第14話 時の花
ぶおーん! ぶおーん!
警告音が流れる。
「大翔っ!。」
ムムの声にはっと我に返り。即ブレーキペダルを踏みこむ。
ぶうううう
銀龍号は大気圏過ぎた上空に停止する。
「········。」
脳波とシンクロするハンドルを握りしめたまま大翔は沈黙する。
「キィ、大翔?。」
そんな様子にムムは首を傾げる。
暫くして沈黙した大翔の口が開かれる。
「ムム、ネテリークの元に戻るぞ。」
そういうと大翔は銀龍号のハンドルを切ると銀龍号の船体は傾きUターンする。
バサッ ぶわああああーーーーーん!
銀翼が羽ばたくとナノマシーンの分布した銀色の粉が散る。音速光速越えるスピードでそのまま未開惑星の大気圏を突っ切る。
「行ったのね······。」
ルースリは空を見上げ宇宙冒険者の少年とコジョ族の乗った銀色の翼が生えた宇宙船が来ないことを確認する。
「これでいいのよ。これで····。また私は変わらない1日を繰り返すだけ·····。」
うふふふ あはははは
父親と母親の仲睦まじい笑い声がテント周辺に木霊する。
ルースリは再び前と同じ日常を繰り返す父親と母親を諦めと絶望を宿した瞳でで見つめていた。
びぃぃぃぃぃぃーーーーーーーん!。
エヴェルティアを音速光速越えるスピードで進みあっという間にネテリークがいる深緑色の染まった惑星に着く。
銀龍号が膜を張ると重力無視してすんなりとネテリークの地上に到着する。
ベルトを外し即座に操縦席から離れる。銀龍号のハッチ扉を開けて俺とムムは外へ出る。
「早いご帰還だな。」
花を持ったネテリークは出迎えにきてくれた。
「ネテリーク。頼みがある!。あのキリンソウをまるごとくれ!。できれば鉢植えごと。」
「挨拶無しでいきなり何だ?。それにトキネソウは希少だといったはずだ。」
ネテリークは嫌そうに顔をしかめる。
トキネソウはどうやらネテリークにとってお気に入りのようだ。あからさまにあげるのを嫌がっている
「頼む!。」
俺は丁寧に頭を下げ懇願する。
「何か事情があるようだな······。」
俺がここまで真剣に誠意を込めたお願いするのは初めてことで。故にネテリークもただ事ではないと察する。
俺は未開惑星であったこと。そこで家族連れの冒険者がその惑星の時間の流れに囚われていることを話した。
ネテリークは俺の話を真面目に聞いてくれた。
「なるほど···。」
ネテリークは頷く。
「信じてくれるのか?。」
俺は正直宇宙に未知なことが沢山あるといってもこんなことは信じてくれないと思っていた。1日を繰り返す惑星など普通は初対面なら頭おかしいと思うだろう。しかしネテリークは俺の話を疑いもせず信じてくれた。
「未開惑星の時間軸に囚われた少女か·····。しかし何故トキネソウが必要と思った?。」
ネテリークは時間がループする未開惑星にどうしてトキネソウを必要なのかと俺に聞いてきた。
「ただの仮説でしかない。だが俺の勘としてはいけると思う。ムムが言っていたが時間と空間に囚われたならその時間にズレを生じさせればいい。そして生じさせることができる唯一の物がネテリークから貰ったこのトキネソウだ。トキネソウは別の時間と空間が流れているんだろう?。なら1日繰り返す彼女の時間の流れに干渉してズレを生じさせることができるんじゃないかと思ったんだ。確かに確証はない。俺は物理学の専門家じゃないからな。」
「なるほど。そこまでの断片的な状況で判断したか。お前は宇宙冒険者として生き残る術を既に身に付けているのだな。」
「術?。」
俺は困惑げに眉を寄せる。
「ああ、宇宙冒険者として必要な要素は未開惑星における洞察力と順応性だ。どんな状況下において即時の判断力が物を言う。しかしトキネソウとはな······。」
ネテリークは再び顔をしかめる。
それほどトキネソウという植物は貴重のようだ。
「ネテリークにとって貴重なものだと解っている。でも譲ってくれ!。金は宇宙冒険者になったらちゃんと払う!。」
「大翔、いっとくがトキネソウの価格は惑星一個分の三分の一の値段だぞ。」
「はあ?なんで花が惑星一個分の三分の一の価格なんだよ!。おかしいだろ。」
俺が花一つが惑星一個分の三一の値段などあり得ないと本気でそう思った
「大翔。お前はこの宇宙における物の価値というものをまるで解ってないようだな。」
「物の価値?。」
「異星人(ネヴィト)が混在するこの銀河にとって。物の価値は人によって変わる。植物とて植物に興味あるものなら高値で買い取るが。植物に全く興味無いもの者ならその物の価値はこの地面の転がる石ころぐらいしかならない。」
「マジかよ·····。」
宇宙はそこまで物の価値に落差があるのかよ。
俺は宇宙の価値感覚の落差に驚愕する。
ネテリークに言うには植物、鉱石、遺物ら各々の惑星人(ネヴィト)の好みによって価値が大きく変わると言うのだ。俺のいた地球では物価はある一定に統一されていたが。しかしここの銀河、宇宙そのものは数百か数千もいる惑星人(ネヴィト)の意志一つで物の価値が大きく変わるという。
「そしてこの地面に転がる石でさえも種族によっては宝石より貴重なものとなる。それが銀河のすむ惑星人(ネヴィト)の物価体系であり。お前が目指す宇宙冒険者が探索して入手する資源だ。宇宙冒険者はただ資源、鉱石や植物、遺物を見つければいいっていうものではない。見つけた資源を有効活用してくれる惑星人(ネヴィト)や、或いはその資源に本当に必要とする惑星人を見定め見極めなくてはならないのだ。」
「ギルドが全部やってくれるんじゃないのか?。」
俺はてっきり発見した資源はギルドが業者や企業にそのまま売り込むと思っていた。
「確かにそれもある。しかし未知のエヴェルティアには用途不明な資源や遺物もあるし植物もある。或いはこのヘクサーギャラクシー(六角銀河)の枠内だけ全く無価値な資源も存在する。見つけた資源をどう扱うかは結局のところ発見した宇宙冒険者の意志に委ねられる。」
「マジ····かよ····。」
俺は宇宙冒険者はただ未開惑星を探索して資源を発見すればそれだけですむと思っていた。しかし発見した資源の用途まで考えなくてはならないらしい。宇宙冒険者は発見した未開惑星の決定権を持つといった意味がここで本当に理解する。
「ネテリーク。どうにかトキネソウを譲ってくれないか?。ネテリークならトキネソウの価値よりもその同等となる植物の方が魅力あるんだろう?。俺はあんたが欲しがりそうな同等の植物を絶対見つけたすから!。」
「40点だな。交渉には程遠い。」
どうやらネテリークは俺に宇宙冒険者にとって必要な取引、駆引きを教えていたようだ。
「あんたにとって植物はお金よりも価値あるものだと解っている。それでもトキネソウをどうか譲ってくれ!。」
「何故その娘に固執する。家族連れの宇宙冒険者はお前にとって実質無関係で赤の他人だう?。」
「········。」
俺は熱くなった頭を少し落ち着かせ冷静になる。
確かにそうだ。俺は初めは無視して素通りするつもりだった。ただ彼女の悲しみと絶望を宿した瞳をみたとき俺は何故だかそのまま見捨てることができなかった。俺はドライな考え方をしていると思っていた。だが実際違った。。
俺は人を救うほど善人でも聖人でもない。寧ろ道から外れたはみ出しものであり不良である。そんな俺が誰かを助ける柄じゃないと正直今でもそう思っている。
だが·····
俺はスッと瞼を閉じた。
幼い頃のおぼろげな記憶。
その記憶から流れ出す約束の言葉。
親父······
「大翔、もしお前が間違った道を歩もうとしても結して弱い者を虐げるだけの人間にはなるな。お父さんとの約束だ。」
もうはっきりと覚えてない唯一亡くなった親父との約束の記憶。
俺はスッ瞼を開け。ネテリークの向けて力強い顔を向ける
「それが俺の信念だからだ·····。」
暫く俺とネテリークの間に静寂が包まれる。
「信念か···。宇宙冒険者にとってあまり使わなくなった言葉だな。だが····。」
ネテリークはフッと思い出したように含み笑いをする。
「悪くない。いいだろう。キリンソウの鉢植えを譲ろう。だが無料(ただ)ではない。エヴェルティアでトキネソウの同格の植物を見つけることを課題とする。発見できたら宇宙冒険者の免許皆伝とし。ギルドの紹介状を書いてやろう。」
「それって····。」
「だが勘違いするな。宇宙冒険者としてお前はまだまだ未熟だ。それなりの場数を踏まなくてはならない。正式に未開惑星の探索を許したが。ムムが即危険と判断した未開惑星は即撤退すること。解ったな。」
「了解した。」
棚からぼたもちとはこう言うことを言うのかもしれない。まさか正式に未開惑星の探索を許可してくれたのだから。
ネテリークは家にこもり。蕾のままである花の鉢植え持ってくる。
「これがトキネソウだ。いっとくがトキネソウはこの鉢植えのだけだぞ。」
ネテリークはまるで子供ように駄々をこねるようにトキネソウを渡すのを渋る。そんなにトキネソウを手放すのが嫌なのだろう。
俺には趣味は持っていないが。集めて丹精込めて育てた大切な物を手放すのは矢張辛いはずである。
「本当に悪いと思っているよ·····。ネテリーク。」
「悪いと思っていならさっさとトキネソウと同格な植物を見つけてくれ。」
ネテリークは未練たらたらに俺にトキネソウの鉢植えを押し付けるように差し出す。
俺はトキネソウの鉢植えを無事入手して。銀龍号に乗り込んだ。
◇◇◇◇◇◇◇◇
びぃぃぃぃぃぃーーーーーーーーーー!!。
低音の機械音が流れる。
いつもと同じ繰り返す未開惑星の1日に変化を与える宇宙船の稼働音である。
少女は空を見上げあり得ないといった表情でかたまる。
一度出ていった宇宙冒険者の少年とコジョ族が乗った宇宙船が再び戻ってきたのだ。
少女は諦め絶望し。再び同じ日常に戻ることを容認していたのに。その少年は再び戻ってきたのだ。少女は少年ことを馬鹿なのかアホなのかと本気でそう思った。ただ1日を繰り返すだけの惑星に何の用があるのだろう。助けにきた?。あり得ない。この状況を覆することなど誰にもできないのだから。
「やあやあやあ。貴方も冒険ですかな?。」
父親が同じ挨拶をする。しかし会話が微妙に違うのは別の時間帯に来たからだろう。
「それはもういいです。そちらの娘さんに用があるので。」
少年はスッと私に指を指した。
「ルースリですか?。はて?貴女は私の娘のルースリとはどのようなご関係で?。」
父親であるアクレは目の前の少年がルースリとは初対面であるはずだと思った。何故ならルースリとは家族と一緒に宇宙冒険者をやっている。友達を作る暇などないのだ。父親であるアクレは娘が寂しい想いをしていのでないかと心配にだったが。当の本人は機械のメンテや修理。未開惑星の冒険が楽しいと言って友達ができないことをあまり気にしていない様子だった。父親としては娘のそんな態度に将来大丈夫かと心配になってくる。
ルースリは何食わぬ顔で少年もとに寄ってきた。本当に知りあいのようだ。ああいう不貞腐れた態度は初対面の相手にしかルースリは絶対にやらない。
ルースリは少年の前に立つ。
「何にしにきたの?。帰れって言ったでしょう。」
ルースリの病んだ鋭い目を少年にむける。
「まあ、これは修羅場かしら?。」
ルースリの母親であるネウシは二人の間に流れる空気に変な勘違いをしてしまう。
「渡したいものがある。」
「渡したいもの?。」
ルースリは眉を寄せる。
「これだ。」
少年の手に差し出されたのは透明感のある藍色の鉢植えの花だった。透明の藍色の花は土の入った中位の鉢植えから葉っぱと何本も細い茎生えて。そこから三つくらい蕾をつけていた。しかしどれも花は開いていない。
「これ、何?。」
ルースリは再び少年に問いかける。
「トキネソウ。花だ。」
「みりゃあ解るわよ!。何で私に花の鉢植えを送るのか聞いているのよ!。」
ルースリは少年の態度に段々イラついてきた。繰り返す1日のストレスにまともな睡眠をとっていない。否、睡眠さえもまとにとれていないのだ。
「トキネソウはという植物は花が開くところは誰も見たことがない。何故ならトキネソウは別の時間、別の空間が流れているからだ。」
少年は坦々と説明する。
「だから何なのよ!。おあいにくさま私は機械しか興味ないの。エンジニアだからね。植物とか花とかに全然興味ないんだから!。」
ルースリは女の花よりも機械をいじる方が好きな変わりものである。他の年頃の娘は宝石や花とかに興味を持っているが。ルースリに関しては全くといっていいほど興味対象にはならなかった。
「俺は疑問に思っていた。何故俺が記憶を保有しているかを。本来なら記憶がないままあんたら家族と出逢っていた筈だ。」
「それはただの偶然でしょう。私のようにこの惑星の1日サイクルに巻き込まれた時。私も記憶を保有していたわ。」
「偶然にしては俺だけでなくコジョ族のムムも記憶を保有していたんだ。」
「だから何よ!。」
一緒にコジョ族も記憶保有していたのがどうだと言うのだとルースリはそう思った。
「俺の上着ポケットにトキネソウのいちりん添えていた。そして俺とムムは2日分のこの未開惑星の記憶を保有している。つまり記憶保有しているのはトキネソウのおかげであり。トキネソウはこの未開惑星の時間の流れを阻害させる効果あるということだ。」
「そんなのただの憶測じゃない。」
「かもしれない。だがもしトキネソウの時間の流れと未開惑星の時間の流れが干渉し阻害させることができたなら時間のズレが生じさせ。あんたのループ生活を終わらせることができるかもしれない。」
「········。」
ルースリは黙りこむ。
大翔はじっと真剣な眼差しでそんなルースリを見つづける。
「そ、そんなのただの仮説じゃない!。根拠がないわ!。」
ルースリは激しく非難するように反論するが内心。
「だがこのまま何もせずにいるよりは何かして諦めたほうがましだろう。俺はもうこの惑星には寄らない。これはあんたの問題だ。俺には関係ないからな。」
ルースリはかあ~と顔が熱くなるのを感じた。顔がみるみる赤くなる。怒りで煮えたぎるのような感情が心の淵から涌き出る。諦めと絶望の感情しかなかったルースリの久方ぶりの激情の感情だった。
「あんた全然優しくない!。そんなんじゃ女の子にモテないわよ!。」
「モテたくて宇宙冒険者になったわけじゃない····。」
「くっ。」
ああ言えばこう言うような言い合いになり。少年に良いように言い返されてしまい。ルースリは更に苛立ち腹が立った。
「じゃ、俺はもういく。諦めるのも抗うのも好きにするがいい。」
「言わせておけば。解ったわよ!。もし、この未開惑星を脱出したらあんたに文句の一つも言ってやるんだから!。」
「その意気だ。」
少年はニヤリと笑みを浮かべ。コジョ族と一緒にそのまま銀翼を生えた宇宙船に乗り込む。
「あの少年一体なんだったんだ?。」
痴話喧嘩のような二人の会話に父親であるアクレは呆然と会話をきくだけでついていけなかった。
「もしかしたら娘が冒険中ひそかにできたボーイフレンドかもしれませんよ。」
母親のネウシは茶化すようにアクレに告げる。
「ぬわぁ~にぃ!。娘は絶対渡さん!。」
アクレはふ~ふ~と息巻いて憤慨する。
銀龍号が去って数日。ルースリは少年からもらったトキネソウの鉢植えを大切に育てていた。トキネソウはいかなる環境に適応できるが。水やりだけはルースリはかかさなかった。
「なあ、あの花の鉢植えいつからあったっけ?。」
「さあ、私は知りませんけど。ルースリが何処かの惑星で買ったのでは。でもルースリは植物とかに興味なかった筈ですけど。」
前の記憶が全く無いクレフト夫妻は熱心に鉢植えに水やりする自分の娘に首を傾げる。
一年後·······
「花が開いている····。」
ルースリが毎日かかさず水やりをしていたテントの中に置いてたトキネソウの鉢植えの花が開いていた。1日サイクルを繰り返すこの未開惑星でまるで関係ないといった様子で見事な透明感溢れる藍色の花を開花させていた。
「うわぁ!何じゃこりゃあ!?。」
父親のアクレが宇宙探索船の近くで叫ぶ。
「どうしたの?。貴方。」
母のネウシが心配そうに駆け寄る。
「見ろ!。船の貯水タンクが空なんだ。昨日確かに補給したんだが···。」
父親のアクレは困惑げに頭ポリポリかきながら首を傾げる。
「流れが変わってる·····。もしかして!?。」
ルースリは意をけっして母親と父親のもとに走りだす。
「お父さん!お母さん!!。」
娘の張り上げた声にびっくりしたように両親は揃って娘に視線を向ける。
「ここ、変だよ!。もうこの惑星出ようよ!。」
ルースリはありったけの想いを込めて母親と父親に訴える。
少女の手が震え。心臓の音が高鳴る。
お願い···· お願い·····
少女の何度も何度も心の中で念じるように切に願うように祈る。
数秒の時間が流れたのか。ルースリにとっては長く感じられた。
「そ、そうだな····。少し気味悪いし。」
「そうね。ルースリの言うようにもうこの惑星(ほし)を出ましょうか。」
両親の返ってきた言葉にルースリの表情がぱあっ明るくなる。口元が緩み上がり初めて笑顔が浮かんだ。
ぶううううう
パチパチパチパ
アクレは宇宙探索船のスイッチを押して順にセーフティを解除する。
「よし!。無限回路メビウス正常に稼働しているな。ルースリ。ベルトはしっかりしめたな。」
「うん!。」
ルースリは元気よく父親に返事を返す。
「では、いざ行かん!。新たな冒険へ!。」
「うふふ、あなたったら。」
子供のようにはしゃぐ父親とそれを穏やかに見守る母親を眺めながらルースリは笑顔を浮かべる。ルースリの手には防衝撃用カプセルに入れられた開花したトキネソウの鉢植えを大事にそうにかかえていた。
どおおおおおーーーーーーーー!。
家族連れの宇宙探索船は底面の噴射口から放射され宙に浮かび。後ろの噴射口から一気に火力の高い粒子が放射されとびたつ。そのまま上空の大気圏をつき抜ける。
少女の長い長い1日はやっと終わりつけたのである。
······数ヵ月後にヘクサーギャラクシー(6角銀河)の間で家族連れの宇宙冒険者の活躍の噂がまことしやかに流れたと言う
・・・・・・・・・・・・
「はあはあ······はむっ。」
男は船内でおもむろに果実を頬張っていた。
男の両手には赤桃色に熟した果実を手にとり。交互に果実を噛っている。
「はあ···はあ····。はぐ!クチャクチャクチャ···。」
男は果肉を歯で噛み潰し。歪な咀嚼音が男の口からもれている。
「はあ····はあ···じゅううう····じゅう····じゅじゅううううう·····。」
果実から溢れでる果汁を息を吸いこむように啜り。啜りつくせない溢れでた血のような真っ赤な果汁はだら~んと口元から意地汚く垂れる。
男のしゃがむ床にはべっとりと血だまりができていた。その上に転がるようにいくつか死体が無造作に転がっている。
しかしそんな異常な様子など男は介せずに無我夢中に両手に持つ果実を交互に頬張る。
うお~ん うお~ん
男がいる船内の制御ターミナルには救難信号を送る赤ランプが発信音とともに静かに点滅していた。
「うあ····あ··ああ······。」
グシャ グシャ
男は唸り声を獣のようにあげ。果実を夢中で頬張り続ける。
▩▩▩▩▩▩▩▩▩▩▩▩▩▩▩▩▩▩▩▩
エヴェルティア(未確宙領域)を航行する大翔達は数隻の打ち捨てられた宇宙船と一隻の救難信号を発する遭難船と遭遇する。
次回 社会不適合者の宇宙生活 上等‼️
第15話
『暴食の果実』
不良少年は荒波の海へと飛び込む······
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