第28話
「いつまで小牧先輩はこの家に入り浸る気ですか!?いい加減に帰って下さい!!」
本日は土曜日。朝ご飯を食べているところ俺の家のインターホンが鳴った。
玄関の扉を開けるとそこには山上がいて、むすっという顔のままお邪魔しますと勝手に廊下を進軍。
現在はダイニングで俺と2人でご飯を食べていた小牧に向かい山上が指を指して言葉を発したところだ。
「人に指を指すなと教わらなかったの?あと私が神野くんと一緒にいようが私の勝手でしょう?あなたに文句を言う筋合いはないわ。」
山上はそういい朝ごはんの紅鮭の塩焼きを咀嚼した。
俺もまあ座れよといい山上をダイニングと一体になっているリビングのソファーに座らせたあと自分もダイニングの椅子に腰を下ろし箸を持った。
「で?お前何しに来たん?」
俺は先程まで疑問に思っていたことを口にした。味噌汁を一口すすった後にもう一度山上を見た。
「休みの日だから遊びに来たんですよ!そしたらまだ朝早いのに家から小牧先輩の声が少し聞こえたから...うぅ...。」
時刻は朝の8時半だ。朝早いという表現が正しいのかどうかはわからないが、こいつは俺たちが今のところほとんど同居状態であることを知らない。前来た時も適当にはぐらかしたし、今も私より遅いけど帰ってると思っているのだろう。そう考えれば確かにこんな時間から来客というのが早いと表現するのは頷けるかもしれない。
「だからそこの意味がわからないと言っているのよ。別にあなたが個々に来るのはまあいいとして仮にそこに先に私がいたとしても何か問題があるの?それはあなたの私情でしょう?」
「こいつの私情って何だ?」
俺が純粋な疑問を口にする。
「せ、先輩は分からなくていいんです!!小牧先輩もやめて下さい!!あ〜!!」
何故か逆ギレをして山上はソファーのクッションで耳を塞いだ。
「まあ、それはいいが...」
俺はこれ以上踏み込んではいけない気がして踏み込まずに残りのご飯と鮭を口の中に放り込み、残りの味噌汁を飲み干した。
小牧も食べ終わったようで茶碗などを重ねていた。
「「ご馳走様でした。」」
2人で手を合わせ、俺は立ち上がる。
「あ、小牧、皿、洗っとくからいいぞ。」
俺小牧の茶碗、味噌汁の器に手を伸ばす。
「いいわよ。私がやるわよ。」
と小牧も手を伸ばしてきた。
互いの手が触れ合う。
「「あ、」」
そのまま手を触れ合ったまま数秒互いに静止した。
小牧もポッキーゲームでキスまで迫ってきたくせに手が触れただけで赤くなっている。
俺も少し赤くなった。
「「...」」
気まずく恥ずかしいがどちらからも離れられない状態がさらに続く。
「ちょっとー、2人して何してるんですかー?私のこと忘れてませんかー?」
その静寂を破ったのは先程までソファーで悶絶していた山上だった。ジト目でこちらを見ている。
「「!!」」
2人同時に手を離す。
「2人とも何してるんですか?そんな初々しいカップルみたいなことして?何ですか手ですか?そんなもの私がいくらでも繋いであげますよ?どうして先輩はそんな女子の手に触れたくらいで赤くなってるんですか?小牧先輩も...」
「あー!わかったわかった。もういい!」
俺は恥ずかしくなり小牧の皿を無理やり全てキッチンに運んだ。
「あ、ありがとう...」
ポッキーゲームをやってから小牧の様子がやけに変だと思っていたが、それはおそらく気のせいではないだろう。
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