第33話 パトリック編3

 僕はヘンドリックの件で何とかアリーセ嬢達の味方になれないか考えたがやはり接触しなければならないかという結論に到る。


 しかし男嫌いのアリーセ嬢を刺激してはいけないだろうしヘンドリック達に魔女の家を教えたのも結局僕…。これ以上彼等がおかしくならないよう何とかしたい気持ちもあった。


 意を改めてアウロラに頼み隠れ家周辺に連れてきてもらい、さてどうやって中に入ろうか?と思案した。アウロラにはとりあえず身を隠して貰う。そうしたらルーカスさんに見つかり僕は不審者扱いで縄で縛られてアリーセ嬢達の前に出された。


「ひいっ!」

 アリーセ嬢は僕を見て悲鳴をあげルーカスさんの影に隠れて様子を伺う。僕も椅子に身を隠した。初めて好きな子と会話して僕は舞い上がっちゃった。まぁとっくに諦めてはいるけど。それでも緊張した。


 彼女は疑っているけど、なんとかお茶会に来てもいいと了承してくれたし、僕も奴等の動きを警戒することにした。


 それからしばらくウキウキしながらお茶会へと足を運んだ。アウロラはむくれていたようだけど協力してくれた。

 でもあの二人の親密度が上がったのかオーラに変化があった。恋人同士のピンクの幸せオーラだ。そっかあ、ついに想いが…。


 お祝いしなきゃとアウロラと街へ行くと変なオーラのピンク頭の女の子が何故か僕を待ち伏せしていたり、店から出ると馬乗りになり顔を確認され変な子と思っていたらアウロラがその子を突き飛ばした隙に逃げて隠れ家でアリーセ嬢に報告すると、彼女は難しい顔でブツブツ言ったので知り合いかと言ったら、


 アリーセ嬢はなんと前世のことを話してくれた。僕のことも信用してくれたことに嬉しくなった。アリーセ嬢の見せつけ練習とかにも付き合って楽しかった。エドヴィン達に虐められていた時とは大違いで毎日が本当に輝いて見えた。彼等の役に立てるように頑張りたい。何よりアリーセ嬢がルーカスさんと幸せそうな姿を見て嬉しかった。それまでの辛そうな彼女を知っているから余計に。


 でも油断した。

 どうやらアウロラと歩いていたところをエドヴィン達に見つかり、アウロラが悪魔だとバレて深夜になり寝ているとエドヴィン達が僕の寝室に悪魔たちを連れて現れて乱暴に取り押さえられた。


「主!」


 アウロラが血相変えて僕を守ろうとしたがケビと言う悪魔やライルと言う悪魔にアウロラはまるで蓑虫のように上から黒いものに巻き付けられて吊るされ動けなくなっている。


「アウロラ!!」

 くそっ!エドヴィン!ダミアン!!

 僕はなす術もなくただ懇願した。腹を時折エドヴィンに蹴られたり殴られたり何とも情けない。


 ついに意識を失って洗脳の術を使われ、僕はアリーセ嬢の居場所を吐かされたらしい。


 僕が目を覚ましたのは数時間してからだ。

 奴等は既にいなくてアウロラは必死に叫んでいた。

 僕は駆け寄りアウロラを封じてる黒いやつを剥がそうとしたが、すごい力で弾き飛ばされ頭を打った。


 でも負けるわけにはいかない。

 僕は何か方法がないかと片っ端から探した。


「待ってて!アウロラ!必ず君を助ける!」

 と言うとアウロラは泣きそうになった。不安なんだろう。


 するとそこへ床が光り、あの魔女のアルファが現れた!!


「あ、アルファさん!?」


「お困りのようだね?魔術書が一つ消えた気配がしてね。おや、あんたじゃなかったか、間違えたね」

 と言って帰ろうとするから


「待ってください!アウロラを助けるものを売ってください!!」

 と必死に言うと


「ふむふむ、ならこれを売ってやろう」

 と懐から白いナイフを出して


「それであの悪魔アウロラに巻きついてる黒いやつを切るんだ。だが、それを使うごとにお前が傷を作ることになるね。黒いやつも必死で立ち向かって来るだろうから…止めるなら今だよ?死ぬかもしれない」


 悪魔と渡り合うには覚悟していたけど…でもここでアウロラを助けて早くアリーセ嬢達を助けに行かないと!


「判りました!いくらですか!?」


「毎度ー!」

 と金を渡すと魔女は帰った。高かった!!

 僕はナイフを握り近づくとアウロラを巻いている黒い触手みたいなのが伸びて鋭利な刃物みたいになり襲いかかってきた!


「パトリック!!」

 アウロラが叫ぶ!僕は剣術も苦手だし、エドヴィンやダミアンにはもちろん勝てない!運動神経は最悪。でも!


「くっ!!」

 黒いものは僕にどんどん傷を作るけど必死に僕は黒いものを刺し続けると黒いものは切れて床に落ちると消えていき、僕も頑張って戦った!自分にも傷はついて血が滲み肩やら腹やら色々痛かったけど最後の力で何とかアウロラを捕まえてた最後の触手を斬ることができて黒いものは消滅した。


 アウロラは自由になると駆け寄り


「パトリックのバカ!!何故!!ここまで!!」

 と綺麗な涙を流した。


「アウロラ…急いで!!隠れ家に!!二人を助けよう!め…命令だ…」

 と言うとアウロラも逆らえるはずがないのに…


「パトリック…判った…でも…傷が治ったら私と本契約してもらう!!今は仮!今はあいつらを倒す為に私も全力でパトリックの願いを叶える!!代償を伴う!!だから後でいいからきちんと本契約して!」


「本契約……僕の何かを奪うんだね?い、いいよ…それでルーカスさんやアリーセ嬢が助かるなら…」

 迷いなく僕は言うと小さく


「バカ…」

 と聞こえた。

 そしてアウロラは傷だらけの僕を抱えて隠れ家に移動した。

 そこで見たものは最悪だった。

 ルーカスさんは十字架に貼り付けにされて悪魔たちやダミアンに傷つけられている。胸には漆黒の剣が刺さりどうやらそれが彼の力を封じ動けないようだと思った。


 アリーセ嬢もエドヴィンに鎖で繋がれてベッドで襲われようとしているし!

 アウロラは巨大な蛇に変身して怒りで悪魔達と闘っている。


 僕も何とか剣を外そうと頑張った。


「ごめん…僕操られて居場所を吐かされて僕のせいだ…ごめんルーカスさん…」

 と泣きながら力を入れて傷口から血が溢れてた。痛みに耐える。

 ダメ元でダミアンに向かい叫んだ!


「ダミアン!!お願いだよ!手伝ってこれを抜いて!!アリーセ嬢が!エドヴィンに!!き、君は騎士だろ!!間違ったことする王子を止めてよ!!僕のことなんか後で痛めつけていいから!」

 ダミアンは少し辛そうに顔を歪めた。

 こいつ…正気に戻りかけてる!?


「お、俺は…俺だってアリーセ嬢を愛してるんだ!エドヴィンは親友だ!親友が次にアリーセを抱かせてくれると言ったんだ!!」

 と信じられない最低な事を言う。いや、悪魔の力で心の奥底の声が出たのか。


「な、なんだよそれ…ダミアン…最低だ…アリーセ嬢は…君達のおもちゃじゃない!!酷いよ!アリーセ嬢が可哀想だ!!うっ!!どうしてだよダミアン!!」


「…………って…俺だって!」

 ダミアンは自分の無くなっている指を見た。


「ちくしょう!!」

 そしてルーカスさんの心臓に刺さっている剣を抜き始めた!!


「ダミアン!!」

 ようやく僕の声が届いた!


「休んでろもやし野郎!!ケビ!!ライルを抑えろ!」

 と僕はゆっくりと膝から倒れる。身体が熱く死にそうだ。

 アウロラ達が戦っているのが薄ら見えるしダミアンもルーカスさんの剣を抜いてくれた。

 ルーカスさんはお礼を言い、エドヴィンに連れて行かれたアリーセ嬢を追っていく。


 すると別の部屋からオットマー執事長の声がする。


「おぉーーい、助けてくれええええ焼け死ぬううう!!」

 ライルと言う悪魔は心臓を移動させていたのか身体に空いた穴を塞ぐと


「…ちっ!主が呼んでるな…ここまでだ!」

 とライルという悪魔は僕とダミアンに向かい雷撃を撃ち、それを庇うようにアウロラとケビが動いた隙に消えた!


「あの野郎!」

 とケビと言う悪魔は言うが、ライルはもういなくなり、僕とダミアンはアウロラやケビとオットマーさん達を火の海から助け、森へ一旦避難した。


 皆酷かったが僕の怪我が一番酷かったのでアウロラが


「医者に見せる!先に私は主を連れて行く!ケビ!頼むよ」

 とアウロラが言い、


「ダミアン…ごめんよ…アリーセ嬢達を助けてあげて?僕の…代わりに…」

 と言うとダミアンは


「今まで済まなかったパトリック様…。騎士にあるまじき事をしてきた。許されんだろうがアリーセ嬢達やエドヴィンを…止めて来る…ケビ!俺たちは館に戻るぞ!」

 とダミアンが謝罪した!あのダミアンが!!改心した!!しかも僕に様付けた!!


「頼むね…ダミアン…」

 それだけ言うと僕はついに気を失った!

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