第15話
ガラガラっと再びそのドアは同じ依頼人によって開かれた。
2人でそちらの方向を向くと何やら青ざめた表情でこちらを見る山上がいた。
「お、おう山上。どうした? 」
俺は青ざめた表情の山上に対してあくまでも平常心を保って言った。
何かやばそうな予感がするが、それは向こうから話すことだろう。
「とりあえず座ったらどうかしら? 」
「は、はい。失礼します」
下を向いたまま小牧に促された椅子に座り、山上はようやくこちらを向いた。
「で? 何があった? 」
俺は少し心配になりながらもいかにも面倒な口調で言った。
いや、これであからさまに心配したらなんか俺がこいつのことすげぇ心配してるみたいじゃん? そういうの恥ずかしいからな!
「同じクラスの片桐くんに告白されました…」
「ほーん…」
ま、こいつ見た目は結構可愛いもんな。茶髪のボブカットになかなかしっかりとしている胸部。足も細くスタイルも抜群だ。
まあだからなんだよといってやりたいところだが、続きがあるのだろうと思い、黙り込んだ。
小牧も同意見なのだろう。おなじく黙り込んでじっと山上を見つめている。
「片桐くんは綾ちゃん––––綾ちゃんっていうのは私の友達で、その綾ちゃんの好きな人なんです」
あーこれどっかのアニメで見たわ。自分の好きな人が別の人に告白すると空気読めないって言っていじめるやつじゃん。
また重い相談持ってきやがって…。
小牧はなるほどと頷き口を開いた。
「それで? あなたはその片桐くんという人のこと、好きなのかしら? 」
「いえ、全く…」
「では断ればいいのではないの? 」
ごもっともな意見だが、リア充というのは理屈ではなく私情、周りの動きに従うことが多い。
つまりそういうことだ。
「小牧。これは理屈じゃないんだ。あれだろ? 告白されたっていう事実自体がもうその綾ちゃん? ていう奴には嫌なのにそれで更にその告白を断った日には…」
「そうです! そうなんですよ! 」
山上は理解者が増えたと言わんばかりに机を叩いて何度も頷いた。
いや、大丈夫? お前ヘドバンが趣味なの?
小牧はそれを聞くとこめかみに指を当ててしばらく考え込む姿勢を見せる。俺も流石に何か考えなければいけないと思い腕を組んで背もたれに体重を預ける。
「ま、まだ続きがあるんです。その片桐くんは外面はすごくいい人なんですけど、結構やばい噂をたまに聞くんです。だから…」
「綾ちゃんにも諦めさせたいって訳か? 」
「は、はい…」
なるほど。
だが噂だけで人のことを悪い人認定するのはどうかと思う。
実際俺なんかはそうだ。なんか知らないがたまに俺が全く見に覚えのない噂を聞いたりする。マジで誰だよその噂流したやつ…。
「更に条件が厳しくなったわね…」
小牧はダメだと言わんばかりにため息を吐いた。
俺はというとじっと山上を見つめこの方法が本当に通用するのかしばし考え込んだ…。
よし。いける。
「小牧。この件に関しては俺に任せてくれないか? 」
俺は一応部長である小牧の許可を得ない上には行動できない。
小牧は俺の顔を一度見つめてから首を縦に振った。
「わかったわ。ただし、何か私にもやることがあったらしっかりいいなさい」
「了解だ」
満を辞して俺は席から立ち上がった。
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