3.自警団
「
長い筒を持ち、湖と平原のちょうど中間を見ている感じだ。
「ビアン、ちょっと
ヴィートは筒を持った小柄の、ぽっちゃりした男から長い筒を受け取る。そして同じように端を覗き、もう一端を石壁の外で・・・無く、隣の小ぶりの弓(短弓)を持った子の方へ、足元から上に…
「この距離なら仕留めれるかもしれないな。」
金髪の髪を
やや濃い緑で染められ、所々銀色の糸で
森の住人と言われるエルフという種族だ。
矢をつがえ、ヴィートの顔が上に上がるに合わせて、矢の先が向いてくる。ビアンはピシッと気を付けてヴィートの後ろで気を付けだ。
「すまんすまん、アルテ、慣れなくてついw」
ヴィートは
「何度も言うが、お前に見せるためにスカートを履いている訳ではない。」
矢が物凄い速さでヴィートの頬横を通り過ぎていく。
タン!
という感じの音がして、櫓の柱に深々と突き刺さる。
ヴィートは顔だけひねる様に、そこから状態を横に、ゆるりと動くように
「ちょっ、すいませんした!」
ヴィートの謝罪の様を下で見ていた子供達は
「ヘタレだ」とか
「アルテには頭が上がらないのよ」と
好き勝手言ってた。
「さて、小鬼、小鬼っと。」
ヴィートはビアンの指さすほうに望遠鏡を向ける。
「今巡回してるのは?」
ヴィートが覗きつつ口を開く。
「南周りに、早足、聞き耳、北周りに丸盾、長槍のはずだ。」
櫓の柱に刺さった矢を抜きながらアルテは言った。
「どうもおかしいな・・・」
ヴィートはポツリと呟く。
「だよな、動くわけでない、突っ立ってるしな、田舎者の
ビアンがヴィートに言う。
「アルテエッタ、早足組に鏑矢、丸盾組に魔法石で連絡しといてくれ。」
アルテは頷き、腰に入れた矢筒から一本を
手に取り矢じりに何かを取りつけ始めた。
「下着は白布が一番だよな。」と呟いた。
櫓から隣の建物の壁を借りて飛び降りる。そのヴィートの後を追って、銀色の光る物が突き刺さっていく。
ヴィートは櫓のほうに体を向けて、自分に飛んでくる矢を数本、顔の周りに飛んでくる蚊を、手で払うかの様な動作で
メラメラと、櫓の上から、鬼のような形相で弓を構えるアルテ。
ヴィートは素早く子供たちの後ろに隠れながら、掴んだ矢を子供に渡しながら耳打ちする。
矢を受け取った子供は頷いて矢を持って櫓の横にある小屋に入っていった。
「アルテエッタ、丸(丸盾、長槍)達に通常巡回で早足達と合流したら連絡をくれと言ってくれ。」
踵を返すと脱兎の如く町の中心へと消えていった。
ヴィートを射抜くために弓を下に構えていたアルテ。
構えを安定するために片足を櫓の壁に、足を上げ乗せて構えていたので、スカートから上質の絹のような太ももが露わになっていた。
やや紅潮した肌が、桃色の色合いに肌を染める。
ビアンは心の中で、
『眼福です!』
とヴィートに感謝しながら、長い筒を平原の真ん中に立っている小鬼達の方へと向けた。
「怪しいなぁ・・・・」とビアンは呟きながら。
小鬼-ゴブリン-
池や川の濁った様な緑色のような体皮、 体形は
雌の個体は人族の観察では発見されておらず、また好色が上に繁殖力も強いため、家畜や人族の、特に人間の女性など恰好の的となっている。
諸説あるのだが、彼らは昔「森の小人」の一種と言われていた。
森の中で、それこそ、エルフ達の様に自然に生活を営んでいた。
容姿こそ、そこまで変わりはしないが、エルフも、その頃は今の様に美しい外見ではなく、森の小人と大差はなかったと言われる。
大昔、天界の『美と知識の女神』と『闇の魔族』との戦いで、天界の女神にエルフが手助けをし、その褒美として今の容姿と知識の恩恵を「一部」エルフは
授かったとか。
そして、魔族に
個体で活動する『ハグレ』も存在し、他の小鬼よりも強く、能力や危険度も変わってくる。
集団で、数で襲ってくる小鬼の中で、用心棒の様なハグレの小鬼の一つに、
田舎者の
体格も大人と変わらず、冒険者などから奪ったであろう武器を使うほどの知識はある。
統率する小鬼の長から雇われる形で群れに属したりもする。
丁度今は違う位置に家畜を移動させていたので被害も無いとは思うのだが、その
牧草地に突如数匹の小鬼が現れたのだ。
一番大きな小鬼は体格に合っていない鉄の鎧を身に着け、錆付いた剣を片手に、もう片手には木の皮で出来たような盾を持っていた。
頭も木と鉄で作られた兜を被ってはいるものの、やはりこれもサイズが合っておらず、ムリクリ顎紐のような紐で締め、頭に被さっている感じだ。
他の二匹は小鬼と言われる体格、容姿をしているが、体に合った装備をしていた。
木や捕まえた獣の皮を張り付けたような胸、胴回りの鎧、酷く歪んだ小さい盾。
ここまでは二匹とも同じような装備だったが、持つ得物が、一匹は何かを塗り付けた様な
小ぶりの剣。同じく何かを塗り付けて変色した棍棒のような鈍器だ。
小鬼・・・ゴブリンの脅威に数による暴力と
「毒」
というものがある。
ゴブリンたちも子供並みの知能はある。
生きていくために獲物を確実に仕留めれる様にと、自らの排せつ物や食い散らかした食べ後の腐敗物などを武器に塗りつけ、襲ってくるのだ。中には即効性で、麻痺や致死性の産物が「稀」にでは産まれ、少しでも掠った獲物の末路など、性別こそ分かれるがどちらも悲惨な、口にすることさえ
ビアンはその三匹を観察しながら、どこか違和感を拭いきれずにいた。
確かにはたから見ればホブゴブリン一匹、そしてそのお供二匹なのであろうが、
それにしても、である、あんな平原に突っ立って目立つ行為自体その生態からは・・・???なのである。
まぁいいか、指示は
と心の中でビアンは呟いた。
櫓にヴィートから矢を受け取った子供が上がってきた。
ビアンも筒を見るのをやめ、そちらを見る。
「ありがとう」と笑みを浮かべ子供の頭を撫でるアルテ。
「ヴィートスマッシュ!」と言って子供の片手がアルテのスカートを捲り上げるように動き、フワッと舞い上がった。
ヴィート、あざっす!
ビアンは心の中でヴィートに感謝の咆哮を上げた。
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