第5話 助手
俺は宇宙船の発着場にいる。ネテリークの紹介でガース・ベルンナフ という宇宙冒険者からトライアルを受けることになった。助手見習いのという形でガースの宇宙探索に付きあうことになっている。この宇宙、銀河にはバイト、日雇いという概念は存在しない。普通に職業を決めて働く。ただそれだけだ。それ故に派遣会社や職業紹介所というものも存在しないし。宇宙冒険者もなるのもならないのも自由である。しかしなる為にはベテランの宇宙冒険者から紹介状が必要であり。それがないと宇宙冒険者のギルド本部に登録することができない。いわば紹介状そのものがこの銀河にとって宇宙冒険者の資格のようなものだ。
「キィ。」
隣に白い獣耳をぴくぴくさせ。長い胴体を直立姿勢をとるオコジョのような異星人ムムも何故か俺と一緒にいくことになった。ネテリーク曰くコジョ族は宇宙の旅になれてるらしい。元々コジョ族という種族は惑星に定住しない種族らしい。
ごおおおおおおお
上空から中型の宇宙探索船が静かに降りてくる。周囲の木々を薙ぎ倒すこともなく。風も起こさないことで動力源がメビウスなのだろう。ブルー色にジャッカルのような動物がペイントされていた。ネテリークは用があるようで立ち会い人にはこれなかった。
静かに降りたったジャッカルのような動物がペイントされた中型の宇宙探索船は上下のハッチが開く。
ハッチが開かれそこから大柄で黒髭を囃した強面の男が現れる。耳が尖っているので何処かの惑星人(ネヴィト)なのだろう。
「何だ。ネテリークはいないのか。」
強面の宇宙冒険者はつまらなそうな顔をする。強面の宇宙冒険者の男の俺とムムと姿を捉えるとまじまじとみる。
「ふむ、地球の惑星人(ネヴィト)にコジョ族か。珍しい取合せだな。」
「宇宙冒険者の見習いとして付き添うことになりました。小田切大翔です。宜しくお願いします!。」
俺は生まれて初めて丁寧語で挨拶する。
強面の宇宙冒険者の男は太い手をひらひらと返す。
「そういう社交染みた行為は入らねえよ。俺の欲しいのは即戦力だ。」
「即戦力?。」
「腕っぷしの良い若者がいるから雇ってやってくれとネテリークに頼まれたんだよ。」
俺は嫌そうに顔をしかめる。
ネテリーク、なんつうことを言うんだ。俺は即戦力も何も宇宙に冒険するのは初めてだぞ。
親教育者の適当な紹介に俺は嫌々にしかめっ面を浮かべる。
「すみません。宇宙に出るのも。乗って操作するのも。未開惑星に入って冒険するのも全て初めです。」
「何だ新米かよ。はあ~。」
強面の宇宙冒険者は落胆のため息を吐く。
俺もため息を漏らしたいよ。
ジロリと強面の宇宙冒険者は俺とムムを見比べる。
「まっ、コジョ族も一緒だし。宇宙での知識はある程度どうにかなるだろう。わかった。宇宙冒険者としての知識は教えてやるよ。後は自分でどうにかしろ。生き残れそうにないなら置いていくがなあ。」
強面の宇宙冒険者ガースは冷たくあしらう。
「上等だ!。あっ!?すみません。」
いつもの癖にため口を出してしまい俺は思わず口をつぐむ。
ガースの太い黒眉が上がる。
「ほう、それがお前の素か?。悪かねえよ。そもそも宇宙冒険者はならず者の集まりだからなあ。いちいち言葉遣いに気を使う必要性もねえよ。大抵宇宙冒険者ってもんは口が悪いもんだ。特にこの銀河ではなあ。」
ガースの強面の顔がニカっと白い歯をみせる。
「そうですか·····。」
取り敢えず言葉遣いに気をつかう必要性もなくなったようだ。
「俺は宇宙冒険者ガース・ベルンナフていうんだ。一応A+級だ。」
「A+?。」
「何だ?宇宙冒険者のクラス級も知らんのか?。まあ腕っぷしのランクのようなものだ。実績を積めば自然と上がる。」
ガースは豪快に笑い声をあげる。
「そうですか。俺は小田切大翔、地球人だ。こっちはコジョ族のムムだ。」
キィ
ムムは長い白い尻尾を揺らす。
「そうかい。そんじゃ宜しくな。大翔、ムム。」
そして俺は宇宙冒険者ガース・ベルンナフの宇宙冒険者見習いになることになった。
ゴオオオ
宇宙冒険者ガースの宇宙探索船で静かな宇宙領域を航行する。
ネテリークの紹介で宇宙冒険者ガースの助手として働くことになった。この宇宙、銀河にはバイト、日雇い という概念は存在しない。普通に職業を決めて働くただそれだけだ。それ故に派遣会社やハローワークという職業紹介も存在しない。知識と技術を身に付けてなりたいものになるというこの銀河の異星人はシンプルな考え方なのだ。その分職業訓練というものがないからほとんどが実践訓練でぶっつけ本番である。ただ宇宙冒険者に関しては危険な惑星に向かい。危険な生物に遭遇する確率があるのである程度の就業期間を設けられる。
「どんな惑星に向かうんですか?。」
「未開惑星だ。未確宙領域(エヴェルティアに入る。エヴェルティアは知ってるなあ?。」
「一応。」
親育者であるネテリークから教えて貰っていた。宇宙冒険者は未確宙領域(エヴェルティア)という未だ開拓されていない宙域で冒険探索して未開惑星を見つけるそうだ。惑星にある資源や遺跡を探索して貴重な植物や鉱物、古代遺物など見つけたりしてそれをギルドを通じて売買して生活しているのだ。その冒中に危険な宇宙生物に遭遇したり。未知のウィルスとかに感染するリスクなどがあるそうだ。それだけではない宙域を航行する途中にも太陽フレアや隕石郡の襲来、宇宙嵐などそれが以外にも未知の宇宙自然災害に遭遇したりもする。ちょっとやそっとで宇宙冒険者として宇宙を航行探索することはできないのである。どれも命懸けだ。
別に死ぬのが怖いと言うわけではない。人間死ぬときは死ぬ。そんな覚悟もなきゃ宇宙冒険者なんてやってられない。だがスリルも冒険も味わえずに無駄に死ぬのは御免被りたい。俺は死ぬとしたら色んな危険なことを味わってから死にたいのだ。冒険の半ばで死んでしまうことは、はっきり言えばゲームプレイ途中にゲームオーバーになるようなものだ。
そんな人生を俺は味わいたくない。
せめて死ぬなら危険なスリルを味わいつくしてから死にたいのだ。
俺がイカれてると思われるだろうが。それが俺なのだから仕方がない。
俺はスリルを貪欲に求める人種だ。
『俺達の目的地は中央銀河アレイストアから北西にある北西銀河ラビンクにあるエヴェルティアα宙域のマルデムルという未開惑星だ。』
「マルデムル?、未開惑星なのに既に名前がついているのか?。」
俺は未確宙領域に未開惑星に名前が付いていることに疑問に思った
「ああ、既に先駆者の宇宙冒険者が見つけた惑星だからなあ。まだ見つかっていない未開惑星なぞそう多くはないぞ。」
「そうか·····。」
俺は少しがっかりした。まだ足を踏み入れたてない未開の地の惑星の冒険を楽しみにしていたからだ。だがまあ既に見つかっている未開惑星なら。その惑星の情報もあるだろし。何が危険なのか直ぐ知ることができるだろうから。危険性は少ないのだろう。それはそれで俺はがっかりだが。
「マルデムルの植物サンプルを採取するのが俺達の今日の依頼だ。」
「依頼?。」
「宇宙冒険者はエヴェルティア(未確宇宙領域)を探索したり。依頼者から依頼されてある特定の惑星から生物や植物、鉱物のサンプルを採取したりもするのさ。」
「はあ、つまり今日は薬草摘みということですか。」
俺は嫌な予感がした。
「おお、察しがいいなあ。そうだ。」
宇宙冒険者ガースはニンマリと笑みを浮かべこたえる。
やっぱり~
俺はがっくりと肩を落とす。
せっかくのベテランの宇宙冒険者と同席で宇宙を冒険できると思ったが。よりにもよってまた未開惑星での薬草採取かよ。未開惑星の薬草摘みなんてネテリークの惑星で毎日やってるわ!。
俺は顔に出さないがかなり不貞腐れていた。
「危険な生物もいないから安心しろ!。」
ガースが更なる追い討ちに俺は余計に落ち込む。ガースは俺が初めて宇宙冒険者の見習いとして探索するから気遣ってマムデビルの情報を教えたのだろうけど。余計に萎えるわ。寧ろ知らないほうが良かった。
俺は段々と気が重くなってきた。
危険な生物がいない未開惑星なんて何のスリルもありゃしねえ。
「そんじゃワープするから椅子に座ってベルト閉めろ。ワープは揺れたりしないが。ワープ航行中にどんな事故に遭遇するか解らないからな。」
「解った·····。」
俺は落ち込むのをやめ宇宙探索船内にある後部座席に座る。ガースの宇宙探索船は前に操縦席2つと後部に座席が2つの計4つ席が設置されていた。
トタタタ
ムムも前に進み地を這うようにもう片方の操縦席に座る。
「キィ、手伝う。」
「おお、コジョ族が宇宙航行をサポートしてくれるなら百人力だな。」
「コジョ族って宇宙に詳しいのか?。」
前コジョ族が一緒なら問題ないと言ったことが気になった。
「ああ、明確にはこのアステリア宇宙全域に詳しいといっても過言ではない。知識というよりは勘に近いものがあるのだ。その勘でアステリア銀河やその他の6つの銀河も何の迷いも無く宇宙を航行できるんだよ。」
「ふ~ん。」
俺は特に気にすることもなかった。
「んじゃ、出発するぞ。」
パチパチパチ
ガースは天井の上にあるスイッチを順に押し。操縦席の中央真ん中にある設置されたレバーを引きハンドルに手をやる。
スーーーー
操縦席の窓から写る宇宙の星ヶが全て線状へと変わる。
シュン
船体が銀河から一瞬にして消える。
《《《《《《《《《《《《《 シュッ!
光の粒がまばらに散る宇宙空間に発光して小型の船体が姿を現す。
「着いたぞ。」
「もう!?。」
全然宇宙を航行した気がしない。
ワープした時間もほんの数秒だった。
俺はベルトを外し立ち上がる。
「アステリア銀河と他の6つの銀河とはそれほど距離の開きはないんだよ。それでもワープ無しで全速力だとだいたい二週間位かかるがなあ。」
「そうか。」
ワープ無しで二週間とはかなりの距離だろう。といっても俺には宇宙の何万億光年などの銀河と銀河の距離感など知るはずもない。
「あれがマムデビルだ。」
俺はガースの指差した方向に視線を向ける。
操縦席にの前窓には緑と白が塗りたくったような惑星が浮かんでいた。
「原生林の多い惑星だ。当然酸素もあるし。食べ物も収集できる。残念だが鉱石とか見つかってはいない。希少な植物が豊富だから宇宙生植物学者からの依頼も多い。」
「そうかよ····。」
俺の口許が皮肉じみたように引きつく。
俺も植物の宝庫みたいな惑星に毎日暮らしていますがね。
「じゃ、席に戻れ。マムデビルに大気圏に突入する。危険は無いがかなり揺れる。」
「もっと揺れるほうが好きなんだがなあ。」
俺は嫌味たらしい言葉を返す。
「なるほど、お前という人間が解って来たよ。怖いもの知らずってやつか。」
ガースは不機嫌そうにいかつい眉間に紫波が寄る。
「いや、ガース。俺は怖いもの知らずなんかじゃねえよ。怖いことが好きなんだよ。全銀河にある無数のスリルを味わいたいのさ!。」
俺は遠慮せずに自分の本音をさらけだす。
「お前みたいな奴は宇宙冒険者にも何度か見たことがあるが。そういう奴は早死にするもんだ。」
ガースに冷たい視線を向けられる。
どうやら俺を無謀で無鉄砲な人格者だと思われているようだ。
「俺は死なねえよ。ガース。死んだらスリルが味わえないからな。だから俺は死なないようにあんたの長年の宇宙冒険者の知識と経験を惜しまずに学ぶのさ。」
「········。」
ガースにジロリと紫波だらけのいかつい視線が俺の目を見透かすように向けられる。
「なるほど····。ただの馬鹿か命知らずとは違うようだな。芯ができているようだ。そういう奴は危険な状況でも対応できたりするもんだが。それでもほんの一部だかな。」
「なら、俺はそのほんの一部になるさ。」
「ふん!、口の減らねえガキだ!。さっさと席に座れ!マムデビルに突入する。」
ガースは不貞腐れたように吐き捨てる。
「あいよ。」
俺は元気よく返事を返し後部座席に戻りベルトをしめる。
ガースは操縦席にハンドルに手をかける。
操縦席の隣では二人の会話の邪魔しないようにコジョ族のムムは先っちょが黒く長い白い尻尾を器用に毛繕いしていた。
ガースのいかつく無骨な口は久しぶりにニヤリと不適な笑みが浮かへだ。
ネテリーク面白れえガキを弟子にしたもんだ。あるいわ化けるかもな。
ガースが操縦する宇宙探索船は緑と白が斑に広がる惑星へと進む。
▩▩▩▩▩▩▩▩▩▩▩▩▩▩▩▩▩▩▩▩
ベテラン宇宙冒険者ガースの助手として大翔は未開惑星マムデビルの植物サンプル採取を手伝う。
次回 社会不適合者の宇宙生活 上等‼️
第6話 『ランディル文明の遺産』
不良少年は荒波の海に飛び込む·······
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