第3話
「は?」
これが小牧の謎発言に対する俺が最大限に答えられる言葉だった。
何いってんだこいつ。校内ボランティア部?俺が入部?
「は?とは何かしら?」
「いや、そのままの意味だけど。意味がわからない。キャンノットアンダスタンド。おーけー?」
「急に何を言い出すのかしら、普段人に話しかけられないから興奮しているのはわかるのだけれど、もう少し落ち着いたら?」
「至って冷静だわ!」
俺は状況を理解するため、しばし考え込む。
今の発言からするに、おそらくここは校内ボランティア部たる場所で部員は小牧1人。俺を新入部員として向かい入れようとしているのだろうか?なのでここまで連れてきた。ということになる。
なんだ?俺をここに入れて何がしたい?金は対して持ってないし、特別顔立ちが整っているわけでもない。
あ、廃部の危機を救うためにちょろそうな俺を入れようとしているのか!だとすれば…
「悪いが小牧、俺は部活に入るつもりはないんだ。廃部になりたくないならもっと意欲のあるやつを選んだ方がいいぞ。」
俺ははっきりと言い放った。すると小牧はこめかみに指を当ててはぁ、とため息を吐いた。なんだそのこいつわかってねぇなみたいな顔は。
「どういう思考回路でその結論に至ったのかは知らないけれど、別にこの部は部員数が少なくて廃部になりそうなわけではないのだけれど。」
「あ、そう...。」
じゃあ何で俺をここにいれようとするんですかねぇ?もうわからない。
「で、何で俺をここに入れたいわけ?」
俺はいよいよ面倒になり、本人に聞いた。本人は一瞬の真顔の後、頰を赤らめた。
いや、なに?何で赤くなるの?
「それは、あまり大きな声では言えないのだけれど...」
「なんだ?」
「あなたのことが、好きだからよ」
「………?」
うん。ちょっと何いってんのかわからない。
俺は怪訝な視線を小牧に浴びせながら、首を傾げた。小牧が、俺のことを好き?
「その、こんなことを言わせておいてその視線はやめて欲しいのだけれど…」
「いや、ごめん。全くもって意味がわからないんだが?イタズラならやめてくれないか?あれやられるごとにちょっと傷つくんだよ…」
「イタズラではないわ。私は、あなたのことが…すき、なの。」
「な、なんで?」
あまりの可愛さに俺は小牧から目を背けた。恥ずかしい。
「まあ、昨日の件もそうだけれど、私が見ている限り、あなたはいつもほかの人を助けようとしているわ。校外でもそうだけれど、私知ってるのよ、校内でもゴミ拾い、教室の机の整頓。先生の荷物運び––––」
「わかったわかった。もういい。お前が俺のことをよく知ってるのはわかった。」
何でこいつ誰もいない時にしかやっていない俺の行動まで把握してやがるんだ。
「そんなあなたが好きよ。」
「!!」
俺は愛おしそうに胸の前で手を組みながらはっきりいった彼女の顔を見て再び目を背けた。
破壊力ありすぎる!
これはあかん!このまままっすぐ小牧を見つめていたら可愛くて抱き寄せてしまいそうだ。
「あなたをここに連れてきた理由にもそれが含まれるわ。常に周りに気を配って人を助ける精神。そんなあなたはこの部にぴったりだわ。」
「そ、そうか…」
俺は面と向かってそう言われてどこか嬉しさを感じた。
人に褒めらたことがあまりないので恥ずかしい、というのもあったが明らかに自分の善意の行動を誰かに知ってもらえる。ということがたしかに嬉しかったのだ。なるほど。なかなかいい気分だ。
と思っていた矢先、彼女は何やらカバンから書類と筆箱を取り出し、カリカリと何かを書き込み始めた。
「神野くん。印鑑は持ってるかしら?」
「ん?ああ、持ってるけど。」
「少し貸してくれる?」
「あ、ああ。」
俺は会話のノリでつい印鑑をカバンから取り出して渡してしまった。
「まて!お前俺の印鑑で何する気だ!」
「?」
小牧は首を傾げながら書類の押印部分に印鑑を押した。書類にはしっかりと神野の赤い文字が押されている。
書類を見る。
「今日からよろしくね、神野くん。」
その書類は入部届けであった。
強制入部。最悪だ…。
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