チャッピー……最終話
「ラスボスったって、大したことなかったわね。
結局最後は自滅だったし、私たちには全然向かってこなかったじゃないの」
「そ、そんなこと言っちゃ可哀想だよぉ……」
街の女がスノウを抱えて泣いている。
私にはそんなことはどうでも良かったのだ。
目的は一つ、ラスボスを倒して現実に戻ることなのだから。
それにしても運が悪い男だったと思う。
うっすらと見てはいたが、スノウはこの女に恋をしてしまったのだろう。
そんなだからクリア直前に死んでしまうことになったのだ……
「ね、ねぇ……どこか別のところに行こうよ……」
茜はこの雰囲気に耐え切れない様子だった。
そりゃあ周囲は血の海、四肢は散らばり泣き続ける女もいる。
「そうねっ、もうこんな街には用は無いわ。
早く現実に戻らなきゃね」
ラスボスは消滅したが、まだ私たちの姿が消える様子はない。
まだ何かしなくてはいけないのだろう。
「茜っ、この後はどうすれば良いの?」
「えっとぉ……確か天より舞い降りし識者は、始まりの地にて再び天へと舞い戻る。
……だったはず」
やっぱり茜は私と違って頭もいいし記憶力もある。
興味の無いことになんていちいち頭を使いたくはないし、茜がいてくれて助かった。
「じゃあ、私たちが来たところに戻ればいいのね!」
遂に現実に帰る事ができる。
そう思うと目の前の女性のことなど、視界の端にも入らない。
モンスターも消え人々が集まる中、私たちは笑みを浮かべてその人の波をかき分ける。
なんだあの少女たちは……
きっとそんなことを言っていたと思う。
早く現実に帰りたい私たちには、そんなことはどうでもいいのだ。
それにしてもスノウがリスポーンする気配は無い。
やはり死んでしまったらそこまでという話は本当だったようだ。
馬鹿な男だ、死ななければ現実に戻れたのだ。
どのみちこの世界のことなど、無かったことになってしまうのだから……
街を出て、私と茜は平野を目指した。
茜は最後まで街の様子を心配していたが、私には何を言われてもゲームとしか思えない。
愛する人が死んだ?
それは私たちに何を思って欲しいのだ?
現実ではもっともっと理不尽で、個々の想いだけでは何をしようと不利益を被る世の中だ。
現実は面白くはない。
だけれど、それでゲーム世界に閉じ込められるのはもっと面白くない。
平野には既に帰還用の魔法陣が出現していた。
ここに入れば、もうこのゲーム世界とはおさらばだ。
茜が先に入り、私はしばらく様子を見る。
こんな時でも疑心感が拭えないのだ。
「大丈夫……みたいね」
魔法陣が消えることはなく、特に変化もない。
ボスがいて、茜が死んだら戻ってくるのでは……
少なくともそんな懸念は薄れたものだから、私は意を決して魔法陣へと足を踏み入れたのだった……
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