【チャッピー?】

 デイズフロント-オンライン。


 現実の一時間が、この世界では数ヶ月にも引き延ばされるという幻と言われたゲーム機である。

 当然、ログインの時間が数分違うだけで、ゲーム世界の時間は大きく変わってくる。

 しかも噂では並行世界がいくつも存在し、プレイヤー同士がゲーム内で出会うことは滅多に無いそうだ。


 そんなゲームが世に広く知られていないのは、これが生活スタイル改善の為にごく一部の者に送られていたものだからだった。

 人生の変わるきっかけとして、主に父親へアンケートという名目で情報を集め、その中から慎重に選ばれた者だけだ所有していたゲーム機。


 プレイヤー人数は数千人とも言われていて、ゲーム後にはどのプレイヤーも性格に多少の変化が見られたらしい。

 ただ、善し悪しの問題ではなく、人格そのものを変えるということが道徳に反するという声もあり、結局は二回目の被験者達の終了をもって運営は放棄されたらしい。


 だが、そのサーバーの中にはまだ一人の少女の意識が残されているそうだ。

 現実の彼女は、どこか生気を失ったような虚ろな表情を見せることもあり、それでも以前と変わらぬ生活を続けていることは知られている。


 もしかしたら、そんなものはただの都市伝説かもしれない。

 ゲーム内から意識を切り離した際、その一部が中に取り残されるなんてことは考えにくいだろう。

 というか理屈がわからなくなってしまう。


 なぜそんな噂があるのかというと、実はこのゲーム機、今でもプレイ可能であると知られているからなのだ。

 運営されていないゲーム世界がなぜ残っているのか。

 もしかしたらゲーム内にはまだ誰かがいるのではないか。


 今では手に入らないゲーム機ゆえに、そんな噂話がネット上でどんどん広まっていった。


 嘘か真か、とあるプレイヤーはモンスターに悪意を感じたと言った。

 そりゃあモンスターなのだから、冒険者を襲うようプログラムされているだろう。

 だが、そうではなく明確な嫌がらせとも思える行動をとるモンスターが存在するのだと言う。

 装備破壊や状態異常による拘束、果てにはNPCだけを執拗に狙い続ける行動。


 一瞬、『他のプレイヤーなのでは?』とさえ思えるほどだと。

 結局そんな馬鹿馬鹿しい話があるものか、という風に終わったのだけど、意外にも多くのプレイヤーが経験したことがあるらしく、そのモンスターの種類は様々であった。


「デイズフロント-オンラインへようこそ!

 案内役のチャッピーだよ、今から君のキャラクターを作成するから、お手伝いさせてもらうねっ」

 そしてまた、今日もこのゲームを起動する者がいるのだった……

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35歳ニートがテストプレイヤーに選ばれたのだが、応募した覚えは全く無い。 紅柄ねこ @bengara-neko

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