2.皇太子の婚約者-①

―シャルロット14歳



 うららかな春の陽の光が照る今日、私の通う学校、ソレイユアカデミーではお茶会が開かれる。

 お茶会は定期的に開催され、上位貴族が交代制で主催することになっている。

 お茶会の飾り付けや使用する食器、ドレスコード等などは全て、主催する生徒がプロデュースしなくてはならない。


 そして今日は、私が主催するお茶会の日だ。


「お嬢様、今日はお嬢様が主催のお茶会ですね!」


 楽しそうに喋るのは、茶髪でポニーテールが似合う私の専属侍女、エリーだ。


「そうね」


 エリーは、私が心を許している数少ない人のうちの一人。


「お茶会のコンセプトは何にしたんでしたっけ?」

「“白鳥”よ」

「なぜ、そのコンセプトにしたのですか?」

「家の噴水にいた白鳥を思い出したの」


 全寮制であるこの学校に通っていると時々、自分の家が恋しくなる。というか、毎日恋しく思える。

 私の周りには私利私欲にまみれた人々が沢山集まってくるからだ。

 唯一友人と呼べる存在は、皇女であるローズマリー様とホワイトリリィ様だけ。


「あぁ、学校なんて辞めてしまいたいわ」


 つい本音が漏れてしまった。


「まぁまぁ、そう言わずに。ドートリシュ家のご令嬢が学校を辞めたりしたら大事おおごとになってしまいますよ」


 はぁ、と溜息をつく私にエリーは苦笑して話題を変えてくれた。


「さぁ、お嬢様!髪を結ゆうリボンは何色にいたしますかっ?」

「白鳥がイメージの、このドレスにあわせて白にするわ」

「お任せ下さい、お嬢様!」



        ***



「準備が終わりましたよ」

「ありがとう、エリー」

「では行きましょうか、お嬢様。」

「ええ、行きましょう。お茶会戦場へ!」


 そうして、私はお茶会の会場へと向かった。

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