19.結末

 ミカゲが自警団の面子といた頃、『王の門』側から出ていく冒険者達パーティがいた。

 獣の皮の様な物で盾を補強し、使い込んだ杖は自分で補修したところも多々ある・・・そう、昼間から酒を飲み、店の子にちょっかいを出していた面子だ。

 彼らも冒険者の登録や依頼クエストをして、旅をする組合ギルドが存在する。

 そこで自分の実力に合わせて仕事クエストをこなすのだ。

「お、今日出ていくのか?お前らの事だからタダ酒もっと渇喰かっくらうと思ったんだがw」

 何度か出入りしている内に仲の良くなった自警団の一人が声を掛ける。

「ある程度、用事クエストも済ませたんで、早く戻って来いと『依頼主』から催促されちまって・・・」

「そうか、街道はかなり整備されて来てるが、この前集団も出てたらしいから、気をつけてな」

 手に今回振る舞われた肉や村で作られた食べ物をしっかり抱えて、門番たちにも笑顔で答え、彼らは通り過ぎていく。


 王の門は他の門よりも王都の街道沿いに合わせて作られているため、他の門よりも大きく、そして門構えも趣向に富んでいた。

 鉄の塊で出来ている大きな門だが、その門は内側から開けられ、片面の扉には、その装飾に湖の中から綺麗な女神が現れている描写。

 もう片面はその女神に膝まづく騎士の姿が彫られている。

 大きく変えられた門は馬車や貨物の屋根の高い幌付きでも余裕で通れる。

 旅商人や貨物を取り扱う業者には、物凄くありがたい設計だ。

 もう一つ、人の高さで通る小さな門もあり通用口か?多くの自警団や村の人は使い慣れたそちらのほうを使う。

 土産を持った冒険者たちは門を出て、その横合いでヤキニクをしている、自警団の面子とも何人か知り合いがいて、声を掛けながら通り過ぎていく。

 みな、明るく気持ちのいい者達だ。

 ここを訪れる者達で、この村の悪口を多く聞くことはない。

 確かに辺境の最西端で、帝国のちょっかいいざこざや、大型魔獣、野党や盗賊、中には亜人種の目撃もあるが、この「湖の村」はそれらから身を守る強固な「剣」と「盾」をしっかりと備えていた。

 併せて、衛生面の高さ、上下水道や村の中の整備による、生活水準の格段の向上。

 村人たちの健康も維持できれば安定した生産物もでき、色々な仕事による労力の恩恵、工芸品や、村の周りの農業や畜産と、領主にとってもこの村一つで多大な利益を得れるといっても過言ではないのではないだろうか。

 他の村や、下手すれば町を凌ぐほど活気に満ちている。

 それ故、色々と面倒事も有るには有るのだろう。

 自警団の修練や教育は、領主や貴族お抱えの近衛にも負けない程しっかりしていた。


 旅が終わればこういう町で余生を送りたいものだ。

 冒険者の一人はそう思いながら「王の門」から街道の分岐に着く。

「またくるといい。」

 冒険者たちはゆっくりと声のする方に体を向ける。

 そこには、背の高い、ティタと肩を並べれる程筋肉質でがっしりしたおとこが、腕を組み立っていた。

 胸当ても腰も分厚く、頑丈そうな鉄製の鎧。

 体格に合わせての特別発注オーダーメイドか?違和感も無く、彼の体躯の良さを更に強調している。

 両腕には肩から指先まで金属製の腕鎧をしており、複雑な動きもできるよう可動部分には細かい金属の板や形状のものが使われており、隙間から、刃物の先さえ通りそうにないほどだ。

 拳にはミカゲと同様握れば固くなる砂状の粉の入った手袋を装備し、その拳の周りは鉄製の小手、棘の様な物が付いており、やや赤黒く変色していた。

 まるでミカゲをティタのように大きくし、更にマッチョにしたような体躯であった。

 特徴と言えば銀色の短髪。鼻上にほぼ真っ直ぐに右頬から左頬にかけて大きな傷跡があった。

 放つ気配もただならぬもので、自然としているが全く隙がない。

 冒険者たちが身構えるまでも無く瞬時に倒されそうな程、素人目に見てもおっかない、ある程度の経験者ならヘタをすれば獲られる・・・といった感じだ。

「また来たいならいつでも来ると良い。」

 冒険者たちの誰かが思っていた事を、まるで察したような口ぶりだ。

自分達あっしらもそう思ってやした。」

 少し古ぎたない皮の鎧の様な物を着た、一番前を行く男が言った。

「ガッハさんは巡回ですかい?隊長さんが直々にまわるってのも・・・」

「王国や貴族の上官はフンぞってるだけだが、俺らは村の自警団だからな。

 こうゆう持ち回りは特に事情がない限りは俺はしている。」

 ガッハと言われた男は肩をすくめて見せた。

「それに少しもあったからな。」

 ガッハは冒険者の方に視線を送る。

に、村に来る分には俺は何もしない。俺達はあの村で悠々自適に余生を過ごしたいだけだ。

 だが、それを壊すというなら。」

 ガッハがにやりと笑う、その顔はさながら悪鬼。魔人でもこれほど邪悪なおぞましい気を放ち笑う者もいないのではないだろうか・・・。

「お前たちの住まう----の地までも追い詰め滅ぼしに行くと『依頼主』あるじに言っておくといい。」

 ガッハはそう言って硬直する冒険者の一人の肩を軽くたたき「気をつけて帰れよw」といって村の方に歩いて行った。


********************


 暗闇から空が解き放たれつつあり、空が白み始める。

 何人かの人はまだ残る肉や酒を食べて回っている。

 地面に大の字になって寝転ぶティタとその横で同じようになって寝ているヴィート。

 手にはそれぞれ酒瓶が握られており、のみ比べ対決をしてそのまま寝た様相だ。

 ティタは周りを見渡すと一応外周に篝火がたかれ、警備をしている者もいるようだ。

 部下達も思い思いの場所で寝て居る者や、支給された布や毛布で仮眠を取るものもいる。

 相変わらずにぎやかな一帯があり、そこにはルードとカエデ、そしてカエデを励ますようにエロオヤジさながらに酒を進めるステイシア。

 肉を焼いたり、調理係のケットはイートと同様器用に提供しては自分も飲み食いしていた。

 他の者達はそれぞれ寝床のある場所に戻ったのだろう。

「良ければお使いください。」

 給仕等をしていた何人かの一人が、ティタが起きた事に気づき毛布と敷布を持ってくる。

「ミカゲ様に単身切り込む姿、素敵でしたよ。」

そう言って手渡してくれた。

ヴィートには毛布を掛けている。

 ・・・・・・・もう少しねるか。

ティタは敷布を地面に敷いて毛布を何枚か被った。


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