第6話 ランディル文明の遺産

ゴオオオ


原生林が生い茂る惑星にガースの宇宙探索船が降り立つ。ハッチが開きガースと一緒に船から出る。

案の定目の前の景色は多量の植物が生い茂る原生林が広がっていた。森、森、森しつこいほど森一杯である。

はあ、やっぱり植物だらけの森か。ネテリークの惑星でもう植物は見飽きているんだけどなあ。

俺にとっては毎日植物だらけの惑星で暮らしているので原生林が生い茂る未開の惑星を垣間見ても正直新鮮味などありはしない


「大翔、目的の植物はザルネスクという新種の苔だ。」

「苔ですか?。」


最早植物ですならないだろう。


「何でもザルネスクという苔は青い光をあてると発光する植物だそうだ。その光帯びた苔はエネルギーを貯める作用があるというのだ。学会でもエネルギーを貯める性質を持つ植物は貴重だ。ここの宙域ではメビウスがあるからいいが。他の銀河ではエネルギーを貯められる性質を持つ存在は希少なんだよ。」

「ふ~ん。」


特に興味をそそる話でもない。何処のエネルギー事情でも似たようなものだ。

木々をかき分け原生林の森林を進む。確かに見慣れない植物が目に入るが。

ザっザっ


「ガースちょっと待った!!。」

「どうした?大翔。」


先頭突き進んでたガースが立ち止まり首を傾げる。

俺は棒切れを拾い。ガースの前にあるギザギザしたツタが張った地面に棒きれを投げ込む。


ひゅ バキッ ぎゅるぎゅるぎゅる

ギザギザした蔦が地面に落ちるとまるで生き物のようにくるり巻いて締め上がる。

棒きれがギザギザなツタにガッチガッチに固められる。


「ネテリークから教えてもらったんだ。アルバークという名のツタらしい。ああやって生き物が通った所をギザギザしたツタが巻き付いて締め上げキズ口から体液をとるんだとさ。人間ならナイフで切って外せるけど。それまでかなり手間かかるだそうだぞ。」 


ガースの口元がニヤリと笑みを浮かぶ。


「さすがはネテリークの弟子ということか。植物に詳しいなあ。」

「不本意だけどなあ。」


師であるネテリークから宇宙冒険者のサバイバル技術を教えられていた。ネテリークの教えるのは主に生物や植物に関してのことだ。どの植物が食べれてどの植物が危険なのか。多くの銀河を回りまくった元宇宙冒険者であるネテリークには植物に関しては右に出るものはいないだろう。その反面機械に関しては応急処置くらいしか詳しくなかった。

ネテリークは宇宙冒険者でも植物専門だったらしく。昔つるんでいた仲間達は機械知識や生物に詳しかったり。武芸に長けていたり。それぞれ役割分担を持って冒険を楽しんでいたらしい。

俺は特に仲間を加えるつもりないので宇宙冒険者としての必要な知識は全て得るつもりだ。


原生林を抜けると洞穴が現れる。


「ここが目的であるザルネスクが生えているという洞穴だ。」

「やけに暗いですね。」


洞穴の中は何も見えず真っ暗である。


「ペンライトを渡しておく。ブルーに発光する特殊製だ。ザルネスクはブルーライトで照らすと発光する性質らしい。」

「なるほど、特殊な光受容体を持っているということか。」

「光、あんだって?。」


ガースの眉間とふと眉が複雑そうに寄る。


「気にしないでくれ。師であるネテリークと暮らしていると覚える必要のない言葉を覚えしまうんだ。」

「まあ、ネテリークは昔から植物バカと呼ばれるほど植物好きだからなあ。だから昔あまり他の宇宙冒険者の仲間達からは会話したがらなかったんだが····。」

「やっぱり······。」


ネテリークが植物の説明すると終わりがない。会話が止まらないのだ。俺は宇宙冒険するために必要なことだと思い。真面目に聞いていたが。今が考えれば必要じゃないことまで覚えさせられた気がする。


ガースが青いペンライトを照らし。洞穴内を進む。ゴツゴツとした岩と湿った感じでいかにも苔が生えそうな環境であった。


「んじゃ、ここで二手に別れて探そうや。その方が効率が良い。コジョ族も一緒だから迷いこともないだろう。」

「解った。」

「キィ。」


ガースと二手に別れ俺とムムはザルネスクという苔を採取することにした。


「キィ、大翔、このカプセルに入れて採取する。」

「何だこれは?。」


ガラスの試験管のような筒状のものを渡される。ガラス製かと思いきや重くなく。寧ろ軽かった。


「キィ、採取瓶(ボトム)。ネテリークがよく環境に適応できない繊細な薬草をこれで採取していた。中は時間凍結保管庫(コールドタイムストレージ)になっている。」

「さすがは宇宙だな。地球よりも何千歩も文明が進んでるわ。」


俺は苦笑する。

カチ

俺は暗い洞穴を進み。青い光を照らしながら進む。洞穴内の湿った岩肌に青い光を照らす。苔は視覚できるが発光する苔ではなかった。


「もっと奥に進もう。ムム。」

「キィ。」


ペンライトの青い光を左右に交互に照らしながら前に進む。

暫く進むと発光する現象が表れる。


「おっ、やっとザルネスクが見つかったようだな。とっとと採取して帰ろう。」

「キィ?大翔、あれ。」


ムムは何かに気付いたように俺がペンライトで照らす先を指を指す。


「ん?。」


俺は青く照らされた群生するザルネスクの苔にムムは信じられないような視線を向けていた。俺はペンライトを動かし照らす先を変えて確認する。 


「何だ!?。これは······。」


それは船だった。ただの船ではない。まぎれもれなく宇宙船のようであった。ザルネスクが群生する岩かと思ったが。ザルネスクがこびりついた金属製とおもわれる船体に主翼のような羽根がついていたのだ。ザルネスクはそれに群生するように付着している。


「これって?飛行、いや、宇宙船か。でも何でこんなところに。」


多量のザルネスクの苔がこびりついた宇宙船はかなりの年代ものであった。というよりはどの宇宙船よりもみたこともない形容、形をしていたのだ。ガースの宇宙探索船とも違い。俺が運ばれた宇宙航行船や貨物船とも違う。とても異様な形、デザインをしていたのだ。主翼があるのだが普通の宇宙船とは船体もデザインもまるで違う。例えるならば俺の地球にある戦闘機ステスロスF117ナイトホークという機体に酷似していた。ただ似ていてるだけで中身はきっと別物だろう。


「キィ、大翔良かった。宇宙船見つかった。」


コジョは白い獣耳をピクピクさせ円らな亜麻色の瞳がニッコリと微笑む。


「いや、これを····俺の宇宙冒険者の宇宙探索船にするのか?。」


タイプ的に小型だろうが。武装能力があるのかどうか知らんが。これはどうみても未知の宇宙船である。確かに小型の宇宙探索船が欲しい為にお金を稼いでいたが。古代遺物の宇宙船が欲しかった訳じゃない。


「とにかくガースと相談してみよう。」


俺はザルネスクと同時に見つけた未知の宇宙船のことをガースに報告相談しようと思った。


「おいおいおい、何でただの植物採取が宇宙船を発見しているんだよ。」

「知らんよ。ムムが見つけたんだよ。」

「古代の宇宙船があるなど第一先駆者からも聞いていないぞ。やっぱ言い伝えは本当らしいなあ。」

「言い伝え?。」

「ああ、コジョ族と一緒に冒険すると何故だか古代遺物や古代遺跡が見つかるんだそうだ。どういう原理かしらんがなあ。」

「キィ。」


ムムは嬉しそうに白い獣耳をぴくぴくさせ。亜麻色の瞳を潤ませる。


「それでガース頼みがあるんだけど。」

「何だ?。」

「この宇宙船貰っていいか?。」


俺の言葉にガースはさも呆れたような表情を浮かべる。


「発見して早々欲しいってお前相当神経図太いなあ~。」

「元々宇宙船を手にいれる為にお金を稼ぐつもりだったからなあ。金なら働いて返すから。」

「いや、返すもなにも宇宙冒険者は古代遺物の宇宙船を自分の宇宙船にしようなどと。普通はそんな考えには至らんよ。危ないしなあ。」

「危ないのか?。」

「当たり前だろ!。未知そのものの宇宙船を操縦してみろ。何が起こるかわからんよ。それにこの惑星第一先駆者にも承諾が必要だしなあ。」

「第一先駆者?。」

「この未開惑星の第一発見者だよ。この未開惑星の実質第一発見者がその未開惑星の所有権ではないが決定権を持つ。」

「?、所有権が無いのに決定権を持つのか?。」


所有権と決定権がどう違うんだ?。


「ああ、宇宙冒険者同士のいざこざにならんように未確宙領域(エヴェルティア)から発見した未開惑星は宇宙冒険者ギルドの預かり所となる。そしてギルドを通して各地の銀河の財界人や企業、政府の顧客の要望である植物、鉱石、宝石、エネルギー資源、生物、古代遺物、などなどを分配し取引するのさ。未開惑星一つ分の資源を手にするんだ。国同士の諍いや対立を生まないように中立であり。

仲介役として宇宙冒険者ギルドが役割を担うんだよ。」

「ふ~ん。」


俺はてっきり宇宙冒険者ギルドは地球の派遣会社みたいなものだと思っていたが。ギルドはこの銀河にとって秩序や抑制の役割を持つ組織などだと改めて理解した。


「この未開惑星マムデビルは主に植物類を取引に行っているが。古代遺物の宇宙船を発見したら確かに第一発見者であるお前らの権利は持ち合わせているが。未開惑星マムデビルそのもの発見した第一先駆者の宇宙冒険者にその権利と権限が与えられるんだ。だから惑星から遺物を発見してもそれをそのまま自分のものにすることは極めて難しい。第一先駆者である宇宙冒険者は宇宙船の発見者であるおまえらよりも古代遺物の専門機関に売りさばいた方が高くつくからなあ。発見したものにはそれ相応の何割かの報酬が与えられるだろうが····。」

「そうか·······。」


俺は肩を落とし落胆の色を浮かばせる。

せっかく宇宙船を発見したがどうやら入手することは困難らしい。矢張地道に稼いで宇宙探索船と無限回路メビウスを手に入れるしかないか。


「まあ、そう落ち込むな。マムデビルの決定権を持つ宇宙冒険者は俺の馴染みだ。一応交渉してみよう。」

「お願いする。」


ガースはポケットから銀製のシンプルな小型のスマホのようなものを取り出し。誰かにかけている。どうやらあのスマホなようなものは銀河内で通話できるようだ。どういう原理か知らんが。

通話が終わり。この未開惑星マムデビルの先駆者である宇宙冒険者が直に来訪することになった。偶然この北西銀河ラビンクにあるエヴェルティアα宙域を探索していたようだ。

小型の宇宙探索船が降り立ち。しなやかなパイロットスーツを着こなした女性が姿を現す。耳が尖っており。額に3つの宝石のようなものがついていた。


「ガース、報告聞いたけど。私は植物採取の仕事を頼んだのよ。何でそれが宇宙船を発見に繋がるのよ。」

「抗議はいつでも聞くから。ネビア、取り敢えず発見した宇宙船を見てくれ!。」



ガースの言葉に渋々ネビアというパイロットスーツを着た女性は宇宙船が発見した洞穴の奥へと向かう。ザルネスクの苔まみれ宇宙船を垣間見るとネビアは深いため息を吐く。


「ランディル文明の遺産ね。」

「ミスティックファイブ(五つの謎)の一つか?。」

「誰よ!?。」


何も自己紹介などせずに口を挟んでしまったのが悪いのか。パイロットスーツの女性は俺に怪訝に不快に睨み付ける。


「ああ、こいつは宇宙冒険者見習いとして俺に同行しているんだ。地球の惑星人(ネヴィト)で名は小田切大翔だ。」

「小田切大翔だ。」


とり敢えず俺は自己紹介し会釈する。


「新米にしては礼儀知らずね。」

「おいおい、宇宙冒険者も礼儀知らずが多いだろうに。」

「そうね、貴方も含めて。」


軽口というか辛辣な態度でパイロットスーツの女性ネビアは苦言ももらす。


「それで頼みなんだが?。」

「何よ?。報酬の上乗せは受け付けないわよ。文句なら依頼者に言って。私は関係ないんだから。」

「いや、そうじゃなく。できればこの宇宙船譲ってくれないか?。」


ガースの言葉にネビアは困惑げに眉を寄せる。


「貴方がランディル文明の遺産に興味があるとは思わなかったわ。古代遺物など入手しても即売りはらっていたくせに。」


旧友であるガースが古代遺物に興味あるはずがない。彼は歴史とかには全く言っていいほど興味を抱かない人物であった。

「まあ、そうなんだが。こいつがランディル文明の遺産の宇宙船を欲しいというんだよ。元々宇宙船を手に入れる為に宇宙冒険者見習として稼いでいるんだが。」


ガースは俺の事情ネビアに洗いざらい全て話した。ネビアは鋭い視線で俺に向ける。


「私はお人好しではないわよ!。見返りを要求するわ。」

「見返り?。」


ネビアの提案に俺は首を傾げる。


「そう、あんたも宇宙冒険者の仲間入りを果たすならそれなりのルールを知っておくことね。宇宙冒険者同士未開惑星で入手した物は時には戦闘で奪い合いになったりもするけれど。宇宙冒険者同士が穏便にすます方法としては等価交換を行っているわ。貴方がランディル文明の遺産の宇宙船を欲しいというならその見返りになるものを寄越しなさい。因みに私はお金や宝石とか遺物とかには全然興味無いから。私が興味あるのは植物だけよ。貴方が新種の植物を所持しているならこのランディル文明の遺産と交換しても良いわ!。」


ネビアという宇宙冒険者の惑星人(ネヴィト)はどうやら植物に興味を持った人物らしい。師であるネテリークと同じ匂いがする。

交渉としてネビアが興味を抱く新種の植物が必要らしいが。生憎そんもの俺は持ち合わせていない。

ネテリークの未開惑星に新種の植物が生えているわけないだろうし。殆ど趣味で植えている植物だろうから。


「·······。」

「交渉は無理そうね。」


俺の顔色を窺いネビアは無理だと判断したようだ。


「他に無いのか?。」


俺は諦めはつかず吐露する。


「お金には困って無いわ。私は植物しか興味無いもの。見たところ貴方は植物に関することに一切無縁に見えるけれど。」


ネビアは皮肉まじりに返す。


「新種の植物は無いが。師は植物好きでやたら植物に詳しいけど。」


新種の植物ならもしかしたらネテリークが何か知っているかもしれない。最後の手段としてネテリークに頼みのつなとして新種の植物を譲って貰うしかない。



「師?師はガースじゃないの?。」

「ああ、俺はこいつの面倒を頼まれただけだ。一人前の宇宙冒険者にしてくれとな。ほらお前もよく知ってる。ネテリーク・カステナールだよ。」


ピシッ

その名を聞いた途端ネビアの態度が凍りついたように固まる。

暫く固まるように硬直していたカタカタと震え出し正気を取り戻す。


「そ、それを早く言いなさいよおおおーーー!!。」


絶叫まじり怒声が響く。


「ガース、私がネテリーク様を心酔していること知っているでしょ。数々の新種の植物を見つけだし。医学界や薬学界からも多大な影響及ぼしたお人よ。」


どうやらネテリークは有名人らしい。俺としては植物好きの変人にしかみえないが。


「直ぐに紹介しなさい。直ぐに逢いに行きましょう。直ぐに直ぐに!。」


ネビアの瞳は血走ったかのようにランランとしていた。


「わ、わかったから。取り敢えずランディル文明の遺産の宇宙船はどうするんだ?。」

「そんなものあげるに決まっているじゃない。植物学の偉大な偉人に逢えるのだから安いものよ。」


ネビアは有頂天に俺に宇宙船の譲る承諾する。取り敢えずネテリークをダシに俺は宇宙船を手に入れることができた。まだ操縦できるか分からないが。一歩進んだ気がする。


▩▩▩▩▩▩▩▩▩▩▩▩▩▩▩▩▩▩▩▩


ネテリークとの繋がりで無事ランディル文明の遺産である宇宙船を宇宙冒険者ネビアに譲って貰えることになった。ネテリークの惑星で大翔は手に入れた宇宙船を調べる。


次回 社会不適合者の宇宙生活 上等‼️


第7話 『再利用』


   不良少年は荒波の海に飛び込む······・

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