第2話
彼女とは一度だけ会ったことがある。
それは昨日のことだ。えらく最近のことだが、事実なので仕方がない。
俺が暇つぶしに図書室で勉強をしていて、部活動の終了時間まで校内に残ってしまい部活やってるリア充たちの中を通って帰らなければいけないという地獄を味わった時、俺は帰り道の公園で木の上の方を呆然と見上げる1人の少女を見かけた。その先には一匹の猫。そして木の根元には木を登ろうとしている高校生がいた。
それが紛れも無い、彼女、小牧花梨だ。
木は少し高く、根元に登りやすい枝もなさそうで流石に校内1の美少女でも大変な事になりそうだったので(主にスカートの中身などが)自称捻くれ紳士である俺が助けてやることにした。
「あの猫か?」
だが恥ずかしがり屋の俺は小牧に話しかけるのが恥ずかしくなり木の上を見上げる少女に話しかけた。
「うん。ちーちゃんはね、木に登ると降りれなくなっちゃうの」
「俺に任しときな。」
小牧がこちらを見て不審な目を浮かべてきたのを無視して俺は小学校の頃休み時間にひたすら1人でやった木登りを思い出しながら木を登り、猫を捕まえて少女に渡してやった。
少女はお礼を言ってその猫を抱きながら嬉しそうに去っていった。ただそれだけだ。
小牧には何もしていない。話しかけてすらいない。だから仮にもお礼をとか言われても困るのだ。
だからあるとすれば私が助けてあげようとしたのに勝手なことしないで!
と言われるくらいだ。
「えーと...どこに行くんだ?」
俺は目の前に立ちふさがった小牧に聞いた。場所によっては断る必要がある。体育館裏とかだったら絶対やだ。この場合は愛を語り合うのではなく拳で語り合うことしかできなそうだ。
「い・い・か・ら・付いて来なさい。」
そういうと、小牧は強引に俺の手を引き、教室を出た。
今頃だが、小牧はこの学校でもトップクラスの美少女である。その肩まで伸びたさらさらの黒髪に、細い足、美しく、整った顔立ちに引き締まった体。胸部こそお可愛い感じだが、その容姿は校内でもトップを争う美少女と言われても疑うことなどない。
なので両手でがっちり俺の腕をホールドされると非常に困る。
周りからも不審な視線が飛んでくる。
それはそうだ。
学校でも超絶人気を誇る小牧花梨と学校でも最底辺のボッチ男、神野柊が一緒になって歩いているのだから。
「なあ、そろそろ教えてくれないか?俺なんかを連れ出して一体何のようなんだ?」
俺の問いに対して小牧は無言を貫いた。
しかし程なくして、部室棟に入り、ある教室の前で足を止める。
「...?」
「入りなさい。」
小牧は教室のドアを開けるとそう言い放ち、先導して中に入っていった。
「ここ部室棟だよな?見た感じここは空き教室にしか見えないんだが...」
と小牧に説明を促すように視線を向けると、
「ようこそ、校内ボランティア部へ、あなたが記念すべき2人目の部員よ」
「は?」
帰ってきたのは校内ボランティア部という謎の単語と歓迎の言葉だった。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます