第7話 再利用
「どうしてただの未開惑星の植物採取が宇宙船を発見に繋がるのだ。」
ザルネスクの苔まみれの宇宙船を前にしてネテリークはガースと同じようなことを言ってぼやいていた。
持ち帰った古代宇宙船の隣でうるうると潤ませて感激しているマムデビルの持ち主(決定権)を持つネビアがいる。
「ネテリーク・カステナール様。ファンです!。サインをお願いします。」
「ああ、いいよ。」
畏まった態度でネビアはプレートのようなものを手渡す。ネテリークはプレートに触れると見たことのない宇宙文字が描かれ刻まれる。それをネテリークは渡す。
「ありがとうございます!。一生の宝物にします。」
プレートを胸に抱きネビアは嬉しそうにする。
それ、サインの意味あんのか?。
俺はそんな疑問を浮かべる。
「さて、それでこのランディル文明の遺産を大翔が欲しいと。」
「駄目か?。」
発見したのは自分達だが。矢張図々しかったか?。
「取引に関しては問題ないが。大翔はまだ正式な宇宙冒険者ではないだろ。」
「あっ!?。」
俺はハッと我にかえる。確かに俺はまだ宇宙冒険者見習いであり。正式な宇宙冒険者ではなかった。正式な宇宙冒険者になるにはある程度ベテランの宇宙冒険者から経験をつみ。先輩の宇宙冒険者から認められることで正式な宇宙冒険者ギルドに登録することができるのだ。俺は紹介状を経験豊富な宇宙冒険者から貰わなくてはいけないのだ。ここで言うならネテリークとガースだが。
「ではこうしよう。私の名義でこのランディル文明の遺産を私が貰うが良いか?。」
ネテリークがネビアに聞く。
「はい、問題ありません。ネテリーク様に使って頂けるなら私は本望です。」
恋多き乙女のような感じでネビアは承諾する。
「という訳だ。私の名義として一応この古代宇宙船は貰うことになった。これから私の手伝いしっかりやるように。」
「わ、解っているよ。」
嫌な弱味を握られてちまったなあ。
俺ははあと小さなため息を吐く。
「ほんじゃ、俺は今日は帰るから次も頼むぞ。大翔。」
「ああ、了解。」
こうしてランディル文明の遺産である古代宇宙船を俺は手にいれることができた。
次の日
バキッ ベキッ
俺はネテリークの手伝いに勤しむ。
ランディル文明の遺産である宇宙船をネテリークの名義で譲って貰い。その代わりとしてより一層ネテリークの手伝いを勤しむことになった。
ネテリークの植えた草なのか枝なのか解らない地面から生える黄茶の枝をバキバキと剪定鋏で切り取る。
「キュイ キッ。」
ムムも一緒に枝木のような植物を切る。
バキッ ベキッ
「ネテリーク。この植物何て言うんだ?。」
「ああ、土あけびだ。これも日本原産で日本しかとれない植物だ。」
「土あけび?、アケビの仲間か?。」
アケビは知っている。昔よく秋の季節に山で生えているのをとって食べたものだ。果実はぶつぶつした種子が一杯で食べるところはあまりないがさっぱりした甘い味を楽しめた。
「いや、土あけびはアケビではないぞ。アケビのような形をした実をならすと言うだけでアケビではない。それにこの土あけびには種子の概念がない。」
俺は眉を寄せ困惑する。
「種子の概念がない?。種が無いってことか。」
「そうだ。土あけびは二種類の菌と菌が偶然掛け合わせることでできる植物だ。だから何処に生えるか解らない奇蹟の植物でもある。地球の日本ではこのような土あけびの植物のことを山の神の贈り物と言われているようだ。」
「ふ~ん。」
特に興味をそそられるような話題でもないな。菌から生まれる植物なんてキノコようなものだろう。確かに二つの菌が掛け合わせることでできる植物なんて珍しいとは思うが。俺は特に植物に興味あるわけじゃない。宇宙冒険者としてその知識が必要であるならば覚えるが。
「ちなみにこの土あけびは何にきく植物なんだ?。 」
ネテリークがとっているというのだなら何かに効く植物なんだろう。
特に興味をそそらない植物だが。一応何にきくか聞いてみる。今後何かの役に立つかもしれないからだ。
ネテリークは土あけびをとりながら静かに口を開く。
「ああ、この土あけびが効くのは金玉だ。」
バキッ ベキッ
ネテリークは土あけびの枝を切る。
「そうか········。金玉か。んっ?金玉!?。」
俺は驚いて作業を中断して顔をあげる。
「ネテリーク!。今金玉って言ったか?。」
俺の聞き間違いでなければ確かにネテリークは金玉と呟いた。この土あけびの植物は金玉に効くと言ったのだ。
「ああ、土あけびが効くのは睾丸、金玉だ。昔から金玉全般の病気はこの土あけびが効く。何故効くのかは解らないそうだ。地球ではあまり土あけびのことを医学的に調べようとはしないようだしな。」
「何で調べないんだ?。」
俺は正直に疑問に思った。
「需要が無いからだよ。金玉の病気などなるかならないかほど数が少ない病気だ。故に金にもならないから医学者達は真面目に土あけびの生態を調べ研究しようとするものがいないのだろう。金玉だけに。」
「はあ······。」
今のは全然受けないぞネテリーク。俺は心の中でそう突っ込む。
「だが残念なことだ。金玉に効く植物であるならば女性性器の何処かの病気を効く可能性も否定できないのだがなあ。ただ金にならないからって植物の可能性を蔑ろにし過ぎだよ。もう少し植物の可能性を信じて欲しいものだ。」
ネテリークは愚痴を吐き。横顔が少し寂しそうだった。
本当にネテリークは植物が好きなのだと理解した。
俺には一つことにのめり込んだことはないな。特に物や植物などは。
バキッ ベキッ
俺はもくもくとネテリークの手伝い続けた。
ゴシゴシ
俺はマムデビルから入手した古代宇宙船を洗っている。へばりついていたザルネスクの苔は全部落とし。ネテリークが全部回収していった。新種の植物と言ってさぞ有頂天に喜んでいた。交渉相手だったネビアはネテリークと植物の話題で盛り上がり。。1日泊まって帰っていった。
ゴシゴシ
トタタ
「キィ、大翔。綺麗になった?。」
地を這うように走り真っ白な胴体をちょこんと倒立する。白い獣耳をぴくぴくさせる。
「ああ、何とかなりそうだ。ただ、どうやって中に入るの解らんな。」
入手はしたのはいいが。いまだこの宇宙船のコクピットの中まで入ることこはできていなかった。
「中に入れないとせっかく手にいれた宇宙船も稼働するかも解らんしなあ。このままだとただの金属の置物だよ。」
手にいれたランディル文明の遺産である古代宇宙船は操縦が未知だとガースから聞かされていた。ただそれでも俺は宇宙船が欲しかったから手にいれたのだが。せめて中に無限回路メビウスが設置されているかどうか知りたいのだが。最悪古代宇宙船が稼働しなくとも無限回路メビウスさえあれば後は機体である小型宇宙船を入手すればいいだけの話である。
「キィ、手伝う。」
トタタ
ムムはペタペタと古代宇宙船の船体を触りだす。何処かにハッチが無いかと確認する。
ペタペタペタペタペタペタ
ペタ
ムムが触れた一ヶ所が光だす。
「キィ!?。」
ピーーーーー
「何だ!?。」
あの遺跡のように脳から直接何かが語りかけてきた。
『素体の遺伝情報確認。防衛装置解放。操縦者として認定されました。良い旅を。』
プツン
通信が切れたような音がすると。滑らかな横面の船体が上下に開いた。
「キィ!。」
「起動したのか!?。でも何故。」
何故古代宇宙船の搭乗口が開いたのかわからないがこれで宇宙船の内部が解る。
宇宙船に入るとそこには幾つかの機械が設置され。フラスコのような形をしたものが何本も壁際に設置されていた。エンジンルームのようでもあるが。エンジンのようなものはなかった。
「キィ、大翔。メビウスあったよ。」
ムムがエンジンルーム内で一部に指を指す。
俺は視線の先に確かに何かの回路のようなもが中央部に設置されていた。
「これが無限回路メビウスか。矢張ミスティックファイブであるランディル文明の遺産にも現存しているんだなあ。」
何処からかエネルギーを補給しているか謎とされている無限エネルギー回路メビウス。同じミスティックファイブの一つである文明の項目であるランディル文明の遺産に無限回路メビウスがあってもおかしくはなかった。ミスティックファイブは俺の勘では一つに繋がっている気がする。文明、古代人、エネルギー、兵器、起源、これらは五つが密接に繋がっており。その五つを解明することで。このアレストア銀河の謎の全貌が明かされる気がする。
俺は胸の内に熱いものがこみ上がる。
「どうやら船内に入れたようだな。」
ネテリークが船内に入ってきた。
「む?これは·······。」
ネテリークは一点を凝視する。
ネテリークが目についたのは壁際に設置されたいくつものフラスコののようものが付いた棚である。
「このフラスコ全部コールドタイムストレージ(時間凍結保管庫)になっている。」
「それがどうかしたのか?。」
「どうやらこの船は採取船のようだ。」
「採取船?。」
「鉱物や植物、生物を収集する専用の船ということだ。」
「それって宇宙冒険者の宇宙探索船にとっては理にかなっているんじゃないのか?。」
未解惑星でエネルギー資源や鉱物、宝石、植物など採取するのだ。この船はそれに適しているような気がする。
「確かにな。ランディル文明の遺産のなかでこの船は宇宙探索船向きかもな。しかしそんな未知な船を操縦できるかどうかは別問題だかな。」
そうだ操縦方法も見つけなくてはならない。ミスティックファイブであるランディル文明の遺産である宇宙船だ。操縦の仕方も未知だろう。
まだまだ宇宙冒険者になるまで前途多難である。
「キィ、大翔。手伝う。」
円らな大きな亜麻色の瞳を向けムムはニッコリ微笑む。
「ありがとよ。」
俺はムムの励ましに感謝を込め決意を固める。
まずは宇宙冒険者としての経験を積み。このランディル文明の遺産の宇宙船の操縦方法を見出ださなくてはならない。本当に宇宙に旅立つのはそれからだ。
俺はニヤリと不適な笑みを浮かべる。
「良いスリルだ······。」
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ランディル文明の遺産である宇宙船を手にした不良少年大翔。宇宙の足をてに見果てぬ宇宙冒険に心踊らせる。
次回 社会不適合者の宇宙生活 上等‼️
第8話 『ギルド』
不良少年は荒波の海に飛び込む······・
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