20.第一章 終幕

 「王の門」から入ってすぐに、お偉方の休憩所にも利用できる「応接室」の様な物が完備されている建物がある。

 ドワーフという鍛冶や細工、建築に長けた種族が居り、その者達と作った立派な建物だ。

 様々な組合ギルドの受付などもスペースを貸しており、その手の人で賑わいを見せるところでもあった。

 そういった場所の何階か上の応接室の一部屋を、アルテとルワース。

 そして二人の正装をした女性が利用していた。

 アルテはいつもの格好だが、ルワースは貴族の晩餐や王族との会合でも使うような立派な服をきっちりと着こなし、正装している二人はそれぞれ国の指定するいわゆるお役所の「制服」というものだ。

 それぞれ左肩に帝国と王国の肩章が付いている。

 二人の記録官はどちらともまだ若く、少し耳も長く、尖っている。

「では、帝国側の貴族カラーデル男爵は、連れていた魔獣によって死亡。

 その部下達も「湖の村」の自警団と魔獣の手にという事ですね。」

 帝国側の記録官が記録し、記入したことを声に出して言う。

「うむ、間違いはない。」

 ルワースが頷く。

「では王国こちら側もそのように。帝国側にも賠償や要求は一切しないと。」

「ああ、そのつもりだ。今回の騒動はカラーデル男爵のみの私利私欲な所も大きく、それによって動かされた帝国側の兵士の方々には申し訳なかったが、魔獣を倒すだけで力及ばず救えなかった事を改めて謝罪したい。」

 立ち上がるルワース。

 頭を下げようとするルワースを帝国側の記録官が停める。

「い、いえ、その様なことはなさらずとも!逆に私共記録官に迄配慮していただき、村の安全な所で守っていただき感謝しております。

 後ほど見分もしましたが、たしかに魔獣の檻や兵士達のもありました。」

 ルワースはその言葉を聴きながら、ヴィートがティタ達の鎧を投げ、モルゲンステルンをバット替わりよろしく振っていたことを思い出していた。

 ・・・あれは俺もしたかった・・・ぷっ。

「ルワースさま?体調があまりよろしく・・・??」

「ん?ああ、すまない、村に襲撃に来たゴブリンとのこともあり、ちょっと疲れているようだ。」

 うまくかわすルワース。

「記録官の方も方々忙しく、こういった細々とした争いにも借出され、大変かと思います。中には劣悪な環境下で職務を行ったりと聴き、心中お察し致します。」

 アルテがルワースに助け舟を出すかのように二人に声を掛ける。

 思うところがあったのか、二人も少し涙目だ。

「・・・ううっ、そなんですよ、アルテエッタ様・・・前の小競り合いの時なんか私は不正な事実を記録するように無体な事をされかけました・・・」

 帝国側も王国側の子も森の住人のようで、旅するエルフのアルテの名を良く知っていたようだ。

 記録官としてかなりの倍率を勝ち抜けて、二人は来ていたらしく、何としてもお近づきになりたかったらしい。

 アルテにはわるいが、ここは円滑に話を奨める上手く抱き込む為にもと今回の陳述に同行してもらったのだ。


 記録官は国公認の記録の保持、管理を行う者達である。

 罪人を罰したりした記録なども警察の様な自治体もあり、そう言った資料にも目を通す。

 中には脅迫まがいな、をしてその記録をねじ曲げる輩もいるのだ。

「私の話も聞いてください!前回の争いのときなど片方の貴族のご子息が何度私の体を求めて来たか・・・最後には薬まで使って・・」

 二人のかわいい記録官こどもをあやすアルテは仕方なく話を聴き二人を愛子あやしていた。


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