1.シャルロット・デ・ドートリシュ
私の名はシャルロット・デ・ドートリシュ。
帝国序列四位に君臨する侯爵家、ドートリシュ家の一人娘である。
私には、“社交界の星”と呼ばれているほど容姿の整ったお母様と、帝国騎士団の団長を務めているお父様がいる。
どちらも私のことになると心配性である。
ドートリシュ家は、この国、“シルスマリア帝国”の建国に貢献した名誉な家だ。
そして、皇帝陛下のお気に入りがこの私、シャルロットだ。
皇帝陛下は私を“勝利の女神”と呼ぶ。
その理由は、帝国が戦争をしていた頃、六歳の私はお父様に連れていってもらった皇宮で、大人達相手に論争を交わしてしまったからだ。
だって、見てられなかったんだもの。
大陸の地理から考えれば、すぐ分かることなのに。
だから私は言った。
『敵国はこの国の西側じゃなくて、東側を狙って攻撃してくると思います』って。
そしたら、なんということでしょう。私の発言が的中してしまい見事、戦争に勝つことが出来た。
“勝利の女神”として国は私を称えてくれた。
そんな、勝利の女神である私にはもう一つ、呼び名がある。
“帝国の未来の月・シャルロット”だ。
そう、私は次期皇后になる予定の女。
つまり、皇太子殿下の婚約者だ。
だけど私は皇太子殿下の笑っているところを見たことがない。
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