第19話 悪魔とキス演技練習
「な、何ですって!?あのふたりの魔術書の隠し場所は毒蛇と毒蜘蛛!?な、なんて卑怯なの!?」
と私はルーカスから騎士と王子の魔術書の隠し場所を聞いた!
「悪魔には魔術書を触ることも結界を破ることもできません…それに人間でも難しいです。毒蛇や毒蜘蛛に刺されると死ぬし。悪魔は怪我や毒なんて治せないし」
ルーカスは渋い顔をする。
オットマーは
「ロミー!お嬢様の為にエドヴィン王子やダミアン騎士様の部屋に侵入し、何とか命がけで蛇でも蜘蛛でも燃やしてきなさい!」
と言うとロミーは
「何で私がそんなことを!!極刑になるわ!」
「何、どうせ老い先短い老婆!死ぬのが早まるだけだ!」
「このクソじじいっ!今見た目若い女だからって調子に乗るんじゃないよ!あんたが行きな!あんたその姿2人に割れてないだろ!?」
ロミーの案ももっともね。オットマーのその化けた姿なら…と思ったがルーカスは
「無駄です。悪魔には術はバレバレですしね」
と言う。
やはり無理ね。王宮に潜り込むだけでも大変だし…。
「はぁ…いつまでも誤魔化せるわけがないわ…」
今、侯爵邸では私の偽物達がルーカスの術により動いている。もし王子が訪問したりしたらバレるだろうし、ここが見つかってしまえばこの快適な暮らしが失われる!
「はあ…学園行きたくない…」
オットマーは
「お嬢様…やはりあの2人を諦めさせる為にルーカスと結ばれるしかないでしょう!」
「ま、またその話!?そんなことっ!…」
だがロミーも
「大体前は下手くそな演技でバレたのですから次はもっとバレないように完璧なものをあの2人の前でするのです!」
「そんなの怒らせるだけでは?」
「いや、違和感なくすれば少なくともショックは受けるでしょうな」
とオットマーが言う。
「機会は学園に入学してから行われる新入生歓迎パーティーですわ!お嬢様!」
とケーテも言う。
「そんな!私はともかくルーカスは執事で…」
それに入学パーティー…男子生徒がウジャウジャいる!!そもそも入学したくない。
「ルーカスさんは悪魔です!ルーカスさんが学生になってお嬢様を男たちから守るのです!」
とケーテは言う。
「えっ!!?」
ルーカスも驚く。
オットマーとロミーもルーカスを見て
「ふむふむ、いけますな。学生でもいけますな!ルーカスはどこぞの貴族の令息にでも化けておけばいいでしょう!」
「は、本気?」
と聞くとオットマーもロミーもケーテもうなづく。
「入学パーティーまでに完璧にお二人の仲が進展してしまえば王子との婚約も破棄できるかもしれませんしな!今日よりお二人で練習をなさってください」
とロミーはとんでもないことを言い出した!
「れ、練習って!な、何言ってるのよ!!バカっ!」
「こないだの下手くそなキスより少し上手くなるだけでいいのです!演技力を高めるのですよ!お嬢様!!」
とオットマーも指を立てる。人事だと思って!
「大体演技の練習でルーカスにキスするなんてっ!」
と言うとオットマー達は
「「「あ、大丈夫です、私達は下がりますから後はゆっくり練習なさって下さい!」」
と下がってく!
こらあ!!待ってえ!2人きりにしないでっ!
ルーカスをチラリと見ると少し赤くなる。
「主…無理に練習なんてしなくていいよ…主は男嫌いなんだからね」
と言う。
「ルーカスは練習が嫌ではないの?」
「主が練習したいなら付き合う…」
「えっ!!いや、そ、そうじゃないの!私の意思とかじゃなくてルーカス自身が嫌じゃないの?ってこと!」
するとルーカスは赤くなり黙った。
「…………」
「…………」
妙な沈黙が流れ、ルーカスは聞いた。
「一応言うと練習ってその……前に見たヘンドリックがしてたみたいな濃いキスのこと?……だよね?」
と言われる!!
それは…知らない!軽くじゃダメなのか!?
すると聞き耳を立てていたのかオットマーが薄く扉を開けて
「濃いやつですぞ!それでないとダメですぞ!」
とボソりと言い扉を閉めた。
「………」
「………」
いやっ!無理でしょ!リームよ!!
「学園に…主が触れる男が出来るまで…俺練習台になってもいいよ?」
と言う。
「な、何言ってるのよ!バカっ!ルーカスが練習台なんて!!学園に行ったってそんな男いないわよ!!」
「いるかもしれないよ」
「いないわよ!!」
「じゃあ、主は一生俺じゃないと無理だ!」
「一生ルーカスじゃないと無理よっ!」
シーンとその場はまた静かになる。
ん?え?
…それって…ええとどういうこと?
ルーカスはジッと赤い目で見つめた。
心臓がドキドキした。
ルーカスが一歩近づいてきて反射的に一歩下がりどんどん私は壁際に追い込まれて行った。
ルーカスに壁ドンされて美しい顔が近くに寄る。
「怖いなら辞める…主が決めて。練習するかしないか」
と言う。
な、何それ!で、でも…これも王子との婚約破棄などとにかく攻略対象をなんとかしないといけないし…
「こ、怖くないわ!練習よね?あ、あの2人をギャフンと言わせて諦めさせなければダメよね?いいわよ!」
と言ってしまった!!
変な汗出てきたわ!ヤバッ!
するとルーカスは
「うーん…じゃあ…辞めたくなったら胸を叩いて?」
と言ったからうなづいて見つめあった。
ルーカスは
「アリーセ………好きだよ……」
と言う演技の台詞まで言い私はその演技力に完璧さを見てドキリとしてしまう!流石だわ悪魔!
それなら私も演技に応えなければね!
「ルーカス…私も…貴方が好きよ…」
と言うとルーカスは嬉しそうに目を細めて私にキスをし始めた!
たぶんヘンドリックのを真似してるだろうけど徐々に深くなるキスに翻弄されつつも結構長くやってしまい、上手く息できなくてポカポカと胸を叩いて知らせると止まった。
2人とも真っ赤になる。
し、心臓がもたない!!しかも
「ど、どうだった?吐き気しない?」
と聞かれた!吐き気どころかもはや天国だった!!息は苦しかったけど!そ、そんな恥ずかしいことは言えるはずもなく私は
「まっ…まあまあだわ!初めて濃いのした割には上手くできたんじゃないかしら?」
と謎の感想を言いルーカスは
「そっかー良かったー…ヘンドリックの見てたけどあれやり過ぎだと思ったから俺なりにもう少し抑えてアレンジしてみたよー」
と言われてボッと頭に血が上る。ルーカスのオリジナルだったのか!!
私は鼻血を出してヘタリと座り込んだ。
それにルーカスが驚いた!
「あっ!主!!大丈夫!?すぐにタオルを取ってくる!」
この世界にはティッシュが…無い!
ルーカスは悲しそうな顔になり…
「ごめん、主…鼻血出る程我慢してたんだね?もっと早く叩いて良かったのに…」
ち、ちが…違うのルーカス!これは完全にキス慣れしてない私のせいよ!
わ、私がふしだらなんだわ!
「主が心配だからもう練習なんてやめよう…やっぱり他の案でいこう…」
とルーカスはひたすらに謝っていた。ルーカスのせいじゃないんだけどね。
その後オットマーやロミーやケーテから呆れた顔をされたのは言うまでもなかった。
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