第4話 血の味を知る悪魔

 ああ…なんていう味だ!上級悪魔はこんなの沢山飲んできたのか!凄いな!

 もう極上すぎて俺は虜になりそうだ!飲みたい!


 とそこで俺は目を覚ました。何故かベッドの下に突っ込まれてぐるぐる巻きにされていた。

 俺は指を鳴らしロープを解いてベッドの下から出るとベッドの上では銀髪の主がスウスウと寝息を立て眠っていた。


 今は夜中…。

 あ…しまった。つい血に酔って魔法が解けたようだ。掛け直しとこ。と力を使う。


 俺は寝ている主を見下ろす。

 うーん、流石に契約で主から勝手に血をもらうことも出来ないな。しっかし…くそ美味かったわ!!

 これは頑張って働こう…。


 俺が主の部屋を出るとばったりトイレに行くオットマー執事長と会ってなんか誤解された。


「おおお!ルーカス!!お前えええ!まさかあのお嬢様と!!??いくら蕁麻疹が出ないからって!!そんな関係だったのか!!?旦那様にバレたら首だぞ?黙っていてやるが!」


「ん?は、はあ?」

 なんの勘違いだろうか?


「お前みたいなのが醜女のお嬢様のお相手をするとは!可哀想に!!」

 と肩を叩かれた。醜女…そう言えば男性にはお嬢様が醜女に見える魔法を使っていたんだった。


 実際アリーセお嬢様は…人間にしちゃ綺麗な方だろうな。望めば良いところどころか王妃にもなれるのに男嫌いとはね。


 ん?でも…主がどっかに嫁に行ったら俺はもうあの血がもらえないのか?そ、それはキツい!


「お嬢様は…最高なんです!!」

 と俺が血の味をうっとり思い出しているとオットマー執事長は


「お前媚薬でも盛られたのか!?お嬢様に!?なんて可哀想な!!」

 とよくわからないが同情された。


 *


 次の日…やたらと私のことをルーカスが見てきた。ううっ!この悪魔!どういうつもり?私が男嫌いだって知ってるのに!!

 で、でもルーカスに見られても触られても近寄られても蕁麻疹は出ないけどそのかわりドキドキと心臓が高鳴るのは何故?


 悪魔の術なのか?きっとそうだわ!流石悪魔!

 するとルーカスが言った。


「アリーセお嬢様…人間の血は皆あんなに美味しいのでしょうか?他の人のも?」

 ……え?何?私を見てたのって血を飲みたいからってこと?

 しかも私以外のを…飲むだと??


 なんかイラッとした。


「知らないわよ!私、悪魔じゃないし、人間は血なんか飲まないのよ!!」

 と怒る。


「何で怒ってるんですかぁ?」

 知らんわい!!何かムカムカしてくる!

 するとメイドのケーテが廊下で派手に転んだ音がした!!


「ケーテ!?大丈夫!?」

 見るとケーテが怪我をして血が出ている!

 ルーカスはそれを見て…ケーテに近寄るとペロリと傷口を舐めた!!


 えええええええ!!?

 それにケーテは少しだけうっとりとしたが額にルーカスが手を当て眠らされた。

 そして…


「違う!!こいつは不味い!!」

 と言った!

 ???


「血に味の差があるの?」

 と聞くと


「このケーテとか言う娘の血不味い!」

 するとシャラリとケーテの首からロケットペンダントが落ちて私はそれを拾い中を見ると、ケーテと知らない男の子が幸せそうに笑っている………ケーテ…彼氏いたのか。


「んん?まさかっ!!これ!まさか!!悪魔って処女の血しか美味いと感じないの?だから処女??」

 と言う。ルーカスは首を傾けた。


「試して見ようか?ルーカス??」


「はあ?」


 そして私はメイド達に結婚しているものと明らかにモテない女子から裁縫を教わるフリをして針をぶっ刺してそれをルーカスに舐めさせる。すぐにルーカスは比べて2人を眠らせるとジャッジした!


「こっちのおばさん!くそ不味い!!」

 と年配の既婚者のメイドを指差し、そして


「こっちの娘はお嬢様ほど極上ではないけど普通に美味いですねぇ!お嬢様とは比べものにならないですが!…言ってみれば…なんか庶民のジュースと高級ワインくらいの差!!」

 と言った。や、やっぱりか…。


「ということでお嬢様がwinnerです!!」と腕を上に上げられ謎の勝利を告げられる。


「いや!知らないわよ!何でよっ!私が侯爵令嬢で高貴だからっ!?」


「それは俺も知らないですが…ともかくお嬢様の血は凄いです?主だからかなぁ??」

 と考える。つまりは私の血はレアというわけだ?ふーむ…。


「な、なら私の血が欲しかったらしっかり攻略対象者達や男から守ってよね!」

 するとルーカスは満面の笑みで少しだけペロリと舌を出して…


「我が主の為なら!!」

 と畏った!いや、血に釣られてるだけねそれ。


「そうだわ、ルーカス…ちょっと他の対象者のことを教えるから顔を見てきたら?待って、住所を書いてあげる…」

 と私はルーカスに他の対象者の名前と住所を書き、ついでに時間があれば街で噂の庶民の食べ物の入手をお金と共に渡した。


「じゃ、じゃあ頼んだわよ?」


「はあ…判りました。とりあえず行ってきまーす」

 とルーカスはパチンと指を鳴らして消えた。

 いつもパチン一つで何でもできるなんて便利よね、悪魔って。


 *

 アリーセお嬢様に言われて俺はその対象者とやらの男の顔を覚えメモに書かれた住所を周り自分の姿を透明にしてあっさり屋敷に忍び込み、次々と顔を確認していった。その中には女遊びの好きな対象者がいた。宰相の息子とか言うの。真面目そうに見えて入学前から自分ちのメイドに声をかけている。透明になりながら観察しているとメイドの女の子を壁際に追い詰めキスを始めた!!


 おお!?と思って見ているとなんか…あれ?と思った。俺が契約の時したキスと違ってなんかこれ凄くね?角度変えたり…。なんか濃いし息遣いも荒いのに辞めない…。妙に生々しい。流石に俺は見ていられなくなり離れた。


 空に浮かび腕を組んだ。


「あれが濃いキスというやつか…ふーむ…アリーセお嬢様は濃くて気持ち悪いと言ってたけど…宰相の息子はともかく相手のメイドは少なくとも喜んでいたように見えた…」

 やはりアリーセお嬢様が男嫌いだからあれが気持ち悪く見えてるんだな…。可哀想なお嬢様…。一生結婚できず、1人で歳取って死ぬのか。可哀想に。


 と俺は同情し、街で行列ができている店のチーズイモ揚げを買い戻ったのだった。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る