次回 社会不適合者の宇宙生活 上等‼️


第16話

  『一発の弾丸』


不良少年は荒波の海へと飛び込む······




  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る