第5話 宰相の息子を遠ざけろ

 ルーカスがまさかのチーズコロッケを抱えて戻ってきた!!きゃああ!まさかこの世界にチーズコロッケがあるなんて!!


「チーズイモ揚げですよお嬢様」

 と言うので


「名称なんてどうでもいいの!!やったわ!ここではこんなの食べれないもの!!」

 と嬉しそうにパクリと食べる私をルーカスはジッと見ていた。


 な、何?まさかお使いしてきただけで血が欲しいとか?だ、ダメよ!しょっちゅうあげてたら貧血になる!


「あ、そう言えば!宰相の息子の顔見てきた時ね、メイドと濃いキスしてましたよー」


「えっ!?な、何ですって?」

 食ってるチーズコロッケ吐きそうになったわ!想像して!


「あれが濃いキスなんですねぇ!初めて見たあ。なんというか女の子も嫌そうじゃなかったし」


「やめてよ!解説なんか!気持ち悪くなるでしょ!!じっくり見てんじゃないわよ!」

 しかし、待てよ?確か宰相の息子とうちの父は仲が良かったな…。小さい頃はよく遊びに来てたわ。たまに誕生日プレゼントもくれたけど男嫌いだから近寄らず彼が去った後包みを開けると子供にしちゃイケてるハンカチやリボンを贈ってくれたのよね。


 宰相の息子の名はヘンドリック・ヘーゲルヒだったわね確か。薄い栗色の髪の毛に紺色の瞳を持ち…かなりの女好きだが、ヒロインに会ってからは浮気はピタリと辞めてヒロインにグイグイ迫るキャラでいわゆる幼馴染の私が介入しヒロインいじめ…そして断罪イベントー…という流れだったわね。


「よし、次はヘンドリックよ!ルーカス!彼に私を諦めてもらう!と言っても男には私が醜女に見えるから反応を確かめないとね!」

 と笑うとルーカスは


「ふうむ…でも大丈夫ですかねぇ?あのヘンドリックとか言うの…結構ブスにも手を出していましたよ?女であれば何でもいいのかも?」

 と聞いて私から血の気が引いた。


「まさか?女なら何でもいいとか言う気持ち悪い男なんているの??どういうことなの?ヘンドリックがそうだと言うの??」


「それは…分かりませんが…そういう奴も万に1人くらいはいるんではないかと?ヒロインとやらに会ったら治るかもしれませんが」


「何て恐ろしい!!もはや顔などどうでもいいなんて!王子ですら顔を背けたのに!!…………潰さないと…危険だわ!」


「危険?」

 ルーカスはキョトンとしている。


「身の危険ってことよ!そういう男は何をするか判らない!あいつは優しいフリをした痴漢だと思うわ!!昔からよく顔だけじゃなく私の胸やお尻を見ていた気がする!油断ならないわよ!」


「……そう言えば…人間の男はすぐやりたがると先輩が言っていた気がします!!やりたがるとは何ですか?」

 と聞かれて私は顔が赤くなる!!


「私に聞かないでっっ!!バカッ!」

 とルーカスをまた殴っておいた!


 *


 それから…ヘンドリックが家に父親と久しぶりに我が邸にやって来た。私も父と距離を保ちつつもヘンドリックに挨拶をするとヘンドリックは特に嫌な顔一つせずにいつもと同じだった。

 そしてルーカスを見た。


「………」


「グレゴール様…何故…魔の者が従者の格好をしているのでしょうか?」

 と聞いた!!

 なっ!!


「ん?何のことかね?ルーカスはうちで働く昔からの執事でアリーセに唯一触れても蕁麻疹が出ないのだ」

 とお父様が言う。

 ヘンドリックは…


「………その男を僕は今まで見たことがありません…。それに赤い目の男など…魔の者だ。貴様…侯爵やこの家に何をした?」

 と言うとルーカスはパチンとお父様やメイド達を眠らせて


「お嬢様ー…こいつに術が効いてないですよー?何でか」


「ええっ!!?なっ何故なの!!?困るわ!!」

 ヘンドリックはそれを見て


「貴様!アリーセ嬢に何かしたのか!?おかしいと思ったんだ!!アリーセ嬢も操られて?」

 するとルーカスは困って


「何かしたかと言われればしたんですけどね…。俺の主だし…」


「アリーセ嬢どういうこと?」

 ヘンドリックは綺麗な顔でこちらを見る。でも気持ち悪いので見ないで欲しい。


「ううっ…私は…男の方が嫌いで仕方ないの!ヘンドリック様には判らないでしょうが…これはもう一生治らないのです!だから私は魔術書を買い、ルーカスを呼び出したのです!男の方が私を見ると醜女で性格の悪い女に見えるように!後、王子から学園入学前に婚約破棄してもらいたくって!」


 と私は言った。

 ヘンドリックは目を丸くして


「馬鹿な!アリーセ嬢の男嫌いは昔から知っているよ!触れるだけで蕁麻疹が出たり!でも悪魔と契約するなんて!代償は何だ?アリーセ嬢の何を奪ったこの悪魔め!」

 とヘンドリックが睨む。


「はぁ、本来なら処女ですが、アリーセ様は男嫌いなのでキスを。何か俺だけは何故か触れるし蕁麻疹も出ないから。術はかけてませんよ?何故か触れる」

 それを聞きヘンドリックは信じられないと私に近寄ってくる!


「ひっ!やめてよ!来ないでください!!」

 ビクリとヘンドリックは停止して


「な、なな何故だ!?何故この悪魔とキスできて僕はダメなの?き、君に触れられなくて僕は我慢できなくて君だと思っていろんな女性とキスしてきたのに!!」

 と言うから私はげげえええ!マジかよ!と嫌な顔をした!


「アリーセ嬢…僕は君が好きなんだ!王子と婚約破棄するなら僕と婚約してほしい!」


「嫌です!無理です!」

 こいつ頭おかしい!他の女としといて何言ってんの?触ったら蕁麻疹出るし吐きそうにもなるのにお前でもその症状出るんだよ!監禁でもする気かこの野郎!!


「そんな…僕はどうしたらいいんだっ!こんなにアリーセ嬢を思っているのに!!」

 いや知らんがな!!ていうか何でこいつにはルーカスの術が効かないの??


「あ、この男首から魔除の強力なアクセサリー下げてます。これのせいですよ俺の術効かないの」

 とルーカスが指摘する。


「………ち、それが何だ?たまに女の子から魅了を受けるからしてるんだが、悪魔にも有効とはね!これがある限りは僕には術は効かない!必ずアリーセ嬢を手に入れたい!」


「お願いです!諦めてください!私は男の人と一生結婚しませんから!!無理なんです!ほんとに!」


「大丈夫アリーセ嬢!僕が触れても蕁麻疹出ないように吐き気が出ないような物を探そう!だから待っていてくれ!」

 そう思うなら子供の頃から女と遊んでないでさっさと探しに行けや!!

 ていうかお前のことも気持ち悪すぎて無理だから!!


 と私は心の中で早く帰ってほしいと思った。ルーカスは…


「残念ですが諦めてください。じゃないとお嬢様の血が貰えないので」

 とルーカスは冷たい目で言う。そして…剣を取り出しヘンドリックに向けて斬りかかった!


「ぎゃっ!ルーカスやり過ぎ!!?」

 と一応人殺しはまずいと思ったが、アクセサリーが反応してヘンドリックを守る!


「……くっ!」

 ルーカスの腕が焦げ、吹き飛ばされた!


「ふは!どうだ!近寄れまい!?悪魔め!無理だ!諦めるのは貴様だ!」

 と言うとヘンドリックは私にまた近付き私は逃げようとするが壁ドンされる。


「いやあああ!」

 ブツブツと蕁麻疹が出てきた!!吐き気も凄い!


「…アリーセ嬢…君を愛してる…」


「一時的だから!!それ!!ていうかどっか行って!!」

 もはや涙や汗まで出てきてルーカスがようやくパチンと指を鳴らし私を瞬間移動させてルーカスが抱き抱えた。


「うえん!ルーカスうう!!怖いいいい!気持ち悪いよぉ!」

 ルーカスは


「よしよし怖かったですねぇ」

 と頭を撫でる。何故か心地良い。後いい匂いで気分が良くなる。


「くっ!悪魔め!アリーセ嬢を離せ!」


「貴方バカなんですか?どう見てもお嬢様は俺とくっついてた方がまだ楽でしょう?後少し遅けりゃ貴方ゲロまみれですよ?まずはお嬢様にそんな想いを抱かせないようにした方がいいんでは?それに他の女をお嬢様の代わりにしていたとか不潔だよ?」

 と悪魔に言われてしまうヘンドリック。


「そ、それは…アリーセ嬢だと思って…ぼ、僕にも欲求が…」

 私はそれに


「気持ち悪いです!私は貴方とそうなることなんて望んでないですわ!」

 と振って差し上げた!!


 ヘンドリックはガクリとして震えだし…


「女性との関係を断ち貴方を治すものを探します!!僕は学園には行かない!旅に出ます!必ず戻ってきてアリーセ嬢を手にしたい!!悪魔!それまでアリーセ嬢に手出しせずに他の男を遠ざけてろ!お前を殺す道具も見つけてきてやる!」

 と捨て台詞を残しヘンドリックは去った!!

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