第7話 悪魔の先輩の来訪

 主に無神経だと言われて頭突きされてしまい、何が間違っていたのか解らない…。

 熱出したら気遣うよな??


 俺は隣の改良した自分の部屋に入る。

 するとそこには…


「よっ!ルーカス!初仕事おめでとう!!ちゃんとやってるか!?」

 と悪魔学校時代の先輩がそこにいた!


「ライル先輩!!」

 ひとつ上のライル先輩は気のいいお兄さんみたいな存在でいつも俺を笑わせてくれるのだ。


 ライル・ノイード先輩は、ライムグリーンの髪色に少しつり目の赤い目を持つ悪魔だ。


「心配したんだぜ?お前急に召喚されたって聞いてさ…お前にも主人ができたんだな?ちゃんと処女もらったか?どんな主人?まさかババアじゃないだろうな?」


「ん?若いよ?処女は貰ってない」

 と言うとライル先輩は俺の肩を叩いて


「そっか…主人には恋人か夫がいたんだな?可哀想に…ま、初仕事だしドンマイ!」

 と言われてキョトンとした。


「いや、恋人も夫もいないよ?だって主は男嫌いだからキスで契約した」

 と言うとポカーンと先輩の口が開いた。


「は?何?男嫌い?じゃあ処女か?」


「??先輩…その処女ってなんすか?俺授業寝てて…」

 ライル先輩は額を抑えて


「そうだった…こいつは…恋愛音痴だったの忘れてた…」

 と頭を抱えた。


「でも…男嫌いの主なのによくキスなんかできたな?」


「うん、主なんでか俺だけには唯一蕁麻疹出ないし大丈夫だし、安定剤らしいよ?」


「うん、言ってる意味が一つも解んないぞ?ルーカス」


「でもさ、主の血をちょっぴり飲んだら極上に美味くて俺、酔っ払っちゃった…」

 と言うと先輩は


「………酔ったって…お前その主に惚れたのか?」

 ん?


「?何でですか?」


「だって…悪魔が人間の血を飲んで酔うなんて余程好みの女じゃないと起こらないぞ普通…」

 ………?


「そりゃ、主は美人だと思いますけど、まだ契約したばかりっすよ?血は本当に美味しかったですが…」

 と言うとライル先輩が


「なら、俺にもその娘の血舐めさせろ、確かめてやる」

 と言うので


「は?嫌です」

 と即座に言葉が出た。あれは俺の血だ。俺以外が飲むなんて…いくら先輩でもだめ。


「な?ほら…他の奴に飲ませたくないなんておかしいよ?ルーカス…お前気付いてないんだよ…お前は…恋愛音痴だろ?いいか?物凄く鈍い!」


「??物凄く鈍い…」


「お前…顔だけは無駄にいいから…男でも慕っている悪魔はいたろ?やたら親しく話しかけてきた奴いただろ?俺が牽制しておいたからお前は無事に卒業できたんだ!他にも女悪魔の誘惑とかあったけど、お前笑顔でスルーしてたしな」


「え?そんなことありました?」


「全く身に覚えなしかよ!!どんだけ俺のフォローが大変だったと思ってんだ!馬鹿野郎!」


「え?何かよく判らないけどすみませんっす」

 先輩がとにかく一度主に挨拶をと言うので翌日顔を合わせることにした。


 ………うーん?なんか面倒臭いな。


 *


「おはようございます、アリーセお嬢様」


「おはようございます、お嬢様」

 主はライル先輩を見て


「ぎゃっ!だ、誰よっ!?近寄らないで!」

 と壁に下がった。


「おおっ、本当に男嫌いの処女だ!」

 とライル先輩が笑った。


「先輩…主が怯えてます。もう帰って」


「えっ!?はやっ!」


「ルーカス!?何なのその人!?知らない顔だわ!?」

 と怯えながら主が言うので


「俺の先輩です、お嬢様!同じ悪魔ですよ!俺が主人を得たので様子を見に来てくれたんです!」

 と言うと


「初めましてお嬢さん!俺はライル・ノイードと言います!いつもルーカスがお世話になってます!」


「ルーカスの先輩悪魔?」

 と主が言うと先輩は


「早速だけどちょっとだけ血くれない?どんな味か確かめたくて!」


「先輩!」


「何であんたにあげなきゃいけないのよっ!嫌よ!契約してるわけでもないのに!」


「なら俺とも契約しよう?悪魔を2匹従える主だっているんだぜ?俺もサッとキスだけでいいけど」

 と一歩ライル先輩が踏み出したところで俺はガツーンと先輩を殴りつけていた…。


「いってえええ!!」


「は!先輩すいませんっす!あれ?な、何で?」

 自分の拳を見て何で殴ったのか解んなかった??


「ルーカス…」

 そうしてるうちに主が顔色を悪くして吐きそうになる!


「先輩出てって!早く!」

 と押しのけ


「おっ!おお!…んじゃまた来るわ!」

 と先輩は消えて、俺は主に駆け寄ると抱きつかれた。


 はあはあと息をしている。過呼吸かな?背中をさすり落ち着かせる。


「大丈夫ですか?」


「大丈夫じゃないわよ!私とキスとか言うから気持ち悪くなったわ!落ち着くまでルーカスはくっついてて!」


「仰せのままに」

 と俺は従い銀髪を撫でると、空色の瞳と目が合った。


「ルーカス…貴方に撫でられているとなんだか落ち着くわ…気持ち悪いのがスーッとする。やはり安定剤ね…」

 と言われる。やはりおかしいよこのお嬢様は。


(お前…その主に惚れたのか?)


 先輩の言葉が蘇り俺は手を止めた。

 主が怪訝な顔で見た。何で止めんのよと。


「ルーカス?顔が少し赤いわよ?風邪?」


「え?お嬢様こそ、赤いですよ?風邪でも?」

 と言い、お互い考える。


「何かのウィルスで二人とも感染したのかしら?」


「なるほどー…そうかもしれません?」

 とうなづき合う。風邪引いてたのか俺!


「慣れない人間の世話で疲れたのね?今日はもういいわ!下がって」


「でも、お嬢様の看病をしないと…」

 と額に手を入れると少し赤くなり


「平気だから!」

 と横を向かれた。

 平気ではないだろう…。俺はお嬢様を抱えてベッドに運ぼうと姫抱きにすると暴れられた。


「何すんの!」


「大人しく寝ていないと!暴れないで!…あつ!」

 体勢が崩れてこのままでは頭を床に打ち付けてしまうぞ!咄嗟に指を鳴らしベッドまで瞬間移動したのでなんとかお嬢様は無事に頭を打たなくてベッドに沈んだ。


 上に乗る俺を押しのけようとして顔を見ると真っ赤になっている。こりゃ重症だな!?


「すみません、氷を…」

 と言うと


「ルーカス…私…とても…不整脈よ!あんたのせいよっ!!どうしてくれるの?」


「不整脈?やはり俺でもダメでしたか?近寄らないようにしますね」

 と氷を取ってくると言い俺は下がった。

 不整脈とは!落ち着くんじゃなかったのか?一時的なものだったのかな?うーん、これからは主の側にあまり寄らないように気を付けよう。

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