頑張って調べたチャッピー

「それじゃあ、早速呼ぶわよ……」


 このゲーム世界ではボスがいる。

 それは単なる強者であったり、エリアを独占する者であったり、はたまたひょんなことで住処からハグレた者であったりと。


 その中でも、NPCの中で言い伝えられているラスボスの伝説があった。

 それは、地上に魔の力を放ったという悪魔の存在である。

 悪魔の力は神によって封印された。

 しかし、封印されてなお、世界にその力の一部は溢れ出てしまっていたのだ。


 魔法はその力を利用したものだと言い伝えられてきた。

「へぇー、でもなんでそれがラスボスなの?」

 少女……じゃなくてスノウは少年……でもなかった、たしか初めて見たときの姿は小太りのおっさんのはず。

 そんな可愛らしく尋ねてきても、私は騙されない。騙されないぞ……


 ともかく……

「なーんて話はいいのよ、どうでも……」

 要は、その悪魔の封印を解いて、倒してしまおうっていうストーリーなのだ。

 一応設定では、魔の力が地上に溢れるせいで、人々の姿は時代と共に変化をしたということになっている。


 そんなストーリーうんぬんではなく、封印の解き方を知りたいのに、どこぞの村人は『種族の違いで子供ができないんだ』とか、貴族が獣人の子供を引っ叩いて周囲は見て見ぬ振りとか。

 イベントとはいえ、それ自体に興味がないものだから、主要人物を痛めつけて目的の情報だけを聞き出したりしていた。


 人間と言われても不思議でないほどのAIだからこそ、そんな無茶苦茶な攻略方法でも次へ進めるのだろうけれど。

 おかげで私はこの世界の凶悪犯だ。


「ねぇ、もう少し街から離れたところでやろうよ……」

「っとに面倒臭いわね!

 街のことなんてどうでもいいじゃないの!」


 スノウは街に被害が出ることを恐れている。

 そんなもの、私たちがゲームの外に出てしまえば意味の無いことなのに。

 アイズだのアランだの親父さんだのと……

 そんな生優しいことを言っていてゲームがクリアできるもんか。


 私は絶対にラスボスを倒して生き延びてやる。

 生きて、そして、こんな馬鹿げた騒ぎに巻き込んでしまった茜に許してもらうんだ。

 そのためだったら、この世界の者が何人不幸になろうが知ったことではない。

 AIだって感情がある?

 ふざけるな、そんなくだらないものを作り出したのは人間じゃないか。

 作らなければ生まれなかった不幸で、私たちの感情を弄ぶんじゃない!


 イライラが収まらなかった。

 製作者のやり方やゲームのイベント、そしてスノウの言葉にいちいち反応して胸が苦しくなる。

 私はそんな中、受け取った素材やアイテムを用いて魔法陣を地面に描いたのだった……

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