第一章第二章 幕間

幕間 それぞれの明け方

 いつの間に寝てしまったのだろうか。


 ミカゲ殿が勝ち、ヴィートや他の参戦した者がミカゲ殿を囲み、陣形等の話しに盛り上がり、落ち着いた後ヴィートがティタに「反省会だ!」といって酒瓶を片手に飲み始めていたのは覚えている。

 私もミカゲ殿と酒がすすみ、いい加減酔っぱらった感は捨てがたい。


 何か失礼なことをしていなければいいのだが。


 地べたに寝ていたわけではないようだ。

 やや暖かい、柔らかい下地に薄い布を敷いた寝床。

 牧羊の羊をつかい、通気性良く乾燥した層と藁もその下の層に敷き、深く沈みこまず、しかも快適に寝れるようにしてある。

 朝冷え込むのを防ぐため、毛布も掛けられていた。

 少し上体を起こそうと手に力を入れる。

 横を向いていたらしく左腕は少し痺れている。

 肩が暖かく、毛布とは別の物が・・・手がある…私の左肩はその手で優しくつかまれ抱かれている・・・・。


 ????


 右手で起きようとするとそこには固い岩の様な感触・・・・

 視覚で確認する。


 ミカゲの胸板だ。


 どうやら私はミカゲの右手の脇の間で寝ていたようだ。

 も、もしや腕枕されたのか???

 思考を全開にフル回転させ、自分の体の感覚を研ぎ澄ます。


 鎧・・・・ない。


 ・・・・いつも着ている鎧がない。


 道理でキツく苦しい感覚がなく、開放感があるとは思ったが、そうではない。

 胸に布を巻き、女性らしさを封じていた役を担う布と、その大半を占めるを着ていない。


 鎧の下に着る上着は着ている。


 しかし胸に巻いた布も、下にはいていたズボンも・・・・ない。

 直にミカゲ殿の足の感触が自分の素足の肌から感じられる。


 !!!!!!!あ、下着は着ていた。


 ミカゲ殿となら、それはそれでと思いながらも、寝ている間にはされていなかったのだなと、安心もし、なぜかため息が出た。

 どうやら寝床が何個もある、寝所の様だ。

 彼女自体自警団の仮眠所に来た事など無く、今その場所にいるという事も良くわかっていない。

 何人か寝ているのだろう、気配はある。


 聞き耳を立てたわけではないが、ベットのきしむような音と小声で何か話すか細い女の声、荒い吐息を吐いている男の子の声も聞こえる。

「だめっ」、「いやっ」と嫌がっているような・・・そんな声だ。


 -襲われているのか??-


 ルマリアの正義心が灯り、身を起こそうとする、が、肩を抱きしめていた手が力強く、その動きを抑え込まれた。

 余計密着するルマリアの肢体とミカゲ。

 ミカゲの手がルマリアの唇に少し当たる。

 ミカゲも気づいているようだ。ルマリアはアイコンタクトでミカゲに問うが、

 首を少し横に振る。口元には笑みを少し浮かべている。

 言葉を発しようとしていたルマリアの口にまた指をあててきた。

 襲われているわけではないのだな・・・それなら。

 

 ではあるが、落ち着いたもののすぐさま自分の今の状況に頭が迷走しだす。

 下は下着のまま素足を絡ませて、服は着ているものの胸を抑える布はなく・・・

 これではまるで聞こえてきた声同様、前後そのものではないか・・・


 みるみる顔が赤くなるルマリア。


 色々考えている間にも近くで声を殺しながらもそういうの声が耳に入ってくる。

 兎も角、なぜこういう状況になったのか後で聞くか・・・。


 今考えても仕方がない。


 万が一ミカゲが「獣」になったとしても、彼女にとっては「多少」嫌ではあるが、それは男と女の行為や行動の順序だけであって、好意がないわけではなかった。

 むしろ痴女ステイシアのように振る舞いもであったなら、そうなってたであろうなと思い、少し、に、抱き着く様にしてまた眼を閉じた。

 

 ********************


 ひとしきり、イートのなかで暴れたフィートは、が終わると、そのまま後ろから抱き着いたまま寝息を立て始めた。


 イートとしては、酔って寝てしまったフィートを、近場の自警団の寝所に運びに来ただけであった。

 たまたまミカゲの肩を枕に寝てしまったルマリアも、地べたに寝かせるわけにも、又起きるまで団長の肩枕で寝かせるのもということで、一緒に連れて来ていた。

 ミカゲがルマリアをお姫様抱っこのようにしているが、ルマリアはミカゲの肩に手を回し、子供を腕で抱いたような形になっていた。

 起こして連れて行こうとするイートの声でルマリアは目を開けたものの、歩けた状態では無い程酔っていて、ミカゲが抱きかかえると今の状態というわけだ。

 戦車に降ろそうとしたルマリアも、離れたくなかったのか、手を伸ばしていたので結構甘えん坊なのかなとイートは思ったが、口には出さなかった。

 寝所には、スチュアートがおり、その周りに子供達が一緒に寝ていた。

 絵本が数冊散らばっており、寝るまでに読み聞かせしていたのだろう。

 その横のベットではパーチ。

 酔いつぶれて着の身着のまま寝ている者や、ちゃんと棚に装備を置いて寝ている者もいる。

 フィートを空いているベッドに放り投げる。


 そのまま大の字で起きる様子もない。


 とりあえずそのままにミカゲの元に行く。

 ルマリアが張り付いていて、ミカゲが寝かせようにも抱き着いた手を放そうとしない。

 イートは着ている装備も重そうだし、なのはわかっていたので、団長にそのまま抱き着かせたまま、足の装備から器用に外し始めた。

 胸甲も横のベルトでワザワザきつくしていたのだが、スルリとはずす。

「ルマリアさん、横になるので装備外しますからね」

 イートがルマリアの耳元で優しく声を掛ける。

 イートの言葉と手にぴくりと反応するもまだ微睡まどろみの中だ。

 外した胸甲を棚に置き、鎧の下に着ていた上着に手を突っ込む。

 するりと目的の布の端を見つけるとこれまた見事にするすると服から出し始めた。


「きつく縛りすぎですよ、ルマリアさん・・・」


 思ったより胸のふくらみがあり、小振り同盟ないものどうしと思ったイートはさすがに呟いた。

 だが、すぐさまイートのいたずら心に火が灯り、ズボンも外し始める。

 体ふき用の布を少し濡らし固く絞ったものを持ってきてルマリアの体をふいていく。

 やっぱり大きい。

 体をふいて足をふいて、これで寝る準備は整った。

「だんちょ、はがせそうにないので、起きるまで肩枕しててあげてくださいw」

 ベットに座らせたミカゲとルマリアにそう言うと、ミカゲの装備も外し始める。

「おいおい・・・・。」

「だって仕方ないでしょう?駄々っ子なんであきらめてくださいwww」

 イートは半ば楽しそうにミカゲを寝れる程度にすると、そのまま二人を押し倒した。

 ルマリアもはじめはミカゲの右の胸の辺りにいたのだが、彼女自身の角が右の額側に寄って生えているので、気になるのか無意識にミカゲの左脇に。

 ミカゲを放すことなくそのまま足を絡め寝息を立て始めた。

「おやすみなさいw」

 イートは軽く手を振り大の字フィートの元に。

 先ほどと変わらず大の字のままだ。

 毛布を掛け、「(酒以外)何か飲む?」と聴くと「酒」と言ってきたのでとりあえず無視。

 装備主にエプロンを外して軽く体を拭く。

 通路側にフィートを寄せて壁側に入り込む。


 やっと寝れる。


 ゆっくり寝ようと思ったのだが、甘かった。

 追跡帰り、酔ってスイッチが入ったフィートであるが、彼は酔うと、とてもとても性格なようである。

 この前もイートに何度もお願いしたものの、汗もかいているし何より外ではと完璧に拒絶おことわりされ、悶々としていたのだ。

 騒動もあり、別の意味でもした。

 うまい酒も浴びるほどのみ、気持ちもよくなった。

 これは、この機会は逃せない!!!

 フィートはイートに抱き着いて体重を預ける。

 ちょっと驚いたイートがフィートを見る。


 あ、スイッチはいってる。


 完全にそういう行為は無いとはイートも思ってはいなかったものの、今日はさすがにとイート自身思っていた。

 半ば自分の詰めの甘さあさはかさに反省しながらも、フィートの攻勢はつじょうに上手に抵抗するこたえてあげることにした。


 

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