20.アリシア・ド・ジャバウォック


 皆さんこんにちは。

 アリシアこと、アリシア・ド・ジャバウォックです。

 単刀直入に言いますが、私は転生者です。あれです、最近のラノベやマンガでよくある異世界転生ってやつです。

 目を覚ましたら異世界にいました。


「あーー!!が読みたいっっ!!!」

「如何いかがしましたか、アリシアお嬢様」

「あっ、なんでもないわ」


 皆さんお察ししていることでしょう。

 そうです、私、日本生まれの転生者なんです。三週間くらい前のある日、気づいたらこの世界にいました。えへ。

 少々自分語りをさせてくださる??


 私、日本にいた頃は、ただの冴えない高校生だったの。

 大企業の役員の父と外国人の母との間に生まれて、それはそれは恵まれていたわ。

 だけどね、恵まれていたのは経済的にだけ。

 だって私愛されていなかったもの。いや、多分少しは愛されてたかな。


 中学生の時、なにかの授業で先生は「もし、親に叩かれている子供がいたら通報しましょう」って言ったの。

 私はそれが腑に落ちなくて、「叩くのは教育の一環で、普通なんじゃないですか」って聞いてしまったの。

 そしたら教室が静まり返っちゃって。そこでやっと自分の家が普通じゃないことに気付いたわ。

 ほら、私やっぱりちょっと愛されて無いでしょ?うふふ。


 そんな私は物語を読むのが大好きだった。

 違う世界に行けるんだもの。

 おかげでこの世界に転生した時もすぐ対処できた。マナーも前世で厳しく教えて貰ってたから、誰もが私をアリシアだと信じて疑わない。

 パパ、ママ、今なら言えるよ。ありがとうって。


 はい、自分語り終わり。


 この世界に転生してすぐ、私は魔法が使えるようになった。

 異世界だから、魔法とかないかなと思って、マンガで読んだシーンを頭に思い浮かべながら「水よ、このコップを満たせ」って唱えたの。

 ……できちゃいました。

 私、本で読んだの。魔法使いは全滅したって。でもあれ嘘みたいね。

 私、使えちゃったよ、魔法。

 使えることを知った時は嬉しかったよ。物語のヒロインみたいでさ。

 だけど私は脳みそお花畑なヒロインじゃないからさ。

 魔法使いは滅びたとされているのに、何故、私には魔法が使えてしまったのか考えたわ。


 そんな時、ある小説を思い出した。

 その小説では、人々はみんな魔力を持っているけど、魔法を使える人と使えない人がいた。

 双方の違いは“魔法をイメージできるか”、“魔力を上手く引き出せる才能があるか”の2つだった。


 これを思い出した私は、信頼出来る侍女を2人呼んで実験を行った。

 1人には魔力を引き出すコツを教え、私が魔法でコップを水で満たす様子を見せ。

 もう1人には何もせずにただ水を出せって命令した。

 そしたら前者は魔法でコップを水で満たした。

 一方後者には何も起こらなかった。


 もう私は確信した。

 あぁ、この世界も世界なのね。


 私は決めた。

 この世界では“冴えない女子”は演じない。

 見てなさい、私の本気を。

 誰にも殴られたりなんかされない。私を認めさせるわ。


 だって、私だって、誰かに愛されたい。

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