第12話

「この世には恋愛シュミレーションゲームというものがある」


俺はその方法を口に出した。


「恋愛、しゅみれーしょん? 」


山上は首をこてんと右に傾けて頭の上にクエスチョンマークをつけている。


小牧はというと、頭痛でもするかのようにこめかみに指を当ててため息を吐いた。


「あなた、本気で言ってるの? 」

「ああ。いたって真面目だ」


「そう。やはりあなたは二足歩行しか取り柄のない可哀想な男のようね。私が一生飼いならしてあげるわ」


おっと、完全にバカにしてるじゃないですか…。


「あの、その恋愛しゅみれーしょんげーむ? というのはどういったものなんでしょうか? 」


どうやら山上は知らないらしく先程から話についていけてない。


「そのままの意味だ。そのゲームで主人公として恋愛をシュミレーション。体験することができる」


「何ですかそれ! すごいじゃないですか! 」


「はは、まあな」


俺は苦笑した。まあ、ちょっと現実離れしたものが多いいですけどね。


小牧はもう何もいうまいと無言で俺の肩に身を寄せて、目をつぶった。あの、だから近いです。なんかもう自然とそんなことやってますけどいつから俺たちはそんな間柄になったんですか?


山上は一瞬肩を寄せた俺たちを交互に見て、赤面した。が俺は平然とそのまま話を続けた。


「まあ一応現実離れしたものが多いものの多少の効果があることを期待できることを期待できるとは思う」


「本当に大丈夫ですかね、それ? 」


「ああ、まあ善は急げだ。スマホでも無料でできるアプリとかあるらしいから今日は帰ってやってみろ」


「はい! ありがとうございます! 失礼しました! 」


山上はそういうと、そそくさと帰っていった。


しばらく教室に静寂が訪れる。


「あなた、そういったゲームはよくやるの? 」


瞳を閉じたまま、小牧が聞いてくる。


「まさか、乙女ゲームなんかやったことねぇよ」


まあギャルゲーはかなりやりますけどね。

とは流石に言えないので、言われたところだけを答えた。


うん。嘘はついてない。本当のことを言ってないだけだ。


「ふーん。でも深夜アニメなんかだったりライトノベル? というのかしら、そういった類のものは結構部屋に置いてあるわよね? 神野

くんはオタク文化に関心が高いのかしら? 」


「いや、なに別に特別オタクってわけじゃないぞ。本だってラノベ以外にも沢山あるしアニメは単純に見てて楽しいだけだ」


俺は別にオタク文化に非常に敏感なわけではない。2次元の女の子との結婚願望があるわけじゃないし、特別発売日などに書店やゲーム屋に並んで特典付きのゲームを買ったりするわけでもない。


むしろこれでオタクとか言われたら他のオタクの人たちに失礼なレベル。


「そう。ならいいのだけれど…」


この時小牧が何を企んでいるのか俺は知る由もなかった。

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