第18話 悪魔ようやく意味を知る

 主やオットマー執事長やロミー侍女長に侍女のケーテと隠れ住んでから数日、深夜主達が寝静まった頃…俺の所に灰色髪の悪魔オスカーがやってきた。


「どうも!ルーカスさん!俺の魔術書は燃やされて魔界へ帰る前に寄ったんだよ…」


「あのヘンドリックはどうしたの?」

 と聞くと


「悪魔に関する記憶やアリーセお嬢様の想いすらも消されたようだよ…一応監視はつけられてるようだけどね」


「ふーん…それを言いにわざわざ?」


「いやいや…これでもあのライル先輩の頼みでね…ルーカスさんと闘うの嫌だけど主の命令ならやらないといけないでしょ?だからライル先輩の魔術書の隠し場所とケビの魔術書の隠し場所を教えてやろうと思ってね」

 ケビ・ヤーロスはあの護衛騎士ダミアンの悪魔で白と赤の色が混じった髪に赤い目をしている。


「ケビの魔術書は蛇に変えているよ」


「蛇!?」

 俺は驚く。


「そう、実はダミアンさんは部類の蛇好きでね?部屋にいっぱい蛇を飼ってる!ウジャウジャいるよ!その中のどれかってこと。本物に噛まれるとアウトだね。毒持ったやつもいるし、俺たち悪魔には魔術書に触れられないから人間が取るしかない」


 無理だ…王子はともかくアリーセが蛇なんか触れるわけないしましてや毒の危険もある…。


「エドヴィン王子なんてもっとたちが悪いよ。千匹の毒蜘蛛の中の一匹に変化させている」


「また毒!?あー!だめだよ!絶対主に蜘蛛なんか無理!蛇も無理!」


「まぁ場所だけでも伝えておこうと思ってね…。それに…ルーカスさんは処女のこと知らなくてあの時の演技全員嘘だってバレてますからね?もうさっさとアリーセ様の処女奪っちゃったらいいんじゃないの?ってライル先輩言ってましたよ」


「だからその処女がなんなのか…持ち物なの?」


「違います。まぁ、帰る前に俺で良ければ教えときますよ。ルーカスさん…アリーセ様のこと好きなんでしょ?バレバレなんですけど…アリーセさん以外」


「えっっ!!?そんなバレバレなわけない!!」

 と俺は驚いた!そんなばかな!俺は主のこと好きだけど完璧に隠してるはずだ!!


「いや、演技下手くそだからルーカスさん…」


「ま、マジですか…」


「それはそうと処女って言うのはね?」

 とオスカーは耳を寄せて処女の意味を告げて俺はようやく理解した。


「……………」


「ルーカスさーん?大丈夫ですかー?顔真っ赤ですよー?」


「そそそ…そんなことできない!!」

 と俺が言うと


「ええーっ!?今更あ?」


「お、俺は悪魔学校で何の授業を受けてたんだ!何でそれが契約の代償にされてるんだ!?」


「いやあ、良く授業聞かなかったんですねえ?悪魔にとって処女を穢すことが最大の喜びになるからです。つまりご馳走です」


「はあ!?頭おかしーんじゃないか!?」


「いや、ルーカスさん、それ言ったら悪魔全員否定されるようなものですよー?それに処女を奪えたら悪魔の格が少し上がると言うかパワーアップするとかそういうのがあるんですよ。優秀な上位悪魔は何人も処女奪ってるらしいですしね」


「………でも…できない…そんなことをしたら主に嫌われる!男嫌いなのに!それに!他の奴もダメだ!主には誰も触らせない!!」


「やだルーカスさん、そう言うカッコイイ台詞はお嬢様の前で言ってくださいよ!それに触るも何もルーカスさんしかお嬢様には触れないでしょ?」


「そうだけど…俺もダメ!嫌われたくないし」


「えー?めんどくさー!?大丈夫…ルーカスさん!お嬢様絶対にルーカスさんのこと好きだから!」


「お前!俺を騙すのはやめろ!流石悪魔!俺は主に安定剤だと思われてるんだからな!!変なことして嫌われたらもう安定剤としての役割も失っちゃうんだぞ!?それは辛い!!」

 するとオスカーはもはや半目で


「だめだこのチェリーボーイ。一体どうしてルーカスさんは悪魔なんだろうか?ちょっと天使に生まれ変わってきたらどうですか?」


「何言ってんだオスカー!訳わからないこと言うなよ」


「じゃあ、仮にね?仮にですからね?お嬢様が本当にルーカスさんのことが好きなら両想いなら処女奪ってもいいでしょう?ねっ?」


「お前!お嬢様に魅了の術でも使う気じゃないだろうなっ!?そんなことしたら許さないからな!」

 もう額を抑えて涙を流しながらオスカーは


「うっわ!誠実!!なんだこの人!ライル先輩が守りたくなるの判ったよ!ピュア過ぎる!!」

 と震えた。

 良く解らないけど俺が悪魔らしくないってこと?失礼な奴だなっ!!


「もう帰ってほんと」

 と言うと


「だから!仮にって言ってるでしょ?魅了の術も使わないでそうなったらどうするの?どうしたいの?」

 とオスカーがしつこく聞いてくる。


「……そんなの夢でしかないけど…そうなったら俺は嬉しいかな……俺人間としてアリーセを支えて生きるよ…夢だけど」

 と赤くなり言うとオスカーがギュッと抱きついてきた。俺にそんな趣味はない。


「可愛いよルーカスさん可愛い!」


「おい気持ち悪い離れてくんない?」

 と俺はザクっとオスカーを半分に裂くけどすぐにオスカーはくっついてしまう。


「まぁ…ふざけただけだよ、とにかく魔術書の隠し場所と処女の意味は教えました!では魔界へ帰還しますわ!さよならー!またどこかで俺の魔術書ができるまでー!」

 とオスカーは蒼い炎と共に魔界へと送還した。


 俺はしばらくボーっとしていた。

 頭を抱えて反省した。いや、猛省だ。


「アリーセに最初から意味も知らずに処女くれくれ言ってたなんて!!アホか!俺!!」

 と恥ずかしさで死にたくなった。


 次の日にアリーセと顔を合わせて俺は恥ずかしさで赤くなり俯いてしまった。


「どうしたのルーカス?風邪?」


「そうです!」

 と応えておいた。




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