第13話 隠れ場所を探せ
「お帰りなさいませ!お嬢様!」
俺と主が邸に戻るとオットマー執事長がなんと女装をしていた!
主がそれを見て
「ぎゃあ!!オットマー!!何なのその格好は!!」
と引きつけを起こしそうになる。
やり過ぎだ爺さん。
「……やはりダメでしたか。少しでもお嬢様が気持ち悪くならないよう工夫してみたのですが…」
オットマー執事長はしゅんとした。
「余計に気持ち悪くなったわ!」
仕方ないので俺は指をパチンと鳴らしてオットマー執事長に術をかけて女にしてみた。
「あっ!!?凄いわ!オットマーが女性になったわ!凄いじゃないのルーカス!」
「これも俺たち意外の人間に仕掛けがバレたら男に戻っちゃいますけどね…」
と言うとオットマー執事長は鏡を見て
「ルーカス!ちょっと!きなさい!」
「何ですか?」
とオットマー執事長に近づくと
「もうちょっと美人でお腹を引っ込ませて胸を出してください!そして服はメイド服!」
と細かい指摘をされ、俺はまた修正した。
すると執事長は美人メイドになりクネクネと鏡の前で踊った。
「うふん!どうですかな?お嬢様!」
「ぐえっ!元のオットマーを想像したら気持ち悪いわ!」
「ですがようやくこれでお嬢様に触れてもらえますな?」
とオットマー美人執事長は手を差し出す。お嬢様はそろりと握手して、ブワリと蕁麻疹が出た!
「何でですかーー!!」
美人執事長はまたショックを受けた!
「いや…やっぱり元のオットマーのイメージが浮かんで無理リームー…」
と主が俺にぎゅうとくっついて……だから…柔らかいの当たってるから!
俺は赤くなる。
街にいた時もあのもう顔も思い出せないヒロインの女にぶつかった時も主は後ろから俺の口を塞いだけどその時も背中に柔らかいの当たるし!自覚してほしい!
オットマー執事長にヒロインと会ったことを話すと
「ふーむ…ヒロインですか…また厄介な…お嬢様達が学園に入学するまでは後半年ですな…。しかも三人は同様に魔術書と悪魔を従えております。ルーカスと戦闘になり、もしルーカスが破れたらお嬢様があの三人の誰かのものに…嘆かわしい…」
と言うと主は
「ちょっとオットマー!ルーカスが負けると決まったわけではないわ!!ルーカスは私を守ってくれるんだからね!私はルーカスを信じるわ!」
と言われてドキリとする。
主…俺が負けないと信じてくれるんだね…。なんか元気出てきた。実は俺が先輩に敵うわけないんだけど…。
先輩はそれなりに強いし、後の2人は初めて見た悪魔だから名前は知らないけどそれでも先輩は悪魔学校時代に気がつくと頰や拳に血をつけて下級生達をボコボコにしてきたぜ!とよくわからない教育的指導?をしてきたと笑っていた。怒らせたら怖いと思った。
「やっぱり一番厄介なのは王子だわ…ヒロインと王子を何とか会わせて王子に惚れさすとか…。あっ!そうよ!ルーカス!オットマーにヒロインに化けてもらって夜会にこっそりオットマーヒロインが侵入して王子に惚れさせるのはどうかしら??」
と主が提案した。しかし…
「主…ごめん…俺…ヒロインの顔もう忘れちゃったよー…。もう一回覚えにヒロインに会いに行かないと…」
「それは絶対ダメ!!」
と主が強く引き止めた。ど、どうした主?
「だっ…だってあの子…メアリーは…ルーカスを見て…絶対に惚れていたわ!!」
と言う。
「ええ?ないでしょう?俺なんか顔も覚えてないのに…」
「ルーカスがそうでも向こうはバッチリ覚えてるわ!!」
「じゃあ、透明になって気付かれないよう覚えてくるのは?」
「そ、それもなんか嫌!とにかくもうあの子とは関わらないで!そもそも顔忘れたんだから行けないでしょ?」
それもそうだな…。
それを見てははーんとオットマー執事長はうなづいた。
「お嬢様それはしっ…」
ゴンッ!!
と主がオットマー執事長の顔に花瓶を投げ付けた。
「ゴホっ!」
「オットマー?変なことを言ってはダメよ?」
「すみません、お嬢様…」
俺はとりあえずタオルをオットマー執事長に渡すと頭を拭きながら執事長は
「ルーカス…今すぐお嬢様とどこかに隠れなさい…。そしてあわよくば既成事実を作ってしまえばあの三人も諦めると思いま…」
ガスッ!!
オットマー執事長は今度は陶器人形を投げられた!
「とにかく!あの三人が攻めて来る前に隠れた方がいいのは確かだわ!でもヘンドリックにかかれば居所は割れそうだし…。王子も護衛騎士も侮れないわ!彼らの知らない場所でないとダメ!」
「ふむ…ならば…人の近寄らない廃墟の館などどうでしょうかな?お化けが出るような所にお嬢様が隠れているとは思わないでしょう!」
と額を赤くした美人執事長が言うと主が
「確かに…それなら隠れられそうね…でも廃墟に灯りがともってたら誰かにもし見られたらおかしいと調査に来る者がいるかもしれないわ…」
「なら俺が術で誤魔化すよ…それならバレないだろうし…でも…お嬢様はお化け平気なんですかね?」
と俺がからかうと主は
「ルーカス…が何とかしてくれるんでしょ?なら平気…」
と袖を掴まれて俺は心臓がキュッとした。
…アリーセ…
ハッ!ダメダメ!主が期待してるんだから変なこと思っちゃだめだ!
「はい!お化けなんて俺が何とかしますから大丈夫です!」
「私も行きましょう!料理を作る者がいりますしね!私はちょっと街や厨房へ行って食材を持ってきますからしばらくお待ち下さい!」
と美人執事長はそのままの格好で出かけて行った!
「問題はどこの廃墟を探すかだわ…没落した貴族の館が朽ちたものや火事で焼け落ちたものもあるけど…王都から遠い方がいいわ」
と地図を広げて悩む主は俺に提案した。
そして一つを指差した。
「ここはどうかしら?子供でも近付かない怖い噂のある廃墟よ。昔浮気した奥様を殺して自殺した伯爵の別邸で森の奥深くにあるのよ…」
「成る程…それなら誰も近寄らないかもしれないね…ちょっとオットマー執事長が戻るまで下見に行ってこようかな…」
と言うと主が
「わ、私も行くわ!!」
と言う。
「でも…すぐ戻って来るよ?危険がないか調べなくちゃいけないし」
「ルーカスのいない間に三人がきたらどうするの?」
「でも、もう夜になるし、流石に来ないでしょ今日は」
「あの三人なら夜這いにだって来るわよ!!さあ!行くわよ!ルーカス!」
と主が飛び付いた。
仕方ないなと俺は地図を持ちパチンと指を鳴らし主を抱えて消えた。
*
その直後…フッと宰相の息子ヘンドリックと悪魔オスカー・ヘルメスという灰色髪と赤い目の悪魔がやって来てアリーセの部屋を見回した。
「どういうことだ!?アリーセ嬢はどこだ!?」
と探すヘンドリック。
「夜這い失敗じゃないですか主…だっさ!」
とオスカーが言うと
「ふ…僕の経験上アリーセ嬢が処女なのはあの反応で判る!悪魔も演技が下手くそだったしな!アリーセ嬢のハジメテは僕が必ず貰うのだ!バカ王子やお堅い騎士より先にね!」
とニヤつくヘンドリックにオスカーは…
「いやだからそのアリーセお嬢様いない…」
「だからっ!どこ言ったんだよおおおお!!」
とヘンドリックは悔しそうに叫び次に本棚を睨んだ!
「いないなら好都合!魔術書を探すぞっ!」
とヘンドリックはアリーセの部屋を探しまくる。
「くそっ!どれもダミーだな!!」
とカバーを外しダミーを投げた。どこだ!?
ドレッサーを開けて探しまくりある引き出しを開けてヘンドリックはそれを掴んだ。
「こここ…これっ!!」
ヘンドリックは興奮した。そして…それをソッと自分のズボンに仕舞い込んだ。
そこで廊下を歩いて来る音がしてヘンドリックと悪魔オスカーは消えた!
「…ヘンドリック様ー…あんた…変態だな…」
とオスカーは呆れた。ヘンドリックがズボンのポケットに仕舞い込んだのはアリーセの下着のパンツだった。
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