9.一石二鳥。
ティタ達の住居や街に拡張に使う木材を、王の門から灰の山の横を覆う森を伐採し、そこを道にして北の地にある海の村に繋げようという話があった。
もともと食に対するこだわりはそれぞれあり、北の村でとれる海産物やそれらを加工したものは、道を作り交易するには十分な条件だった。
ただ、森を伐採し道を作るとなるとなかなか「人手」がたりず、かといって巨大な魔法で燃やす(ステイシアが言った)のもあれなので、計画は保留となっていた。
計画を主に立案していたビアンを中心に、ミカゲ、ルマリア、ティタ、ステイシア、ヴィート、ガッハとある程度の面子が顔を合わせる。
森を大幅に伐採となると領地的な事もあるので、ルワースも来ている。
「ティタと団長を中心に、森の伐採をしていきましょう。ある程度測量は済ませているんですが、もう一度精密にして、出来るだけ整備しやすいルートを割り出します。」
ビアンが大まかな地図を出し、線を引く。
「使用する伐採道具とかは俺とティタで作ろう。数日貰えればある程度は揃えられると思う。」
ミカゲがティタを指さして言う。
先日工房で槌を握らせてみた処スジもよく、ルマリア同様弟子入りすることとなった。
ティタの副官と、ビアンで新しい居住区は大まか任せ、ティタの部下数人とミカゲが主に道を伐採していく。
道路の整地などはビアンが考案した「重機」がすでにルワースの領地で活躍しており、それらを借りることとなった。
元々魔の森の延長上で、魔物もいくらか間引きしているものの、伐採と出没する魔物の討伐が重なるかもしれない。
「範囲を絞って魔物を狩るか。あの森の辺りは草地と比較的平地だから、魔牛や魔素で強化された馬もおおい。」
魔牛は依然使用した産物としてその乳もこの村では普通に食卓に並ぶ。
確かに魔物なので、凶暴な所もあるが、ある程度弱らせ、使役魔法などで飼育することも可能で、肉や乳、角など利用できるところが多い。
現に村にも数頭飼われており、この前ミカゲの出したバターも、村の魔牛産だ。
交配させ数を増やせばそれだけ恩恵も増す。
魔素で強化された馬も、ティタや半妖のガタイの良い者や、大きな馬車等引くのにも役に立つ。
ミカゲは倒して刺身で食べたことが有るといっていたが、それも美味だそうだ。
ミカゲは好奇心で様々な事をする。
自分に使いやすい武器が欲しくて自ら武器を打ち、食べてみたいものを食べ、したいことをする。だが、団長としての実力も人望もあり、なんとも興味の尽きない漢である。
ルマリアがミカゲの傍にしきりにいるのもそういう魅力からかもしれない。
彼女達の生い立ちや素性は自警団のある程度の者には情報を共有している。
その辺の加味もふくめ、ミカゲの弟子入り状態で姉弟共々随伴している次第だ。
「領土の交易拡大なら、別に何も言わないだろうし言わせないから、ある程度は入れるようになったら「重機」も手配しよう。団長たちは好きに伐採しまくってくださいw」
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湖の村の北側。魔の森が灰の山を覆い。それは山の円周をぐるっと覆っている。
樹海の様なトコもあるが、比較的木々は少なく、北の村や大地に行く道の様な物はなくはなかった。
距離にすればそれでもかなりあり、慣れない物なら数日は要する。
道が出来れば馬で行けば一日二日といった処か。
今回は森に入ってすぐの場所を伐採して拠点を作り、魔物を討伐、捕獲。
ある程度の安全が確認されればまた拠点を作り、そこでと繰り返して森を開拓していくようにした。
これもビアンの案で、色々な不測な事態にならないよう、作業を進めやすく、又何かあった時にも停めやすくするためと、移動や作業の進捗を刻みやすくする為らしい。
確かに作業を進めていけばベースとなる処が何か所か出来るので、移動や休憩などもしやすくなるだろう。
それに、道の端には魔物も嫌う木を微妙な等間隔で植え、道も行きやすく、また横切りやすくもする。
植樹に関してはアルテが詳しく、そう言った種を持ち多く栽培している。
先のゴブリン達も警邏する道を上ってこなかったのも、そう言う草や木が道の横に生え、本能的に警戒していたのかもしれない。
ミカゲとティタは早速工房で斧や鉈、鋸等の伐採道具を作ることにした。
ある程度ミカゲが前回の計画時作っているので、ティタの技術を底上げするためにも、主にティタにやらせてみることにした。
鉱石や作っる為の部材などはミカゲが確保しており、今回打つのもミカゲの刀などの鋼である「玉鋼」を斧や鋸につかうらしい。
硬度のある鋼と比較的柔らかい鋼を織り交ぜている鋼で、鍛え方次第ではかなりの切れ味になる。
普通の鋼でもよいのだが、魔素を含んだ木々は所々強く、斬れ味の良い刃の方が通りやすいそうだ。
ティタなどは魔力を帯びた魔眼持ちらしく、夜目もきき、特に日中でも鋼の焼け具合、日の入り具合などある程度は見れるようだが、ミカゲは一応人なので、彼がしやすい夜中に打つこととなった。
余計な光が入らない分火の入り具合などが判り、打ちやすいからだ。
夕方に寝て夜中に起きて、工房の炉に火が入る。
綺麗に揃えられ、色合いの良い炎が木炭に付き綺麗な揺らめきを立てている。
そこそこ長い柄に細長い長方形の板がついたようなものを使い、その長方形の処に鋼を重ねて乗せていく。
わざと隙間を開け、不純物などが出やすくするらしい。藁や灰の泥や粘土などである程度固め、薄い紙を物を被せる。
炉に入れると紙が燃え、鋼に火があたり始め、温度を上げて癒着していく。
「これは、魔力炉というやつか?」
「そうだ。「智の勇者」が装備の精度や硬度を増したくて、鍛造や鋳造とかに安定した火力を出せるようにいろいろ術式を組み込んでるそうだ。
とかく、知らないことはないくらい知識の塊で、村の設備や馬車、武器等の加工云々は「智の勇者」の知識で向上したことは済んでればもうわかってるだろ?
食事の改善もそうだ。やはり人は「衣食住」の環境を整えることがいの一番らしい。」
「いしょくじゅう?」
「ああ、「衣」は衣服、きるものとかだな。下着とかも昔は履かずに不衛生だったが、こまめに洗い、履き替えることで病気や衛生的にもよくなった。
「食」はたべものだ。偏らずいろんなものをとりいれることで体の強化や体調がちょうせいできる。
旨いものを食べることは心もみたせるしなw
「住」はすまいだ。寝るとこや生活する場所があれば、それだけでゆっくり飲めるしすぐねれるしな。」
ミカゲはそういって、
「食って飲んでと、俺は「食」重視だな」
と高らかに笑っていた。
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