山上明日香の話
第10話
小牧と愛してるゲームをしてから10分後。はじめての依頼人である女子生徒と対面していた。
「え、えーととりあえず自己紹介からしてもらえるかな? 」
「流石ね神野くん。ようやく人とのコミュニケーションの最初は自己紹介からということを覚えたようでご主人様は嬉しいわ」
「小牧はいつ俺のご主人様になったんだよ!水を差さないでくれ、話が進まん…」
そういうと、小牧はふんっといって俺の腕に自分の腕を絡ませた。
「うぉい!な、何やってんだよ! 」
「おとなしくしてるだけなのだけれど? 」
どうやら黙ってる代わりにこのままでいろといいたいらしい。
俺は小牧に腕を取られたまま再び女子生徒に向き直った。
「えーと、お、お名前は? 」
「1-Aの山上明日香です。あの、2人は付き合ってるんですか? 」
唐突な質問に俺は
「付き合ってない」
「婚約したわ」
紛らわしい! お前校内でもトップクラスの美少女という自覚を持てよ! そりゃ1年も気になるだろうが!
「そのことはめんどくさいからいい。で? なんか相談事があってきたんだろ? 」
俺は話を本題に戻した。いちいち言い直すのもめんどくさいしな。
「あ、はい。その、私は今仲のいいグループの友達がいるんですけど…恋バナについていけないんです! 」
あー、
これ俺が一番苦手なやつだわ。
ちょっときついわ。初恋すらまだな俺にそんな相談されてもなぁ…
「なあ小牧。これ、俺にはきついんだが…」
「全く。役立たずね。私の椅子になった方がまだ役に立つわよ? 」
椅子って。そんなか?
「恋バナ、ね…。逆についていけないと何か問題でもあるのかしら? 」
「え? 」
小牧の発言に対して、山上は首を傾げた。本当にわかっていない様子だ。
たしかにそれは俺も思ってしまった。別に恋バナについていけなくなったって適当に頷いておけばいい。
話についていけないことがそんなにまずいことなのだろうか。
「問題って、話についていけなくなったら友達じゃなくなっちゃうじゃないですか! ずっと一人になっちゃいますよ!? そんなの生きてる価値有りません! 」
おっと、それは俺に対する侮辱か? 今俺の生き方全否定されたんだが。と思うと小牧も同じことを思ったのかこちらに顔を向けた。
「だそうよ、神野くん。今あなた生きることを否定されたけれど」
「うるさい」
「え? 先輩友達いないんですか!? 」
山上は机を叩き、勢いよく立ち上がって信じられないといった顔でこちらを見た。あーあ悪かったな友達いなくて。
一匹オオカミって言葉知らないのかよこいつは。
本当に強い奴は群れで行動しないんだぜ?
「まあ、いないな」
「よく生きていけますね」
「お前、よく先輩の前でそんなこと言えますね」
俺は口調を山上に真似てそれだけ言うと、黙り込んだ。今回の件は小牧に任せよう。俺は役に立たなそうだ。
「そうね、簡単な方法ではあるのだけれど、恋を知る、というのはどうかしら? 」
「恋を知る? どういうことですか? 」
「簡単に言うと自分が恋をできなくて恋バナについていけないのなら他の人でもいいからその人達の恋について知るのよ」
と言い小牧はニヤッと口を狐のように動かした。あ、これ絶対俺巻き込まれんじゃん。すごく嫌な予感がする。
俺は逃げることにした。
「あ、俺ちょっとトイレに」
ガタッと立ち上がったところ、俺の腕を小牧の細い腕に掴まれた。
「待ちなさい。どこに行くつもり? 仕事中よ? 」
「は、はい…」
失敗。逃げられなかった。
「それで、具体的にはどうすればいいんでしょう? 」
「そうね、具体的には私たちがいちゃついてるところを見てそれを詳しく理解すればいいと思うのだけれど」
ほら。絶対こうなると思ったもん。
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