第22話 ぶらり魔女散歩
今朝がた街への外出を思いついたフィアナとミーアの二人はさっそく侯爵の元へ行き、許可を求めた。
「もちろん君達の行動は基本自由にしてくれて構わない。 護衛‥‥は、ふふっ… 君達には必要なさそうだね。」
そう言って快く送り出してくれて、ついでに移動手段として馬も貸し出してもらえた。 乗合馬車でもあばそれに乗って.... と思っていた二人はその申し出をありがたく受け取る事にした。
「よかったねぇ。 まさかお小遣いまでもらえるとは思わなかったけど。」
「侯爵‥‥ ほんまにええお人やで‥‥。」
侯爵の屋敷から街までの約30分程の道のりを馬に乗り、のんびりと雑談しながら移動する。 閑静な住宅地を抜け、ほどなくすると街の入り口にたどり着いた。
街の入り口には馬留があり、二人はそこに乗ってきた馬を預けて歩いて中を見て回る事にした。 侯爵の名前を出すと快く預かってくれ、しかも代金はいらないという。 さすがは領主さまのご威光と、ほくほくしながら二人は街へくりだした。
「ほんとキチンと道も整備されてて、綺麗な街だねぇ」
「うんうんっ。 あ、みて、あっちにマルシェがあるみたい!」
今世初めて見る
「ねえ、これスパイスじゃない?!」
「あ、ほんとだねぇ」
「ショウガ、ターメリック、トウガラシ、クミン、コリアンダー、ガラムマサラ‥‥ マジか.... これっ、これで‥‥カレーが作れるぅうう!! やったーーー!」
「‥‥そんなに食べたかったんだねぇ‥‥ カレー。」
「だって!カレーだよ!? 日本人の国民食じゃん!! わくわくするじゃん!」
「あ~~、うん、そうだね‥‥?」
「なんで疑問形なのよーー! ミーアったらノリ悪ーいっ!」
「まあまあ、スパイス買おうよ。」
念願のカレー用スパイスが買えた後、漂ってきたおいしそうな匂いになんとなくお腹まで減ってきたような気がして、引き寄せられるように屋台へ向かった。 串焼きやの前を通りかかると店主がにこにこしながら手招きする。
「こんにちは! おじさん何がオススメ?」
「おう、嬢ちゃん元気だな! そうさな、うちの店は何でもウマイが一推しはコレだな!」
店主にずいっと手渡された串焼きはジュージューといい音をさせながら、香ばしく食欲を刺激する匂いがする。 受け取ったフィアナはカプリと口に頬張った。 するとみるみるうちにフィアナの顔が綻んでいく。
「おひさん! おいひいお、こえ!」
「そうだろ? うめーだろ?」
「あの‥‥ なんの肉なんですか?」
満面の笑みでもぐもぐと串焼きを食べるフィアナを横目に、恐る恐ると言った
「これはな、クロウラーの肉だ。 あんまり入ってこないんだが嬢ちゃん運がよかったな!」
クロウラー それは巨大な芋虫型の魔物である。 この世界では普通に魔物を食すのだ。 自分が今まさに食べているソレが、巨大な虫だと知らされたフィアナはそのまま固まってしまった。
もぐ‥‥ もぐ‥‥ ご‥‥っ きゅ‥‥ん。
「フィー‥‥ よく頑張って食べたね。」
「うん‥‥ おじさん‥‥ ご馳走様‥‥」
( 虫‥‥蟲‥‥ダメ、絶対‥‥うぐっ‥‥ )
店主に代金を払ったミーアは、ショックでフラフラと歩きだしたフィアナを追いかけた。 よく解っていない店主は「また来いよ~~!」と機嫌よく送り出してくれた。
そのまま目的もなく、ぶらぶらと歩いていると、屈強そうな人々が出入りする建物があった。 『冒険者ギルド』 と書かれたプレートが下がっている。
「ねね、見て、冒険者ギルドだって!」
「お~‥‥ なんか途端にゲームっぽくなってきたねぇ。」
「あははっ! 確かにねー! でもさ、まじめな話冒険者登録しておいた方がいいと思わない?」
「そうだね‥‥ お金稼ぐのに冒険者もいいかもね。」
「よし、そうと決まれば入るよ!」
ギルドの中は広々としていて、前世で言うところの郵便局か銀行のロビーのようになっていた。 依頼書の掲示板はさしずめATMコーナーになる。 掲示板を凝視する者、パーティーを組んでいるのか、仲間内で話をしている者、カウンターに並ぶ者。 ざっと見渡すだけでもかなりの人がいる。 まったく初心者の二人はとりあえずカウンターにいる女性に声をかけてみた。
「すみません、あのー。」
「冒険者ギルドへようこそ。 本日はどうされましたか?」
「私達二人共冒険者になりたいんですが。」
「はい、新規の登録ですね。 ではこちらの用紙に記入していただいて、簡単なテストをしていただきます。」
「テストですか?」
「ええ、簡単な実技を見て等級を決めます。 決まりましたらその後ギルドの規定などの説明をさせていただきますね。」
渡された用紙を受け取ると、二人はその内容をざっと読んでみた。 名前・歳・出身地・使用武器・既往歴・現在の健康状態 などなど。 ふと、記入に悩んだフィアナはミーアに聞いた。
「ねね、出身地と使用武器どうする?」
「うーん‥‥ 出身地‥‥ はこの国の南東の端の方に小さな村があったよね? そこでいいんじゃないかな。 使用武器は....」
そう言いながらミーアが周りを見渡すと、弓を背に背負って、堂々と屈強そうな男たちと並んでいる女性冒険者の姿が見えた。
「うん、あれがいいな。 私弓にするね。」
「あー‥‥ あの村か。 名前なんだっけ‥‥。 ああ、そうだギールの村。 んで、ミーアは弓にするの? あ、あの人見て決めたんだね? うん、 カッコイイね、あの人。 んー...じゃあ私は剣にするかな。 後衛と前衛で丁度いいっしょ?」
書くことが決まるとさらさらと記入し、カウンターへもっていった。
「書けました。 よろしくお願いします!」
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