第11話 悪魔の魔術書
私アリーセ・ドレヴィス侯爵家令嬢は銀髪の髪に空色の瞳を持つ美人系悪役令嬢!
そして隣にいるのはルーカス・クロイツ。黒髪サラサラの赤い瞳を持つイケメンすぎる悪魔だ。今は執事に化けている。
そして先程から数メートル離れて観察するオットマー・プライセル。丸メガネをかけたお腹がメタボな気のいいお爺さん執事長である。
オットマーは王子達が触った机などを手袋をはめて念入りに掃除している。そして
「お嬢様…そんな悪魔と契約していたなんてこのオットマーにだけでも知らせてくれれば良いものを…」
と言うが
「ごめんなさい…オットマー…オットマーも一応男性だし近付くの嫌だったの」
と言うとオットマーはガーンと凹んだ。
「しかし本当に何故ルーカスにだけには触れるのでしょうかね?やはりお嬢様がルーカスを好きで特別なのだからですか?」
とオットマーが言うので
「な、なな何言ってるのよオットマー!私はルーカスを召喚してすぐに触られたけど蕁麻疹も吐き気も嫌悪感もほとんどなかったわ!すすす、好きとかそんなんじゃないわよ!」
オットマーはふむふむとニヤつき
「そうです!俺はお嬢様の安定剤だから…よく解んないけど安定剤で触ると気持ち悪いの治るみたいだよ」
ルーカスがそう言うとオットマーは
「それもう好きってことではないんですか?もうお嬢様にはルーカスしかいないのですから!お二人は結婚すべきです!!」
私はそれに赤くなった!
「あ、俺も前それ提案しましたよー」
とルーカスがのほほんと言うと
「ほほう!それはいい!で、どうしでしたか?」
ルーカスはちょっとしょげて
「ダメだってー」
と言ったのでオットマーは
「お、お嬢様!何で!?悪魔だからですか?それとも照れ隠しですか?ルーカスは正直顔も性格もかなり良いではありませんか!正直お二人が並んでいるとお似合いです!!」
と恥ずかしいことを言われて私とルーカスは流石に距離を開けた。
「俺は主人に幸せになってもらいたいのであって!どうにか俺以外の蕁麻疹とか出ない男を探せればと!!」
と言うと私はズキリとして凹んだ。
そ、そうよね、私とルーカスは主従関係!私がルーカスに恋してるなんてルーカスは知らないし言えないわ!詰んだ!
あの三人もめちゃくちゃ怖かったし、王子なんか逃がさないって言ってたし!!嫌だ、全力で逃げたい!
「ルーカス…お嬢様はね…旦那様…実の父親にも生まれた時からほとんど接触出来ないのですよ?我が子に触れない気持ちを考えたことありますか?」
と言うとルーカスはえっ…と言う顔になった。
「良いですかルーカス!今お嬢様に触れるのは唯一お前だけです!今まで旦那様は何人も嫌がるお嬢様に男の人と対面させた事があります。しかし…何人、何百人とお会いしてもお嬢様は青い顔で吐いたり蕁麻疹がでたり、まともな会話はほぼできずにいたのです。さぞ辛かったでしょう」
ルーカスはジッと私を見た。
「……俺にどうしろと?」
「お嬢様を癒して差し上げなさい!あわよくば本当に処女を奪い三人に見せつけてやればいいでしょう!…お嬢様…今日の演技のキスは良かったですが…まだお嬢様達がそんな関係でないことはバレバレですよ」
「「えっ!!?騙されなかったの!?」」
ルーカスと私は声を揃えた!名演技だと思ったのに!
「当たり前です!あんな下手くそな演技ではバレますよ!!ぎこちなさ全開です!王子たちは何か対策を講じてくるに決まってますよ!」
「ていうかいい加減に処女ってなんなんだよおー!!」
とルーカスは訳が判らなくて混乱した。
オットマーはそれに
「は?まさか悪魔のくせに処女が解らないのですか?それであんな下手くそな演技だったのですね。納得致しました」
とオットマーが言う。
「え?執事長も知ってるの?」
「当たり前でしょうが!!私を何歳だと思っているんだねルーカス!!」
「え?60歳くらい?」
「59歳です!!」
どっちでもいいわよ!!
「オットマー!もうやめて!そのくだりはもうやめて!ルーカスは純真だからいいの!言わなくていいのよ!」
「えー?俺だけ何も知らないのぉー?」
とルーカスが残念がった。
「とにかく!あの三人を諦めさせるには三人の前でイチャイチャを演じるのです!!自然にね!」
とオットマーは言う。
「な、恥ずかしいわよ!ルーカスに失礼じゃないの!」
「お嬢様、今更でございますよ!今もべったりではないですか!」
「それは…オットマーの口臭が気持ち悪いなって思って…後、唾とか飛んできそうだし…」
と言うとオットマーはガーンと白目になり口に布を巻いた。
ルーカスは一度目を伏せて
「俺…先輩と戦うの嫌です…先輩いい悪魔なんです…でも主人を得た悪魔は主の命令には契約で逆らえません。契約を破るには…魔術書を破り捨てるか燃やすかしないと自由にはなれないんです」
とルーカスが言う。
「何ですと?それは本当かねルーカス」
「うん、本当です」
とこの悪魔は正直に言う。悪魔のくせに。
しかしそれがルーカスだった。
「それではお嬢様の魔術書が危ないではないですか!!お嬢様どこに魔術書を仕舞っているのです?」
「え?普通に本棚に置いてるわよ?」
と本棚を指差す。
魔術書にはルーカス・クロイツと言う名前の本があり中には魔法陣が描かれており、ルーカスの呼び出し方の説明書みたいなものが書かれているのだ。手順通りに私はルーカスを召喚し契約したのだ。ただ、契約する時は悪魔の望むものをと書かれていた。
「あんな目立つ所に置いて!あの三人が見つけていたら危なかったではないですか!!バカ!お嬢様のバカ!!……あ、すみません」
「いいのよオットマー…。迂闊だったわ。まさか契約破棄なんてできるとはね………ならば逆にあの三人の魔術書を破くか燃やすかしたら三人の契約は解除できるのでは?」
と私は思い至った。
「しかしそれは相手側ももう気付いているかもしれませんぞ…」
オットマーは言う。確かに。気付いている可能性は高い!
「ちなみに悪魔同士では魔術書には手出しできませんっす。魔術書に触れるのは人間か魔術書を作った魔女だけなので」
とルーカスが付け加えた。
「オットマー…ルーカスの魔術書をどこに隠せばいいかしら?」
「………ふむ…でしたら偽物の魔術書をこの本棚にビッシリ並べておきましょうか。もちろんカバーは違うもので、本物は…私が隠し場所を何とか致しましょう!」
とオットマーはニヤリと笑った。
「で、本物の俺の魔術書はどこに隠すんですか執事長」
とルーカスが聞くとオットマーはニヤリと笑う。あ、キモイ。
「ルーカス…君は悪魔だね?」
「当たり前っすー」
「君は騙すのが得意と言った…。ならばこの本を違うものに変えて本ではないものにしなさい!本という概念を無くしてしまえばいい!そうだね、お嬢様の服の中にも隠せるアクセサリーはどうかね?男嫌いなお嬢様は絶対に男に触らせないからね、ある意味では安全だろう」
ドヤァとオットマーが言う。しかし…
「オットマー…本を違うものに変えるのは私もいい案だとは思うけど、王子とか他の人がその考えを見透かして女の人を私に接近させてアクセサリーを奪われたらお終いじゃないの?」
と反論するとオットマーはガッと目を見開いた。キモイ。
「さ、流石お嬢様!!て、天才でございますか!?裏の裏をかくとは!くっ!」
「じゃあどこに隠すんですかー?」
とルーカスは部屋をキョロキョロ見渡していい所がないか探してる。バカね、部屋の中なんて一番危険よ!
そして私は考えた。
「胃の中とか」
と言うと2人ともギョッとした。
「おおお、お嬢様!?どう言うことですか?」
「つまりこの本を物凄く小さくして胃の中に収納するのよ…もちろん胃液で溶けたり排泄とかもできないような術をかけるのよ。食べ物か飲み物でゴクリと飲めば一生この本は取り出せないし隠せる!私が死んだらどの道契約は解除できるのよね?ルーカス」
「そっ…そうだけど…主…ほ、本気?いや、それ以外にない隠し場所だ!!主の思考はどうなっているんだ!?転生者だからか?」
「転生者?なんですかなそれは?」
とオットマーにバレた。仕方ないとオットマーには全部説明してやるとうなづき
「お嬢様!!なんという!前世でも男嫌いとは!!可哀想に!」
と泣かれた。涙キモイ。
「とにかくそんなことをあの三人が考えるとは思えません!案外バカそうですからなーあの三人」
とオットマーは笑い、隠し場所は私のお腹の中に決まり、カモフラージュでジャラジャラ宝石類をつけることにしようと話をして気付いた。
「あ!でも待って!?」
「どうしましたか?お嬢様」
とオットマーが聞く。
「ダメだわ…やっぱり…もしルーカスが気絶したら術は解けるのでしょ?」
お腹の中でボンと本が元の大きさに戻って死んだら堪らない。
「………お嬢様…魔女に相談に行きましょうか…」
と力なく最終的にそうなった。
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