第20話 悪魔と恋の病1

 アリーセに謝罪して俺は自分の部屋で3日寝込んだ!鍵をかけたので誰も入れない。

 外からドンドンとアリーセやオットマー執事長やロミー侍女長やケーテさんの声がした。


 しかし俺は意識さえ失わなかったものの胸が苦しかった。俺は俺は…


「恋の病いに侵されている!!」

 原因は判っている。アリーセとキスの練習をしてからだ!!


 俺は演技でアリーセに好きと言い、アリーセも好きと返して俺は錯覚した。アリーセが俺を本当に好きなんじゃないかという錯覚!!

 なんてことだ!主に対して妙な錯覚を起こすなんて!失礼だ!


 だが俺は嬉しくて練習を始める。

 でもヘンドリックのあれは激しすぎるから俺なりに抑えてやった。それでも…もはや天国だった!悪魔なのに天国に昇天するところだった!!

 あ、危ねえええ!!


 いつまですればいいか判らずアリーセが胸を叩くまで続けたけど…その後アリーセがまぁまぁ…と強がっていたことに気付かなくて…さらにアリーセが鼻血を出しヘタリ込んだのを見て後悔した。鼻血が出るまでアリーセは嫌なの我慢してたんだな!?…と。


 俺はショックを受けてひたすらに謝ることしかできなかった!…そしてアリーセの顔を見るのが辛くて引き篭もった。

 悪魔失格である。


 きっと酷い顔をしているから落ち着くまでは出れない…。


「俺は…やはりアリーセに嫌われているんだ…だって鼻血だよ?可哀想に…アリーセを貧血にさせてしまった!!」

 そして嫌われたと判り俺の心はグサグサと針が刺さったかのように痛くて堪らなくなる。


「これが恋…初めてしたけどこんなに痛くて苦しいとは!それに…」

 アリーセは俺のこと嫌いでも俺はまだアリーセが好きと言うことに悩んだ。嫌われているんだからすっぱり諦めて…アリーセが触っても平気な恋人を探さなくちゃならないのに俺はそれが嫌で堪らなくてどうしたらいいのか判らない!


「はぁ…苦しい!もうダメだ!」

 しかしそこでバァンと扉を蹴破ってくるオットマー執事長の姿が見えた!


「ルーカス!!大丈夫かね?病気かい!?お嬢様が心配しているぞ?」


「主を…入れないで…」

 と頼み込んだ。

 オットマー執事長はふむとうなづき扉を戻した。

 そして俺の側に来て熱を測る。


「悪魔のくせに何を倒れているんだ?悪魔は病気になるのか?」


「…ならない…」


「なら何故倒れているんだ?さっさと働け!お嬢様が心配しすぎておかしくなりそうだぞ!?」


「…主の…顔を見るのが今辛い。お…俺が練習でキスをしたせいで鼻血まで出させて貧血にしてしまったんだ!…そんなになってまで我慢して嫌だったろうに。もっと早く俺が気付いてやれば!主に嫌われてしまった…ううっ」

 俺は涙を流した。

 辛い。思い出しても考えても嫌われてると言う事実は消えない。


 オットマー執事長はそんな俺を見てポカーンとしていたがやがて笑い出した!


「なっ!何がおかしいんですか!オットマー執事長!」


「ふひひ!ルーカス!!お前っ!お嬢様のことが好きだね?いや判っちゃいたけどな!…それでお嬢様に嫌われていると!!?ぶははははっ!」

 と笑い転げている!イラッとした。


「俺は毛布を被ってふて寝した」

 ひとしきり笑うとオットマー執事長は


「いやいやすまん、少々笑い過ぎたよ…。ルーカスはお嬢様がお前を嫌ってると思うんだな?だがお嬢様は心配しているぞ?お前が引き籠ったのは自分が鼻血なんか出したせいだと。反省しておられる」


「え?何で反省?俺が我慢させたのが悪いのに…?」


「ふむ、ほんとにお前たちはどうもお互いのことが判っていないんじゃよ…」


「……主が謝ることはないと伝えて?俺が嫌な思いをさせてすまないと…きっと下手くそだし気持ち悪かったと思う」

 するとオットマー執事長は


「いや、自分で伝えんかい!何故私がお前たちのキスの感想を伝えなくてはならいんだ!アホか!!自分でお嬢様にお前のその胸のうちを明かすんだ!お嬢様に好きだと言えルーカス!」


「ただでさえ嫌われているのに何でそんなこと言わないといけないんだ!アリーセが嫌いと言ったら俺はもうダメだ…」


「だからまず話し合いなさい!お前の病いを治すのはそれしかない!こうして一生引き篭もっている気かね?魔術書の問題も解決していないんだぞ!?寝込まれていたら困るだろう!?」


「うっ!」

 確かにその通りである。でも…アリーセの顔みたら辛いよ…。心臓が痛いよ。


「お嬢様を連れてくるから…よく話し合いなさい!いいね!?」

 と執事長は俺の静止も聞かず主を呼びに行った!なんてこったい!もうすぐアリーセが来ちゃう!逃げ出そうかと思うけど…主と悪魔は契約であまり遠くにはいけないのだ。


 と、そこで控えめのノックがして扉が薄く開き、アリーセが入ってくる。

 ズキリと胸が締め付けられる。俺のことを嫌いなのに申し訳ない顔をしている。俺が引き籠ったから?


「あ、主ごめんなさい」


「何故…謝るの?私が鼻血を出したのが悪いのよ…?ルーカスのキスは…嫌じゃなかったからね?」

 とそんな…嘘までついてアリーセは俺を慰めようと優しく言う。何て優しいアリーセ!


「そんな…嘘をつかないでいいんだ主。俺は反省したんだ、主に酷いことしてもう顔向けできない…」

 と泣くとアリーセはギョッとして


「ルーカス!泣かないで!!どうして!?嘘じゃないのよ?」

 とハンカチを出して涙を拭いてくれる。同情させてしまった。俺はずるい。悪魔だからずるい。


「主に嫌われて悲しいんだ…」

 俺は…きっとずるい。


「そんなことはないわ…私は…ルーカスが好きよ?」

 とまた嘘を言わせる。ずるくて本当に嫌になる。


「主…ごめん…そんな嘘を言わせて…俺のことを同情しなくてもいい…男が嫌いなんだから無理しないで!必ず俺が蕁麻疹の現れない吐き気もしない男を見つけてあげるから…」

 悲しいけどそれしかないなと俺は思った。

 そしてアリーセがブルブルと震え出してバチン!と頰を叩かれた!!


「だからっ!男は嫌いだけどルーカスは好きって言ってるでしょっ!バカッ!嘘でも演技でもないわよっ!バカッ!」

 と赤くなり涙目だ。嘘だ。


「嘘だ、だって主我慢してる!涙目だよ!?」

 するとアリーセは涙をゴシゴシと拭って


「ルーカスこそそんなに私が信じられないのっ!?酷いわ!こんなにルーカスが好きなのに!!ええ、大好きよ!?それなのに他の男を探すなんて言うんだもの!酷いわ!」

 と言う。


 ん?んん?判らないこれは嘘、真実?嘘?真実??


 俺がどうしようかと思っているとアリーセは俺の手の上に自分の手を重ねる。


「ルーカス…もうやめるわ。自分を偽るのは…私は貴方が好きなの…一生一緒にいて欲しいの!ルーカスに私の処女をあげたいの!」

 と言う。それに流石に俺は赤くなる!処女の意味を思い出して。


「あ、ある…」


「アリーセよ!」

 とキッと言われる。


「アリーセ…ダメだよ…処女のこと…オスカーから意味を聞いたよ…。だからそんなっ…」

 するとアリーセは俺の手を取り自分の胸に当てがった!!

 かあっと熱くなり俺はたじろいだ。


「あ、アリーセ!!離して!!」


「聞こえる?ルーカス?貴方を思って私胸がドキドキしているの…ルーカスに恋をしているの!!」


「へ…」

 間抜けな声と共にアリーセの胸を見る。アリーセが…俺に恋?俺のこと好き??嘘じゃなくて?


 えっと…そ、それよりなんか胸柔らか過ぎて何も考えられなくなってきたよ…お願い誰か離して!!

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