第31話 違いの価値

わいわい がやがや

大翔は市場に設置された席で未開惑星で採取した資源をサンプル品を置いて顧客を待つ。


天井に浮かぶ電子版には買値の数値が無情にも移り変わるように流れている。


「キィ·······。」


隣席にはムムが白い小さな獣耳をぴくぴくさせ。状況を心配している。


大翔の席のテーブルに置かれたダイヤモンド鉱石のサンプル品を通りすがる顧客がみると様子は様々であった。鼻で笑うもの。舌打ちするもの。困惑するもの。眉をひそめるもの。本当に様々である。そんな顧客の対応を見て本当にこのヘクサーギャラクシィ内ではダイヤモンド鉱石は無価値なのだと実感する。それでも大翔は諦めない。万に一つの可能性があるならそれに賭けたい。大翔はとある方法しいた。多分この方法は誰もやらないだろう。やるやつなんて本当にただの馬鹿である。文明が進んでいるこの銀河内でこの方法をやるのは不良である大翔だけだろう。計算ずくしでやっているわけではない。ただネテリークの言葉で思い出したのだ。惑星人(ネヴィト)によって物の価値は様々であり。その物の価値もまたありかたも存在価値も惑星人(ネヴィト)によっては大きくかわると。惑星人(ネヴィト)によって価値が大きく変わるというのなら大翔はその惑星人(ネヴィト)の特性を逆手にとることにした。だがその方法が成功するとは限らない。だが流通惑星ソールマギンはヘクサーギャラクシィ内でありとあらゆる惑星人(ネヴィト)が集まる場所である。試す価値はある筈だ。

大翔はぎゅっとテーブル下で膝の上に置く掌を握り締める。

辛抱強く待ち続ける。


      二時間経過······


「矢張誰も来ないみたいですね····。私、ちょっとダイヤモンド鉱石をアクセスした惑星人(ネヴィト)いないが流通ドームのデータベースから探してみますね。」


カリナが席を立つ。


「すまない·····頼む。」


仲介人(エコート)のカリナにも俺の無謀な計画を付き合って貰っている。

成功するかも解らない賭けなのに付き合ってもらって正直悪いと思っている。


「矢張ヘクサーギャラクシィ内ではダイヤモンド鉱石は売れないのか·····。」

「キィ······。」


ムムが大翔の落ち込む姿に黒く円らな瞳が哀しげに潤む。


もふ

ん?

目の前に気配を感じたので大翔はふと下げた頭をあげる。そこに毛皮を帯びたヒトガタの動物の姿をした惑星人(ネヴィト)の子供が立っていた。容姿が何処と無く動物のカピバラに似ている。二足歩行するヒトガタのカピバラだと言えば想像できるだろう。そんな惑星人(ネヴィト)が大翔のテーブルの真ん前でちょこんと立っており。何かじっと此方を見ていた。


何だ?何を見ている?。

大翔はじっとヒトガタのカピバラの惑星人(ネヴィト)視線の先を辿るとダイヤモンド鉱石のサンプル品に向いていた。


「何だ?。ダイヤモンドに興味あるのか?。」


もう買い手がつかないならいっそのこのダイヤモンド鉱石のサンプル品を目の前の惑星人(ネヴィト)の子供やろうかとさえ思った。売れないのなら持っていても仕方ない。そこまで大翔はダイヤモンド鉱石を売り込むことを諦めかけていた。



カピバラの姿をした惑星人(ネヴィト)は口を開く。


「㏍%&#‰㎜㏄£¢ΛΕΓ≠÷∞∪⊂⊇-。」

「はっ、何っ?。」


大翔は眉を寄せ困惑する。

全く聞いたことない言語である。

一応言語機能のある翻訳機をネテリークから譲り受けているで。一般の惑星人(ネヴィト)の会話には困ることなかった。それなのに目の前のヒトガタのカピバラのような惑星人(ネヴィト)が発する言葉が複雑すぎて聞き取れない。正直日本語で言えるどうかも怪しい言語である。


「㎞¤㎎¥℃€€ΓΩΣΜΖΗΘΨ∞≧∈+。」


それでも坦々とカピバラの惑星人(ネヴィト)の子供は聞いてくる。本人は自分の言語が通じてないことも解らないようである。


「&*¶〒※※★§㎡€$‰₩¢¢££。」

「·······ムム、この言葉解るか?。」


隣の席で会話を聞いていたムムに俺は一応聞いてみる。

ムムは白い小さな獣耳をぴくとさせて白い毛を帯びた小さな口が開く。


「キィ、解らない···。辿々しい所は少し解るけど。訛りが強くて····。」

「え?これ訛りなの?。訛り範疇越えてないか?。」


もう訛りというレベルではないだろこれ?。どうみても難解、難度高めの暗号レベルの言語だろうに。


「℃¥$$€¢¤㎡㏄㎏∞∴±±∂∝∮Å。」


うーん、困った。カピバラのような惑星人(ネヴィト)の子供はそれでも諦めずに俺に話し掛けてくる。

何を話しているのか全く理解出来ない。

ただダイヤモンド鉱石のサンプル品を見て言ってきていることだからこれに関してのことだろうと思うが。


もふもふ

大翔は困っている時に再び誰かが現れる。

現れたのはまたカピバラのような惑星人(ネヴィト)であった。しかも子供が成長したような大人のカピバラの惑星人(ネヴィト)だった。

どうやらその子供の親のようで。何やら子供が親に話し込んで相談しているようであった。


「¶♭︎♯︎*☆§¥㎏$¢ΔΓΨΨ。」

「&#*§★※¶€㎡\\¥㎜₩₩。」


何か相談を終えたのか。急に此方に視線を向けてくる。大人のカピバラ姿の惑星人(ネヴィト)もまた興味深そうにテーブルに置いたダイヤモンド鉱石のサンプル品をまじまじとみている。

暫く観察していた大人のカピバラ姿の惑星人(ネヴィト)はふと大翔に視線を向く。


鼻息をあらげ何処か興奮している様子でもあった。


「℃¤¢¢€£ΣΩΘΗπξνν,!!」


激しく複雑な発音しずらい言語を発しながらカピバラ姿の大人の惑星人(ネヴィト)は大翔になにかを訴えかけようとしている。


もう一体何なんだよ~。

何が言いたいのか全く解らないから親子の意図も全然理解出来ない。


「€‰¢¥¤㏄£₩\₩㎜㏄@**※#♭︎┌†‼️。」

「§‡ΣβγЖБЗゑヰ仝ヾяюсххДДД‼️」


「ちょ、そんなに色々両方から言わないでくれ!。」


カピバラ姿の惑星人(ネヴィト)は親だけでなく子供も一緒になって更に話し掛けてくる。複雑な発音も発声も交じって更にヒートアップする。

本当に発音しづらい複雑な言語を並べ立てるので。大翔の頭はもうチンプンカンプンの爆発しそうになる。


「もう~勘弁してくれ~。」

「ЯЬЫЩ*#@†¶¶┤〓~&%£㎡」


「どうか致しましたか?。大翔さん。」


仲介人(エコート)のカリナが戻ってくる。


「%$¢℃$℃мдёЧЙЙΔ*┳*‼️」

「%¢¢¤㎎$$Γβδδζξππ₩₩」


「あっ!カリナ。何とかしてくれ!。この二人の惑星人(ネヴィト)が何か俺達に用があるみたいなんだが。だけど全く言語が解らないんだ。翻訳機も一応所持してるけど。言語が複雑すぎて上手く機能していないみたいなんだ。」


俺は仲介人(エコート)のカリナに事情を説明する。


「これは·····ブォール。」

「ブォール?。」


聞いたことない種族名だ。大翔でもヘクサーギャラクシィ内で全て惑星人(ネヴィト)の種族を把握しているわけではないが。発音からしても新しい気がする。


「ブォールってのはヘクサーギャラクシィの惑星人(ネヴィト)なのか?。」


大翔は仲介人(エコート)であるカリナに問い掛ける。


「はい、ブォールはヘクサーギャラクシィ内にある南西銀河マリンネルのエヴェルティア(未確宙領域)で発見された新しい未開惑星の名です。南西銀河マリンネルで活動している宇宙冒険者が発見した未開惑星に先住民がいることが分かり。惑星の資源収集ではなく新たな流通相手としてヘクサーギャラクシィのコミニティに入ることになったんです。惑星レベルや文明レベルが申し分なく。より良い流通相手として一目置かれているんですよ。」

「はあ、そうなのか····。」


よく解らないが。新しい惑星人(ネヴィト)の流通相手ということか。


「一般の宇宙冒険者の翻訳機のアーカイブにまだブォールの言語はインストールされていないみたいですね。ブォールの言語は複雑なので時間がかかっているのでしょう。」

「そうか·····。」


確かに発見された未開惑星ブォールの惑星人(ネヴィト)の言語は複雑というこか難解すぎる。ありとあらゆる暗号記号がつぎはぎに繋げられたような複雑な言語である。



「私ならブォール語に知識があります。ある程度の一般言語なら解りますけど。私が対応致ししましょうか?。」

「頼む!。俺には正直手に終えない。」


翻訳機が機能しないなら完全にお手上げである。ネテリークから宇宙冒険者としてのサバイバル知識を得ていたが。言語に関しては機械を頼っていた。矢張言語まで習う必要性があるのだろうか?。俺は考古学者でも言語学者でもないんだが。


「受けたまわりました。」


俺の代わりに仲介人(エコート)であるカリナが惑星ブォールの惑星人(ネヴィト)の対応をまかせることにした。


「ふむふむ、なるほど····。」


仲介人(エコート)であるカリナは真摯にブォールの惑星人(ネヴィト)の話に聞き耳を立てている。


「何か解ったのか?。」

「はい、ダイヤモンド鉱石のサンプル品を見せて欲しいそうです。了承して宜しいでしょうか?。」

「興味あるのか?。構わない!是非お願いする!!。」


ビンゴだ!。上手くいった。

大翔は内心歓喜する。

大翔がしたことは流通惑星ソールマギンの流通ドームにある提示する資源物の種類別を全種にして提示したのである。惑星人(ネヴィト)は物の価値は人各々であり。極端に違いがある。ならば使用用途もまた惑星人(ネヴィト)によっては様々ではないかと大翔は推察したのである。

案の定ダイヤモンドに興味ある惑星人が食い付いたのだ。どういう理由でダイヤモンドに興味があるか解らないが。ダイヤモンド鉱石のサンプル品を見たいというのだから興味があり。買う気もあるということだ。

大翔は商談が成立すれば賭けに勝ったことになる。

たがまだまだ油断は出来ない。

まだこの惑星ブォールの惑星人(ネヴィト)が買うと判断した訳ではないのだ。


ブォールの親子はカプセル品に入っているダイヤモンド鉱石をまじまじとみる。

加工や研磨はされてはいないが。靄を帯びた白っぽい鉱石と赤みのかかった鉱石が入っている。赤みは多分レッドダイヤモンドというダイヤモンドよりも高値で売れる宝石だろ。それも一緒に持ってきた。勿体ないかもしれないがこのヘクサーギャラクシィ内ではダイヤモンドは全然売れないのだ。


惑星ブォールの惑星(ネヴィト)がダイヤモンドに興味あれば買い手になってくれるかもれない。大翔は淡い期待を抱く


「%₩₩£$€*&Σζιθθ㎡¢¥$£。」

「あ、はい。わかりました。」


ブォールの親が何やら仲介人(エコート)に頼み込んでいる。カリナはそれを熱心に聞き取る。


「何だって?。」

「えっと·····カプセルから取り出しても構わないかかと?。下見?したいと。」

「構わない。。」


ブォールの惑星人(ネヴィト)はカプセルからダイヤモンド鉱石の取り出す。原石であるダイヤモンドの幾つかのサンプル品をとりだし。親子は各々手にとってみる。そしてそのまま自分の口へと放り投げた。


「はっ!?。」


ガリガリコリコリ


突然の出来事に絶句する。

ブォールの親子は口の中に放り込んだダイヤモンドの原石を何の躊躇いもなくポリポリとまるでスナックを食べるかのようにむさぼっている。地球では一番硬いとされる鉱石をだ。


「ダイヤモンドを喰ってる·····。」


俺とムムと仲介人(エコート)のカラナはそんな異様な光景に唖然としながら見ている。


「€₩㎡αΨβηΣΛ㍍㎏¢¢㎏!!。」

「₩¥¤%\€$\ΛΖΘΨΩζιξξλδΦ。」


「あ、えっと·····通訳しますね。」

「頼む·····。」


この状況についていけないので彼らが何を話して食べているのかカラナに通訳して貰う。


「父ちゃん。このダイヤモンド美味しいね!。ああ、これは上質なダイヤモンだ。特にこのレッドダイヤモンドは実にコクがあってうまい!と言っております。」


仲介人(エコート)のカラナが惑星ブォールの惑星人の親子の会話を通訳する。


レッドダイヤモンドってコクがあるんだ。食べたことないから全然解らんけど······。


大翔はただ呆然とブォールの親子がサンプル品であるダイヤモンドを喰っているのを様子を静観する。

ドーム内なので止めるべきなのだろうが。一応お客なので無下には出来ない。

惑星ブォールの惑星人(ネヴィト)の親が満足げに大翔にすり寄る。


「‰\$$₩€§¶♯︎♯︎‡┘┣‘≠<≦≦ΡΠΨιΥβ§$€₩£$㎝¤㎏㌃㏄㌣㏄%㎜㎝$₩㎜㎞㎞㎞㍉㎝ΛαΟ≠∞ΜΝΝΓαΝ。」

「良いダイヤモンドだ。是非うちで取引したい!。ダイヤモンドが採れる惑星の情報を知りたい。情報はあるかね?だそうです。」 

「え?つまりダイヤモンド鉱石を買い取るということか?。」

「ええ、そのようです。このようなことがあこりうるなんて私今でも信じられませんよ。」


仲介人(エコート)のカラナもダイヤモンドに買い手がついたことにおどろいている。

ヘクサーギャラクシィ内で無価値とされるダイヤモンドの鉱石が普通に買い取られることになり。価値もついたのだ。


どんな理由であうろと買い手がついたことは大翔にとって大きな朗報である。

こんな嬉しいことはない。


「では、これが採れるダイヤモンドの採掘量と小惑星の情報です。」


俺はザークから貰った未開の小惑星の情報をブォールのカピバラ姿の惑星人(ネヴィト)に提示する。


「℃‰₩㎏€¥$㎝*☆◆ΜαΠΙΕ≠÷>+-≠%##/&##%&//%。」

(ふむ、この規模ならば一月の採掘量を換算して。これでどうかね?。)


ブォールの親の惑星人(ネヴィト)は何か電卓のようなパットを操作して金額を提示する。


「こっ、こんなに!?。」

「いくらなんだ?。」

「四千万グルです!。」

「四千万グルっていうのはよく解らないな。ブォールの貨幣か?。」

「はい、そうです!。えっと、大翔様は地球出身の日本という国でしたね。なら地球レベルの文明とブォールの惑星レベル比較してざっと換算して一月三千万円の収入が入ります。」


高いのか安いのかよく解らないな。工業用や宝石装飾用ではなく食用であるからこの金額が妥当なのだろうか?。そもそもヘクサーギャラクシィ内にダイヤモンドの相場なんてあって無いようなものである。売れるだけでも喜ぶべきだろう。


「℃₩㏄‰¥$㎞¢¢€¥$$℃。」

(それでは正式な段取りは後程)



惑星ブォールの惑星人(ネヴィト)の親子から名刺というかデータを貰う。

これで情報共有できる。

惑星ブォールのカピバラ姿の後ろ姿を大翔達は静かに見送る。



「大翔さん!これは大発見ですよ!。」


突然仲介人(エコート)は歓喜な笑顔で大翔に訴える。


「ん?どうかしたのか?。」


大翔は眉を寄せ困惑する。


「ブォールの惑星人(ネヴィト)は黒鉛が好物なんです。黒鉛が好物ならダイヤモンドも好きなはずでした。これは新たな流通ルートが確保できるかもしれません!。直ぐに宇宙冒険者ギルドに伝達しなくては!。」


仲介人(エコート)のカラナはそう告げると嬉しそうに何処かにさってしまう。


「ふうう····取りあえず助かった····。ムム。」「キィ·····大翔お疲れ。 」


大翔とムムは深く安堵する。無価値なダイヤモンドに買い手がついて本当によかったよ。

大翔の作戦勝ちである。


流通惑星ソールマギンの市場はそんな緊張感がある二人の様子に露知らずいつも穏やかに賑わっていた。



▩▩▩▩▩▩▩▩▩▩▩▩▩▩▩▩▩▩▩▩


ギルドの組織依頼でエヴェルティアのとある未開の惑星の遺跡探索を頼まれる。


次回 社会不適合者の宇宙生活 上等‼️


第32話

     『古代兵器』


不良少年は荒波の海へと飛び込む······



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社会不適合者の宇宙生活 上等!! マンチェスター @dollknait

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