第28話 悪魔学校の先輩後輩

ダミアンが王子に剣を向けて私を庇うようにしている。


「え!?」

驚いていると


「エドヴィン…騎士は姫を守るんだ…俺はお前の様子がおかしいことに気付いていた。そして俺自身もおかしくなるのを感じた。悪魔に代償を払ったことで俺は俺の騎士道を忘れそうになった」

誰が誰の姫だ!やめて!


「だが、パトリックの言葉でようやく覚めた。悪魔と本契約したことで心がまるで自分じゃないようになっていくんだ…なんていうかその…自分の欲望が全開になって出てきて止められないに近い」


「ぎえっ!そ、それって!やっぱり貴方達日頃から私をそういう目で見てるんじゃない!!気持ち悪いっ!!」


「アリーセ嬢、言っちゃ悪いが男なら普通だ!いつもなら心の中に仕舞い込んでるよ!理性とも言うな。誰もが持っている欲望が抑えられず全面に出る。好きな女性なら尚更だ…」

と言われて私はうーん…気持ち悪いけど確かにそう考えると辻褄が合うが


「いや!でもっ!やり過ぎだわ!私に手枷とか自由を無くしてでも奪うつもりだったのよこいつ!しかも眠らせたりしてでも!」

するとダミアンは


「だからエドヴィンはそんなことをしてまでもどうしても自分が君のその…ハジメテを貰いたいという欲望が奥底にあったんだ!だからっ…」


「そう…よく解ったわ…やっぱり…男なんて…やりたいだけのクズだわ!!ほんとっ気持ち悪い!!私が男嫌いでどれだけ苦労して生きていると思ってるの!!今だって吐きそうだし蕁麻疹は出る!熱も!」

ダミアンは焦る。


「わ、解っている!もちろん!だが、君はそれ程までに魅力的な女性なのだから仕方ない!少なくとも我々男は君に夢中になるくらいだ!」


「ちょっと!人を魔性の女みたいに言わないで!そっちが勝手に惚れてんでしょ!あたし知らないし、断ってるし嫌だから!!」

するとゆらりとエドヴィンが腰の剣を抜く。


「ねぇ…僕を無視してごちゃごちゃうるさいよ?ダミアン…僕の婚約者を渡せ!お前は僕の護衛騎士だろ?何楽しそうにアリーセと話してる?アリーセと話していいのは僕だけ」

と訳わからんことを言っている。


「なっ、俺はなんとかパトリックのおかげで正気に戻ったがあいつはダメだ。理性を抑えられず我を失っている状態だ!ああなったら何としてでもアリーセ嬢を犯すまで戻らないぞ?」


「ぎ、ぎえっ!キモっ!!」

全身鳥肌が出る。

つまり理性外れて変態プレイすることが目的!!それじゃヘンドリックもそうだったの?あいつは夜這いに来たけど私が居なくて下着を盗っていった…。


もうまともなのパトリックだけじゃん!!ダミアンも理性を飲み込まれようとしてたし一回はおかしくなってたもんな!!


じゃあ、私も理性を失ってる?いや私は正気である。ルーカスのこと好きなだけ。別にそういうことを必ずしたいってわけでもない。ただ側にいて欲しいと思うくらいは普通。でもそれが理性を失ったものだったらどうしよう?


よくわかんなくなってきて私は悩んだ。


「アリーセ…僕は君を愛してる。愛してるよ…。僕だけのものだ。今、ダミアンを殺してやる。こんな奴もう親友じゃない!」


「……そうか…それがお前の本心か!アリーセ嬢以外はどうでもいいのか!!エドヴィン!!」

とダミアンは大声で怒鳴った!

うるさい。



一方、浴室でライル先輩に黒豹姿で噛みつきながら俺は悪魔学校時代のことを思い出していた。


「よぉ、ルーカス…何してんだ?」

学校の中庭の草の上に寝転びながら雲を見ていた。悪魔界の空は青くなく淀んで赤い。

もしかしたら俺たち悪魔の目が赤いから赤く見えてんのかな?ってバカなこと考えたりしたけど他の色も見えるしそんなわけなかった。


「授業を聞いてなくてまた叱られたのか?」

ライル先輩が隣りに座る。先輩の掌に血がこびりついてる。誰のだろう?いつもなんか血をつけてくる。ああ、眠い。


「ルーカス…悪魔の力が強くなるのは3通りあるんだ…一つは仕えると主が女だった場合で処女だった場合はそれを要求する。処女を奪うことで罪ができる。罪は悪魔にとって最高の御馳走だ。だから栄養になり力がUPすんだよ。


二つ目は主が男だったり、もう処女じゃない場合は別のモノを要求する。主の身体の一部が一般的だな。だが、上級悪魔の何人かは大きな願いと引き換えに主自身を丸ごと喰ってしまうこともある。普通は一部だけどな」


「じゃあ…上級悪魔たちは皆人を喰って力が強いんだ…あれ?じゃあ先輩が強いのって…」

するとライル先輩は困ったように言う…。


「ははは…バレたか……俺は一回幼い子供の主を食ったことがある。最低だろう?だがその主の願いは自分は消えてもいいから殺された両親の敵を…打ってほしいっていう願い。つまり言い換えれば人を大量に殺せっていう大きな願いでね、代償がデカ過ぎて…」


「喰って力を得たんだね…先輩は」


「軽蔑したか?」

とライル先輩はちょっとだけ辛そうだ。


「何で?悪魔にとって誇れることなんでしょ?少なくとも。力が強いのは悪魔にとって誇れるものだ…俺はまだ弱い悪魔だから…」

ライル先輩は続けた。


「3つ目…悪魔と人間が恋に落ちお互いを必要としてる時俺たち悪魔の心は愛に満ちて力が出る…」


「あ、愛?それって上級悪魔より強い?」


「詳しくは知らない。そんな悪魔希少なんだよ。条件はその悪魔が純粋でまだ人を殺めてなかったりするいい悪魔なことだ」


「はあ…そんな悪魔いるのか」

と俺は首を傾げると何故かライル先輩は半目で俺を見て何か言いたそうだが耐えていた。


「つまりそういう事…。悪魔同士もし闘うことになったら力関係は把握しないといけない。そうだな、例えば主と本契約して主の身体の一部の瞳をもらった場合…気まぐれな悪魔はまず食べないで自分の目に嵌めて見ることがある。アクセサリー感覚だよ。俺目貰ったぜ!みたいな、な」


「へえ…アクセサリー…その目は食べないの?」


「目はいずれ食べるけど着けてるだけだからな…もしその目が他の悪魔に奪われて潰されたら…契約は破棄できるな…」


「あらら、折角本契約したのに食べないで飾っておくなんて…気まぐれな悪魔もいるんだねー…」


「まぁ、その目玉潰すのは悪魔には無理だけどな…。人間が潰さないと効果はない。魔術書と同じさ!」


とここまで思い出して俺は先輩に首筋からひっぺがされて浴槽にぶん投げられて元に戻った。


バシャン!


と水が跳ねた。


「そうか…思い出した…」

そこへ、ケビが現れる。


「ルーカス!パトリックやアウロラ達に使用人共は森へ逃した!火の周りが強くなってきたからな!」

ケビは正気に戻った主のダミアンの言いつけでオットマーさん達を屋敷から連れ出す手伝いをして戻ったところだろう。

ライル先輩は笑い


「ルーカス…ケビどうする?お前ら俺に勝てるか?」

と言う。先輩はさっきあの緑の目をパチパチしていた。何してんのか判んなかったけど今なら判る!


「ケビ!!先輩の片目だ!」


「はい?」


「俺はアリーセを連れてくる!だからお前は先輩のあの緑の目奪っとけ!俺がアリーセ連れてくるまで持っとけ!」

と言うとケビは


「はあああーっ!?マジかよ?」


「マジだ!お前ダミアンの指食ったんだろ?俺より微妙に強いだろ!頑張れ!!」


「微妙言うな!!確実に強いんだよ!!ああ、もうさっさと行け!!」

ケビは怒鳴り、ライル先輩は…ふっと笑う。

先輩…やっぱりいい悪魔だよ。ありがとうございます…。


と俺はケビを残してアリーセの元に向かった。

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