第30話 悪魔でも愛してる
「じゃあ、俺たちも脱出するぞケビ!アリーセ嬢も早くしろよ、先に行ってる!」
とダミアンは言い、ケビとエドヴィンを連れ消えた。その場にはルーカスと私が残された。
「ようやく終わったわね…」
「俺たちも脱出しようか」
「う、うん…火もうすぐ来るしね…」
ルーカスはジッと私を見て…
「このまま何処かへ二人で消える?もうアリーセが男で苦しまないように…」
「でも…やっぱりそれは逃げだわ…私はルーカスが側にいれば大丈夫よ。学院にも頑張って通うわ…!」
ルーカスはにこりと微笑むと
「アリーセが望むなら俺は守るだけだよ…愛してるよ」
と抱き寄せる。
「ルーカス…あのっ…か、帰ったら…」
ドキドキして顔が赤くなる。
「ん?」
ルーカスは私の言葉の続きを待つ。
「わ、私の処女をあげるわ…」
そう絞り出すように言うとルーカスも赤くなった。
「えっと…鼻血大丈夫?」
「あ…」
そういやそうだったわ…。でも。
「き、きっと大丈夫だわ!!」
ルーカスは半目でふーん?と言い私の顎を持ち上げてキスした。
驚いてる間もなくどんどん深くなってきて…。ついに私は鼻血出した。
「やっぱりダメだねまだ…」
と微笑んだ。くっ!!鼻血めっ!!
そして館から脱出して皆と合流した。
オットマーが小走りに
「お嬢様ーーーっ!!ご無事で!!」
と鼻水垂らしながら走りよってくるから汚いと思って避けるとオットマーは木に激突した。
「大丈夫?オットマー?」
オットマーは顔を押さえて
「ええ…大丈夫でございますよ…パトリック様は怪我がちょっと酷いので先に治療にアウロラ様と医師の元へ行かれましたよ」
「そう…パトリック様が…」
ダミアン達は王宮へと戻り、私たちは侯爵邸に戻った。
*
それからしばらくして私は王子から婚約破棄の知らせを受け書類にサインした。王子は私を忘れて街で会ったヒロインメアリーに一目惚れしたとダミアンが言っていた。ダミアンもちょっとメアリーが可愛いかったと言っていた。しめしめ、この分じゃパトリックもヒロインのこと好きになるかしら?と思っていたけどパトリックは…今ではアウロラに夢中になっていた。
最初はええ?と思ったがこの二人も確かに思い合っていたみたいだ。パトリックが怪我をしていた時ずっとアウロラは離れず看病して好きになったとか後で聞いた。
学園に入学してルーカスは男たちから私を守り、ヒロインのメアリーもルーカスに気付いて近寄って来ようとしたが、エドヴィンとダミアンがそれをさせなかった。特にあのエドヴィンは狡猾にメアリーを囲い込んでいた。
おおっメアリーよ、すまないわね?エドヴィンしつこいから頑張ってね?と心の中で同情しておいた。何日かメアリーの姿が見えない日もあった。たぶん監禁か?と思っていたがぐったりしてエドヴィンに支えられながら登校してきたメアリーはもはや抜け殻みたいになっていた。
おおっメアリーよ、大体想像できるけどエドヴィンとお幸せに!と祈っておいた。ダミアンの方はなんかクソ真面目に自分で魔術書を燃やして悪魔や私への想いもすっぱり記憶から消して今は本当に真面目に王子の護衛騎士をしている。
私は日課になっているルーカスとの濃いキス練習をまだ続けていてその度に鼻血を出していたけどこの頃ようやく慣れてきてやっと鼻血がでなくなった。
「愛が鼻血を上回った!」
とルーカスは訳のわからない感動をしていた。
まぁいいけどね、と私が笑うとルーカスは
「じゃあ、そろそろ処女もらっていい?何か最近教師がアリーセのこと怪しい目つきで見てるよ」
と言う。すっかり忘れていたが、赴任してきた攻略対象のヨルダン・レーヴェンタール先生は最近私に近づいてくるのだ。ヒロインと恋する前に一度は私に恋しなきゃならない強制力世界だから仕方ないとして迷惑だし気持ち悪かった。
しかもルーカスによると
「ヨルダンは上級悪魔2人を従えてるよ。魔術書持ってる。いくら俺でも上級悪魔2人を相手にはキツイかもしれない…だから処女をってのは都合がいい言い訳みたいだけど…」
と言い淀む。確かにそれを言い訳にはルーカスはしたくないのだろうと判っている。
「ルーカス…私は…いいわよ?もう鼻血もでなくなったわ…でもね?処女失ったら血が…不味くなってルーカス嫌いにならない?」
と言うからルーカスは驚き呆れた。
「何で愛してるアリーセを嫌いになるの?処女じゃなくなっても愛してるに決まってるよ…アリーセは俺が信じられない?」
「そんなことはないわ…でも折角美味しい美味しいと良い気分で酔っ払ってるルーカスにもう血をあげれないで他の処女の血を舐めに行ったら悲しいなって一瞬思っちゃったわ」
というとルーカスは怒ってコツリと頭を小突いた。
「そんなことしないよ!俺は血が不味くなってもアリーセのだけ舐めるよ!!」
と言う。不味くなっても…って。
「……そ、それならいいの…ごめんね…不味くなって…」
と言うと
「まだ処女貰ってないうちから謝られても困るよアリーセ…」
と私はルーカスにキスされて押し倒された。
お互いハジメテだからドキドキしながら夜が更けていった。
*
それから数日後…先生の悪魔達と戦って勝ったルーカスが貧血でボロボロになり私は血を提供した。不味くても回復になるかも…。と思って。
心配したけどルーカスは私の血を舐めて驚きの声を上げた!!
「な、何コレ!!」
「どうしたの?ルーカス!!やっぱりクソ不味かったのね!?」
「ち、ちちち違う!!クソ美味くなってる!!?前よりも物凄く美味しい!!どういうこと?また処女に戻ったの?アリーセ!?」
「そんなわけないでしょ!バカ!ちゃんと貴方にあげたでしょ!!バカ!」
するとルーカスは照れて
「そ、そうだよね、あの日はとてもアリーセ可愛かった…ってそれはいいけど何でだ!!?」
と頭を抱えているとそこになんとライル先輩が現れた!!
「ライル先輩!!?」
ルーカスは驚く。
「やあ、ルーカス、お嬢様!お久しぶりだ!俺の魔術書がまたこの世界に出来たからこうして魔界から来てみたんだよ?幸せそうで何より」
しかしルーカスはガッと先輩を掴み、
「先輩!!俺…アリーセの処女貰ったのに血が不味くなってない!!嘘ついたの!この悪魔!!」
いや自分も悪魔だし。
「ルーカス…人間とお互い本当に愛し合ったらその血は永遠にその悪魔だけには極上の更に上の味に変わるって聞いたことがある。それだよ」
と言うとルーカスは
「凄い…」
とだけ言ってバターンとぶっ倒れた!!
「「ルーカス!!!」」
私とライル先輩は叫んだ。あまりにも私の血が美味しすぎで逆に倒れたとライル先輩が言っていた。
*
額にタオルを当てられて俺は目を覚ますとライル先輩はもういなくて側でアリーセが手を握っていた。
「ルーカス…起きたのね…大丈夫?」
優しくて美しい俺のアリーセが心配する。
「うん、ちょっと強すぎたみたい…大丈夫だよ…」
と頭を撫でると気持ちよさそうにする。
「アリーセ…前から聞いてみたかったんだけど…俺のこと怖い?悪魔として」
「怖くないわよ?ルーカスはいい悪魔だし…私の大好きな悪魔よ?悪魔でもとても愛してるわ…」
と抱きつく。
俺は優しく抱き返して
「ありがとう…」
と囁いてキスする。
それを隙間からオットマー執事長が覗いていてアリーセはまた靴を投げた!
「ルーカス…あれを何とかした方がいいんじゃないかしら?」
とアリーセが言い、俺は笑った。
「それなら毛虫にでも変えようか?」
と言うと扉の向こうから「ひっ!」と声がして慌ててドタドタ走り去る音がした。
「全く油断も隙もないわ!!」
と言い、俺は後ろからアリーセを抱きしめて耳元で悪魔の囁きをした。
「アリーセ…2回目も俺でいい?」
と聞くとアリーセが赤くなり
「何回でもルーカスとしか愛さないわ!!バカ!!」
と照れながら言った。
そして悪魔とお嬢様は愛し合い幸せに暮らし、お嬢様の命が尽きるまで悪魔はその死を見届けて魂と共に魔界に還りお嬢様はその後悪魔として生まれ変わり一生2人は仲良く寄り添ったという…。
完
(番外編あり)
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