第7話 邂逅
しばらく村人が向かった方向とは別の方角に歩いていた2人。
ミーアは少し前から感じていた疑問をフィアナにぶつけてみた。
「…で。」
「で?」
「あのまま、あの人達置いとくの?」
「うん、でも逃がすは気はないよぉ。村の皆の移動先教えられたら厄介だし。」
「そう、それでどうするの?」
そう訊ねられたフィアナは空を見上げ、ふう…と息を吐いた。
「‥‥もうすぐ日が落ちるねぇ。」
「うん、そうだね…?」
ミーアはじわじわと嫌な予感がしてきた。聞きたい、聞きたくない…聞きたくない?
「フィー… もしかして…怖い系…かなぁ?…なーんて。」
途端にフィアナが ”にやぁ” と笑った。(あーこれはあかんヤツ…)
「この辺てさー、確か出たよね?アンデッド系。」
「ヴっ…」
・・・・・・・・
「うっきゃあああああああああああああ!にっげろぉお!」
「きゃーーきゃーーきゃーーーいやぁーーー!!!」
魔法の灯りだけが灯る中、暗い森の中をものすごくいい笑顔でフィアナが走る。 その後ろに顔を引き攣らせたミーアが続き、その後ろを…
グールとスケルトン、ゴーストが大量に続く。
(まるで百鬼夜行ね…)
ぼんやりとミーアは(必死で逃げながら)そう思った。
「ちょっとだけ先に行くね。そのトレイン引き連れて村まで来て。」そう言い残して、フィアナは身体強化して廃村を目指す。
「え、ちょっとーー!フィー!フィーってばーー!」と言うミーアの叫びはまるっと無視された。
村に着くと、麻痺したまま動けなくなっている、5人の人影に近づいた。 5人は項垂れていたが、フィアナが近づいたのに気が付くと、顔を上げ憎悪を隠そうともせずに睨みつけてくる。
「あんた達、ミーアの質問に答える気になった?」
「我らに何をしようと無駄だ。早く殺せ。」
「ふーん。まあ悪者って大抵そう言うよねぇ。」
「‥‥…」
ミーアが近づいてきたのを確認すると周囲に防御結界を張り、びしっと敬礼した。
「ミーア隊長、お疲れさまです!」
「はぁ… ほんと…(精神的に)疲れたわ… それで、この黒服さん達は何か喋ったの?」
「ん~、喋んないから殺せってさ。」
「そっか… 残念だけど仕方ないね。」
「そういう事。 ただし… 」
「あんた達、楽には殺さないから覚悟してね?」
こてんと首を倒して、怖い事を言うフィアナはサイコキラーそのものであった。
ミーアは5人を一瞥した後、結界の方を見るとそこには先ほど引き連れて来た、アンデッドの魔物達が結界の中に入ろうと体当たりを繰り返している。
今からやろうとしていることは、押し黙っている5人が可哀そうと言うわけではないが、気が重い…と言うかはっきり言えば精神がゴリゴリ削られること請け合いだ。 何しろミーアは心霊ものとかスプラッターとか、怖いものが苦手なのだ。(今でももう私のライフは0に近いのに…)
「ミーア、上に行くよ。」
フィアナの合図で2人が身体強化をかけると、あり得ない跳躍力で2階建ての建物の上に飛び乗った。
「それじゃ、アディオス!」
フィアナが指をパチンと鳴らすと結界が崩れ、魔物が雪崩のように5人に襲い掛かる。
「「「「「 ぎゃああああ!ひぎいぃいい!」」」」」
ゴーストが5人の生気を奪うと、ぐちゃぐちゃに体が腐り、崩れかけているグールが臭い息を吐きながら、スケルトンがカタカタと骨を鳴らしながら近づいてくる。
生きながら腕が、脚が、顔が喰らわれていく。
ぐちゃっぐちゃ… ぶちっ… ぐちゃっ…
ゴリゴリ… ゴリ… ぱきっ…
「ひいいぃい、やめ・・・! ああがあああ!」
もう音だけでお腹いっぱいのミーアは目をぎゅっと瞑り、フィアナの後ろに隠れている。
一方、フィアナは眼下の様子を無表情な顔で黙って見つめていた。
5人の声が聞こえなくなりしばらく経った頃、フィアナはミーアをぎゅっと抱きしめ、「…終わったよ。」そう言って落ち着かせるように背中をぽんぽんと叩いた。
ミーアの蒼白な顔が少し和らぎ、赤味が差してきたころ、意を決したようにフィアナが言った。
「それじゃ、行こうか。」
「どこへ?」
「どこへ行こうかねぇ… もう死んだことになってるしね。」
「そうね… それなら、もう二度とこんなことが起こらないように王都へ行こう。」
「王都へ?」
「うん、まずはなぜ私たちが襲われたのか、その理由を探らないと。」
「そうだね、じゃあそうしよう。」
暗い森の中を王都があるだろう方角に向かって歩き出す。
途中アンデッドや夜行性の魔物や獣に襲われつつ、それを難なく撃退し、食べられる獣は魔法で加工し鞄に入れて食料とした。
食事に関しては問題ないのだが、2人は肉体的にそろそろ疲れが限界にきていた。
「疲れたね…」
「うん…」
「そろそろ休みたいけど…適当な所がないのがなぁ…」
休める所を探して歩いていると、突然目の前が開け、ロッジ式の家が現れた。
「えっ…なにコレ…」
「いきなり現れたよねぇ…」
「あやしい… 怪しさマックスだけど… どう思う?」
「怪しいけど…正直疲れたし休みたい。 体の周りに最小の防御結界をかけて中調べてみよう。」
2人は結界を展開して、恐る恐るドアに近づき、ノブに手をかけようとしたその時、背後から声がした。
「おまえ達は何者だ。ここでなにをしている?」
ばっ! と振り向いた2人は驚きに目を見開いた。
「「 エ…エルフぅうう!!?」」
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