第14話
一週間後、特に他の依頼人もこない状態で小牧と2人でダラダラと遊んでいた金曜日。
再び教室のドアが他の人物によって開かれた。
ドアの先にいたのは山上で、なにやら興奮したようにスマホを両手で持っている。
「お、おう山上、どした? 」
俺は少し彼女への後ろめたさを感じて目をそらす。
どうしよう、全然効果ないじゃないですか!
とか言われたら。
「先輩! これすごいです! めちゃくちゃ効果絶大じゃないですか!! 」
「え? 」
俺は絶句した。ほ、本当に効果があったのか? 乙女ゲーが?
こいつの周りの友達の頭もおかしいだけじゃねえの?
「ま、マジで乙女ゲーで効果出たの? 」
「あなた、本気で効果出たと思っているの? 幻覚なのではないかしら? 」
「そっちが提案したのにその反応はどうかと思います! 」
山上がそう返した。いや、正直驚きしかない。
乙女ゲームというのは非モテの女子や現実の男に興味を持たない奴をターゲットとした幻想ゲームといってもいい(偏見)
それが現実の恋バナに効果があるなんて!俺、ギャルゲーやってるからリア充たちの恋バナについていけるんじゃね? まあそもそも話に入りたくないけど。
「そ、それは良かったな…」
俺は頰をかいてそういった。
「具体的になにが変わったのかしら? 」
小牧が興味があるかのように聞いた。まあそりゃ気になるよな。乙女ゲーが現実の話に役立つ瞬間なんて…
「そうですね、友達の好きな人の話をしてるときにこんなことされたらときめいちゃうよね! って話とか! 初キスはどういうシュチュエーションがいいかとか! 」
山上は目をキラキラと光らせながらいった。
ああ、これはあれだな、単純に友達と話が微妙に食い違ってるだけだ。
山上は乙女ゲーの中でのシュチュエーションを話しており他の友達は現実でのシュチュエーションについて話しているのだ。それが大まかな恋愛という観点に関しては合致しているのでうまい具合に話が噛み合っているようになっているだけだ。
まさに乙女違い。
…まあ思っていることは違えど依頼の内容自体は解消したからいいのかな?
「そりゃよかったな。ただアドバイスしておくと絶対に恋バナ中に乙女ゲーの中の話はしないほうがいいぞ」
「そんなのわかってますよ! 」
「ならいいんだが…」
俺がやや呆れながらも隣を見ると、小牧もこめかみに手を当てて頭痛がするかのように嘆息をしている。
すると小牧は俺にだけ聞こえるように耳打ちしてきた。
『あなた、ここまで計算してやったの? 』
おそらくそこまでとは山上が現実の恋ではなく画面の中の恋にはまってしまったことだろう。
『まさか…多少恋愛の経験の足しになるための足しになると思ったんだがまさかここまで効果を発揮するとは…』
『要するにただの偶然ということかしら? 』
『ああ、全くもって偶然だ。だって今のこいつ恋する乙女じゃなくてただのオタク女…』
「2人でコショコショ話しして何話してるんですか? 」
「い、いや何でもないぞ」
俺が慌てて小牧から離れると山上はむぅっと頰を膨らまし、こちらを交互に見た。
うん。そんな反応されても知らないよ?
「まあ兎に角依頼は解決だな。わざわざ成果まで言いに来てくれてありがとな」
「いえいえ、私もお世話になったのでご挨拶だけでももう一度しておこうと」
「いや、まあたいしたことはしてないけどまあどういたしまして」
「ほんとよね」
小牧が茶々を入れてくるのを無視して俺は立ち去る山上を笑顔で送り出した。
何愛想笑いしてんだよ俺は…。
だがその次の日。山上の問題が増えた…。
追記
作者の破魔由弦です。今回の物語は複数回乙女ゲームに対するど偏見の発言がありましたが、決して私自身が乙女ゲームをバカにしているわけではないのでご注意ください。
(なんか批判されるのが怖くて一応保険をかけに行く男。破魔由弦より。)
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