第2話 その悪魔純情で従順であった

 こんなイケメン悪魔で願いを叶える為に処女を捧げろといってくるくらいだから、こいつ、私の前の主人とはそういうことをしてるわけよね!いやらしいわ!不潔だわ!ほんと!!


「あーあ、ほんとなら一生キスなんてするつもりなかったのに契約の為奪われたわ!私のファーストキスが!くうっ!」

 と言うとルーカスは


「ああ、俺もさっきの初めてしました!!」

 と言いずっこけた!!


「はい?貴方ねえ!処女くれとか言っておいてなんなの?騙してんの?流石悪魔だわ!そんなわけないでしょうが!前の主人とあんなことやこんなことをやりまくってるに決まってるじゃないのよ!!」

 と言うとルーカスは


「いやあ…俺…悪魔学校出たばかりなんでお嬢様に呼ばれたのが初めてなんです。つまりこれは初仕事なわけですよ?学校で習ったんですよ、人間に呼ばれたらとりあえず処女くれって言えって!」


「なっ…何ですって!!?貴方じゃあ童貞?いえ、学生時代とやらに流石に彼女はいたでしょう?ほほほ!騙そうとしても無駄よ?」

 こんなイケメンに彼女がおらんはずがない!!


「いやあ…なんていうかうちの学校男子校だったし?そういうのないんです。ほんと。全く女の子とかにも興味なかったんで。男にもないけど。恋愛音痴なんですかねー?あっはっはっはっはっ!!」

 とルーカスが笑った!

 え?

 こいつめっちゃピュア?それともやはりそこは悪魔だし嘘つきなのかも!!ダメだ信じるな!


「キスというのはさっき初めてやりましたけどあんな感じなんですねー?普通の恋人はどうなのか知りませんけどー??あ、貴方の前世でやってたその乙女ゲームとやらではどんなキスしてたんです?」

 と聞かれて私は思い出してゾワリとした。


「めっちゃ濃いやつ!気持ち悪い!絶対あんなのやりたくない!!」

 とスチルとかいうの思い出して私は吐きそうになる。イラストは綺麗だけどサウンドが嫌過ぎた!エロゲームかよ?と思ったけどギリギリエロゲームではないのにな!!リップ音とかいらんやろが!!って思った。


「ほお……まぁもう夜も遅いですしさっさと寝てくださいよお嬢様…僕は隣のお部屋で眠らせてもらいますね。丁度空き部屋だったので改良させていただきました!おやすみなさーい!」

 と下がった。


「はあ…なんなのあの悪魔は…まぁあいつは蕁麻疹出ないし私の望みもなんとかなりそうね……」

 変わった悪魔もいたもんだわ。


 *


 自分の部屋?というか改良した部屋に入るルーカスは思案していた。

 初めての仕事主だし、ヘマはしない。学校で習った処女要求は主が男嫌いなので譲歩したけどまぁあれで良かったよね。

 でも爺さんの手握っても蕁麻疹でるなんて…主一生結婚できないよな。可哀想に。


 いやしたくなさそうだからいいのか?主的に。

 しかし主が言っていた濃い気持ち悪いキスとかもあるんだなぁ…人間って変なの。

 そういや俺、処女くれって言ったけど、あの授業めっちゃ眠くて寝てたんだよね。


 …なんだろ?処女って??


 と純情なルーカスはポフリとベッドに横になった。


 次の日アリーセお嬢様がまた確かめるから手を握ってと言い、握手に応じるがやはり蕁麻疹は出ない。


「やっぱり貴方が悪魔だからよ!絶対そう!」


「何でもいいですけどねー…」

 とコポコポと紅茶を入れる。


「あら、上手いわね」

 とアリーセお嬢様が言い、


「悪魔は何でもできるので普通ですねぇ」

 と言っておいた。


「あ、あ…貴方はその…嫌じゃあなかったの?昨日のキスは!貴方初めてでしょ?」


「はぁ、契約のキスでしょ?別になんとも…」

 と言うと


「な、なんともももおおお?あんな感じとか言ってなかった?どう言う感じだったのよー!」

 どう言う感じと言われてもねぇ…

 あれが初めてだし他に比べようがない…。


「しいて言えば…柔らかかったくらいですかね…そちらは?」

 と聞くと真っ赤になり


「淑女に失礼なことを聞くなー!!」

 と殴られた!!


「ええ??」

 人間はよく判らないよ。


 するとオットマー執事長がおずおず入ってきて


「アリーセお嬢様!来られてます!第一王子エドヴィン様がお見えに!!」

 第一王子エドヴィン・フルトベェングラー様が!?

 げえええっ!どうしよう!!婚約者だし会わないと失礼か!?いや、学園始まったらヒロインの方に行くんだからわざわざ来るなっての!!

 チラリとルーカスを見ると


「オットマー執事長…お嬢様はちょっとお腹が痛いそうですよ?」

 と言ってくれた!ナイス!!これで帰ってくれるかな?


「私も実はそう言って帰そうとしたのですが…余計に心配になり見舞いたいとこちらに向かっております!!」

 なっ!来るの!?ひいいい!

 するとパチンと指を鳴らしてルーカスは執事長を眠らせて私を抱えて窓を開けてヒョイと空中を移動しそのまま屋根の上に着地した!!


「えええ!?」

 やっぱりルーカスに触られても蕁麻疹は出ないけど突然の空中浮遊に驚いてしまう。

 屋敷の中からは


「お嬢様はどこだ!?」

「アリーセ様!!」

 と探し回る声。


「ちょっと!いきなり消えたら皆誘拐されたと思うじゃない!!」

 ルーカスはポンと手を打つと


「あっ、そっか!それもそうだな…身代わりを用意しておけば良かった…アリーセお嬢様があんまりにも嫌そうな顔してるから逃げ出したいのかと思って」


「そりゃ逃げたいわよ!当たり前じゃないの!」


「じゃっ、諦めるまで待ちますか!」

 と呑気に屋根に寝転がるルーカス…

 流れる雲に少しの風…ここにはルーカスと私がいるだけ…。


 サラサラと綺麗な黒髪が靡いた。ルーカスの瞳は真っ赤な血の色だが、皆が見ても何とも思わないのだ。

 ルーカスはイケボで言った。


「さて…どう致そう?お嬢様?王子の記憶を消す?王子を殺す?王子を世界から消す?」

 悪魔らしく…だが爽やかに聞く。


「王子はヒロインと結ばれて欲しい…でもまだヒロインと王子は出逢っていない…。王子は私へまだ感心が向いている…。それじゃダメだ。僅かでも残ってたら私は学園祭終了後娼館に放り込まれることはしたくない!王子だけじゃなくどの攻略対象でもそう!」

 ルーカスは私を見て


「ふうん、そういうのが君の…この世界に縛られたルールってわけだね?」


「そうよ…私は悪役令嬢…ヒロインがどの対象者を選んでも必ず卒業式に断罪イベントが発生する!学校に行くのが嫌…」


「とりあえず王子の貴方への気持ちを消しますけど…何度消しても貴方の姿を見たら今だけあるお嬢様への思いは復活するかも…これがこの世界のルールなら必ずそうなる」


「強制力?ってわけ?決められた恋愛の型に嵌められるのは嫌だわ…ルーカス私考えたわ…王子の今の私への思いを消し記憶をすり替えて!そして私が王子には醜女…ブスで性格が最悪に見えるように!」

 と私はルーカスに頼んだ。

 ルーカスはにこりと笑みまたドキリとする。


「仰せのままに!主!では俺以外のこれから出逢う全ての男性の記憶を…そのようにすり替えましょう!闘わずして本当の姿を隠して逃げる汚い戦法です!流石我が主!」

 と言った。

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