モニターを見る男たち

「検索されることに対する対策はちゃんとできているんだろうな?」

「そんなぁ、何度もチェックしたじゃないっスか。

 どれだけ調べてもワードが少し間違えていても投稿はできないですから」

 ゲーム名はネットで調べても『4月発売予定』としか出てこない。

 当然だ、そうなるように仕組んであるのだから。


 フルダイブ型のゲーム機器が発表され、当初からその危険性は注目を集めていた。

 だが、安全に配慮しつつ制作が進められる裏側で、政府によって別の計画が立てられていたことを知る者は少ない。

 なにせ、試験的に数名の対象者でテストプレイを行なって、今回は初の全国一斉テストなのだ。


「しかし本当に面白そうなゲームですよねぇ」

「あのなぁ、やりたいのなら家に帰ってからにしてくれ。

 ただでさえ狭い部屋なんだから、こんなところで寝そべられたらたまったもんじゃない」


 白い衣装の男二人は、モニターを眺めながら喋っている。

 そこにノックして扉を開ける者が一人。

 アニメ声で『失礼しまーす』なんて言いながら入ってくるのは、小柄な茶髪の少女だ。

「お先に失礼しまーす」

「あぁ、お疲れ様。

 また明日も頼むよ、チャッピー」


 仕事の内容は、案内役としてプレイヤーと会話をすること。

 そのために色々な知識を詰め込まれた五十人の内の一人である。

 勤務時間はたったの一時間。

 しかし、あくまでも現実世界での一時間だ。


 正直、これで10万円しかもらえないのは酷ではないかと思ってしまう。

 楽しんでやっていない限り、続くようなものではないだろうに……


 男はモニターを見て険しい表情をしている。

 このゲームがうまくいくかどうか、心配で仕方がないのだった。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る