第1話?
【デイズフロント-オンラインへようこそ!】
【このゲームをプレイする前に、注意事項をご確認くださいのら!】
マスコットキャラクターのチャッピーが、一度ゲーム機を外して周囲の環境を整えるように言ってくる。
初期設定に時間がかかることもあって、俺はいつもより数段整頓されていた部屋を出て、用を足しに行った。
プレイ時間は最低でも三時間を要するらしく、しかもゲーム内での体感は最長で約一年らしい。
そんなにも脳の感覚を狂わせて、絶対に安全なゲームではないと思うのだが、それでも俺はそのゲームをやりたくなってしまった。
ランプの色が変わらない……まだセットアップは終わらないようだ。
これまで仕事をしてこなかった俺でも働けそうな求人はないものか……
人と接するのは苦手だが、いつまでもこうしてはいられないだろうし。
親がいなくなった時、巫樹に世話になるということはありえない。
地域の案内が書かれた用紙。
パラパラと求人募集の項をめくっては読んでいた。
新しい喫茶店ができるから、ホールスタッフを募集……はさすがに合わないだろうな。
まだ厨房スタッフなら大丈夫か?
古本屋のバイトも雇っているみたいだ。
そうだな、とりあえずアルバイトから始めるのも悪くない。
社員登用制度もあるみたいだし、働きやすかったら続けられるかもしれないな。
そうこうしている内に、準備ができたようだ。
パラメーターはオススメでいいだろう。
あとは容姿だが……そうだな、折角だから子供に戻ってみるのもアリだろう。
どこかで見たような、金髪の坊ちゃんが出来上がり、最新のAI技術は不自然でないように自動的に細かな部分を調整してくれた。
名前はそうだなぁ……
『スノウ……ねぇスノウってば!』
ふと聞き覚えのある声が小さく聞こえてきた気がする。
一体誰を呼んでいるのだろうか?
「うん、スノウね……まぁいいんじゃない?」
目的は世界中で起きている大規模な戦争を止めること。
太鼓の時代より、神々は地上の者に神の力を分け与えて戦わせより強い遺伝子を作ろうとしていた。
そんな戦いを終わらせるのが主人公の役目だそうだ。
「へぇー……それって、なんだっけ?
聞いたことがあるんだけどなぁ……」
大きな門が思い浮かぶのだが、どこかのゲームのパクリかなにかだろうか?
魔法のせいで争いが絶えず、異界との繋がりを断ち切って魔法時代の終わりを迎える話。
最近バタバタしながら、そんな物語を聞いた覚えがあったのだ。
僕はゲームの世界に降り立って、早速ステータスやスキルの確認をする。
レベルは当然1だが、妙に素早さが高い。
スキルも全然覚えていなくて、とりあえずは安全な場所でなくてはログアウトはできないみたいだ。
【モンスター:アーリビルケドゥとエンカウントしました】
するとさっそく現れる狼みたいなモンスター。
すごくリアルで、本物がそこにいるかのようだ。
ゲームとリアルの境界を作るためにか、現実に戻る際にはモンスターに関する情報はかなりデフォルメされてしまうらしい。
安全には配慮しつつも、絶対にリアルにこだわるのだ、という製作者の信念みたいなものを感じてしまう。
そりゃあ現実で犬猫を見かけて斬りかかってしまう人が出てもおかしくないものな。
しかし俺……じゃなかった、僕もこんなゲームを作る会社で働いてみたいとさえ思うほどである。
初期装備の短剣で、アーリビルケドゥの脇腹にダメージを与えると、意外にもアッサリと倒せてしまった。
最初の平野だからというのもあるだろうが、意外と簡単なようだ。
スキルもすぐに習得していったからな。
「おーい、そんなところで子供が一人でいちゃ危険だぞ!」
たまたま通りかかった行商人に声をかけられて、僕は街まで乗せていってもらうことにした。
それにしても最新AI技術はすごい。
本物の人間と喋っているとしか思えなかった。
街の名前はアルファールドというそうだが、僕は似たような車の名前を想像してしまっていた。
街に行けばイベントも多いだろう。
装備を充実させて、強いモンスターを倒し、俺つえーができるっぽい。
行商人の人と喋りながら、僕は新しい世界の冒険に心躍らせていたのだった。
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