第24話 悪魔と見せつけ練習2

 隠れ家の一室をルーカスが学園の教室のようにして私達は練習を続ける。

 パトリックも張り切って生徒役をすることにしている。


「おはよう、ルーカスくん、アリーセ嬢!今日も熱いね!」

 とパトリックが嬉しそうに言うけど、正直演技でも男の人にあまり近寄って欲しくはないけどこれも試練よね…。学校には本物の男性がウジャウジャいるのであるから。


「暑い?今日って暑いの?」

 と返すとパトリックは


「いや、そっちの暑いじゃなくてルーカスくんとアツアツって言うことなんだけど…」

 ああ、そっち?ていうかルーカスと私はアツアツなわけ?イマイチアツアツが判らないわ…。

 ルーカスも同様のようだ。


「そんなアツアツなの?俺たち?」

 とそこでオットマーが突っ込む。


「やる気があるのかね!?お嬢様!それにルーカス!!パトリック様がアツアツと言ったらアツアツですぞ!そもそもアツアツ度が足りない!!そう聞かれたら恥じらって…(そんなことないわ、ルーカスが今日もカッコいい)と見つめ合いルーカスも(アリーセの方が可愛い、授業なんてどうでもいい…ずっと見ていたい)と2人の世界を作ってください!」

 と言うのでルーカスは


「いや、授業中は流石に先生とかに怒られるんじゃないの?俺もよく居眠りで怒られて職員室に呼び出されたけどライル先輩が何故か俺の代わりに怒られてくれてくれて…ううっ…先輩いい悪魔だよ…」

 と言うのでなんかライル先輩に負けた気がしたわ。


「ルーカス!そんなことはどうでもいい!怒られたら先生には(すみません、先生…アリーセがあまりにも可愛くて授業が頭に入らなくて!反省文でアリーセがいかに美しく可愛いかの想いを込めて提出します!)とでも言っておけ!」

 とオットマーが言うとロミーにオットマーは殴られる。


「アホかい!あんた!成績を落とすのは良くない!授業は真面目に受けなさいお嬢様、ルーカス!このジジイの言うこと聞いてたらダメです!」

 パトリックも


「授業中はともかく休み時間とか移動時間に見せつければいいんだよ…恋人らしくね」

 とフォローした。


「では次は学生食堂での練習ですわ。ルーカス部屋を食堂にできるかしら?」

 とケーテが言い、ルーカスは指をパチンと鳴らして食堂に変えた。


 ケーテはパンやスープを運んできて机に並べる。


「学生食堂は貴族席・庶民席・成績上位席と別れています。お嬢様たちは貴族席でいいです。なるべく皆に見えるようにお互いに食べさせ合いっこしてください」

 とケーテが言った。食べさせ合いっこ?

 あのもしや…あれなの?

 あーん…ってやるやつ!?


「恥ずかしいわ!ケーテ!」

 と言うと


「やるのです!これは練習です!お嬢様!」

 と睨まれた。


「判ったわよ…ルーカス座りましょう」


「あ、うん…」

 と席につき私はスープを持ちルーカスの口に持っていくと止められた。


「はい、お嬢様失格!」


「えっ!?あーんってするんじゃないの?」

 と言うとケーテは


「あーんの前にお嬢様…熱いスープですよ?冷まさなくてはいけないでしょう?あーんの前にフーフーです!」

 と言われた。とりあえず私は言う通りフーフーと冷ましてルーカスに


「ルーカス…あーんして…?」

 と可愛く言ってみるとルーカスは照れてパクリとスプーンを咥えた。


「なるほど…恥ずかしいですね…」

 とルーカスは言うが、オットマーは


「生温いですな!ルーカスの膝の上にお嬢様を乗せて食べさせ合いをすればいい!時折口移しで料理を運び合いっこする方がいいかもしれません!」

 と余計なことを言うオットマーに


「ルーカス…そんなことしたら流石にまた職員室に呼ばれるわ…」

 と言い、オットマーの意見は無視して食堂での練習を続ける。デザートのケーキなんかわざわざほっぺにクリームをつけて、それをルーカスが指に取り舐めとると言う恥ずかしい練習もした。オットマーは直接舐めろと言うので無視した。


 パンと手を叩きロミーは


「次は図書室ですよ!?ルーカス!」

 と言われてルーカスはパチンとまた図書室へと変えた。


「図書室では二人席があります!何としてもそこを確保するのです!では私とこのジジイが向かいますからお嬢様たちは先に席を取ってください!」

 とロミーに言われてケーテは


「では恋人席争奪戦スタートです!」

 と合図した!争奪戦ってなんなの!?ダッシュで二人が二人席に向かうのでルーカスは


「マズい!席が取られるよ!アリーセ行こう!」

 と手を取り進む!しかし動揺して私はこけそうになり気付いたルーカスに支えられて抱き合う形になり余計に恥ずかしくなる!その間にのろのろ移動していたロミーとオットマー。


「早く動かんかい!うすのろババア!」


「あほか!お嬢様たちを先に座らすんじゃから手加減せんかすけべジジイ!」

 と言い合っている。


「アリーセ怪我は?」


「な、ないわ…ありがとうルーカス…」

 と照れ合っているとパトリック様が本棚の影からグッジョブの指を出して感動していた!

 するとそこで


「パトリック私に童貞頂戴」

 とアウロラがパトリックに迫りパトリックはコツンと叩き


「ダメだよアウロラ。図書室では静かに本を読むのがマナーだよ?イチャついてるとすぐに図書委員に追い出されて出禁食らうよ?」

 と言うから


「それってもう図書室はダメじゃないですか!」

 と私は突っ込んだ。


 夕方までワイワイと変な練習は続き、それではまた明日とロミー達は夕食の支度へと向かった。パトリックとアウロラも帰りルーカスと二人になりドキドキしてくる。


「アリーセ…今日はお疲れ様」

 と頭を優しく撫でるルーカスに胸がキュンとする。


「わ、私達…ちゃんと恋人同士に見えるかしら?」

 と言うと…


「もし見えなくても俺はアリーセが大好きだよ?あっ…そう言えば……いや…やはり何でもないよ…」


「何?またオットマーが何か言ったの?」

 ルーカスは焦り


「何で判るの?」


「ルーカスに変なことばっかり言うから…オットマーは!それで何を言われたのかしら?」

 と詰め寄ると


「濃いキスの練習も毎日行いなさいと…毎日は無理だ…アリーセが毎日鼻血出しちゃう!」

 毎日鼻血出したら大変な変態女だわ!


「なら…そ、そっちは週一くらにしましょうか?」

 とルーカスを見るとコクリとうなづく。


「それからロミー侍女長は……学園入学前までに何かあったら困るからもう早くアリーセの……何でもない…」

 と言いかけてやめた。


「何なの!?ロミーまで?何を言われたの言いなさいルーカス!」

 と私が言うと主の命令には逆らえなくルーカスは赤くなりながら


「しょ…処女をもらっておけと…」

 と言われて私も赤くなる。ロミーめ!!


「そっそれは!濃いキスで鼻血が出なくなるまで無理だからっ!少なくとも!それに何で学園入学前にこだわ…あ…」

 もしかしてロミーは王子達が私を狙っていて万が一にも先に嫌がる私を無理矢理なんてことがあると困るから言ってるのかも…。


「ロミーさんが心配してたよ。アリーセのこと…もしもの時を思って、ハジメテは好きな人となさいって…」

 と言われる。それはそうだけど、


「もちろんルーカスがハジメテじゃないと私も嫌だけど、でもあの…処女をあげちゃったら私の血って不味くなるのよね?それちょっとルーカスには可哀想だわ…悪魔は血が好きなんでしょう?」


「そ、そうか……血が不味くなるのか…それはちょっと残念だけどでもお婆ちゃんになる前には貰うよ…それまで俺が守る」


「ルーカス…」

 嬉しくて飛びついてしまった。

 ルーカスも嬉しそうに私を抱きしめてくれた。

 幸せに酔ってると部屋の扉が薄く開き、オットマーがボソボソ言った。


「そこでベッドに押し倒すのだルーカス!」

 と。私は靴を脱いで隙間のオットマーの顔目掛けて投げたのだった。この靴は後で捨てようと思う。

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