第23話 ギスマスと言う男
「はい、記入漏れはありませんね。 それでは――――」
受付嬢が用紙を受け取ると、ちょっとチャラそうな中年男が近づいてきた。 男はフィアナとミーアの二人に気がつくと、一瞬顔をしかめた。
「レイリアちゃん、頑張ってるねぇー おや、その子達は?」
「あ、マスター お疲れ様です。 この方達は新規の登録希望者です。」
「ふ〜ん.... 新規ねぇ....」
そう言うと男は受付嬢レイリアが受け取った用紙をつまみ上げた。
「なになに‥‥ ふーん、辺境の村出身、14歳と15歳か‥‥ フィアナちゃんとミーアちゃんね。」
ぴらぴらと用紙を振りつつ胡乱げに二人を見ると、ふぅ....と溜息を吐き、次の瞬間鋭い目付きに変わり脅すように低い声になった。
「冒険者ってのはな、危険と隣り合わせなんだよ。 分かるか? お嬢ちゃん達が好奇心から冒険者になりてーってならやめときな。 後悔する事になるぜ。」
(カッチーン)
馬鹿にするようなその男の言葉にフィアナはキレた。
「誰?おじさん。 人を見かけで判断しちゃいけませんて小さい時両親から教えてもらわなかったの? マスターって言われてたけど、もしかしてギルドマスター? もしそうならここのギルドも大したことないねぇ~。 ぷーっくすくす。」
口では笑ってても目が全く笑ってない。フィアナのあまりのキレっぷりに、ミーアが若干引き気味になりながら嗜める。
(ちょっとフィー、言い過ぎだよ。 落ち着いて)
(だってさ、このおっさん失礼すぎない? 実力も見ないうちに決めつけてさ)
(ギルドマスターさんは心配してくれてるんじゃない?)
「あー、さっきから何をごちゃごちゃ話してるかわからんが、お帰りはあちらだよ。 おじょーちゃん?」
「ごめんなさい。 私の連れが失礼しました。 ‥‥ですが心配していただいて申訳ないのですが、私達は十分冒険者としてやっていける自信はあります。 どうかテストを受けさせていただけませんか?」
真剣なまなざしでギルドマスターと呼ばれる男を見つめるミーア。 しばらく軽くにらみ合っていたが、どうやらミーアの根気に負けたらしい。 男は大きなため息を一つ吐き出すと真剣なまなざしで二人を見た。
「分かった。 そこまで言うならテストしてやろう。 だが! 俺を認めさせなければ即刻ここから去って二度とここには来るなよ?」
「分かりました。 それでよろしくお願いします。」
「レイリアちゃん、悪いけど習練場開けてもらえる? 俺がテストするわ。」
「はーい‥‥ って。 えええええぇ! マスター?!」
突然のギルドマスターの宣言にあわてる受付嬢のレイリア。 あわてて鍵を探してどこかへ走っていった。
「んじゃ、お嬢ちゃん達は俺についてこい。」
・・・・・・・・・・・
演習場は前世のスタジアム程の大きさで半屋内になっている。 遠くには数体の木人が等間隔で設置してあリ、入り口横には井戸と男女別の更衣室があった。
「おし、じゃあどっちからでもいいぞー。 一人ずつかかってこい。」
(ふーん、舐めた言動のわりに一人ずつなんて、さすがにおバカではないみたいね。)
「それじゃ、私から行くわ。」
「おう、入り口んとこにあるヤツから好きなエモノ選んで攻撃してこいや。」
言われた場所に行くと、刃のつぶれた大剣、片手剣、レイピア、短剣、チャクラム、コンポジットボウ、ボウガンが置いてあった。
(登録は片手剣でしてあるから片手剣かなー。)
フィアナは片手剣を選んで振ってみる。 少し軽すぎる気がするが、まあまあ許容範囲だろう。 試しに数回素振りをしてみると、わかりやすくギルドマスターの方眉が上がった。
(ほう‥‥ 少しは使えるみてえだな。)
「それじゃこれで行くわ。」
「片手剣か、盾はいいのか?」
「邪魔だし、いらない。」
「はっ。 大した自信だな? 大怪我してもしらねーぞ。 ‥‥それじゃどこからでもどーぞ。」
フィアナは一旦深呼吸をする振りをして後ろを向くと、悟られないよう一瞬で身体強化をかけた。
(
「ふっ」と息を吐き、そのまま一直線に加速する。 男‥‥ギルマスの手前で宙返りをし、瞬時に背中に回ると剣の刃を首に当て‥‥ ようとしたが、後ろを振り返る事もなく弾かれた。
(チッ、なんだこれ‥‥ ガキの動きじゃねえ‥‥ もしかして何度も戦いを経験してる‥‥ のか?)
「おいおい‥‥ なんだよ、やるじゃねえか‥‥。」
「あんたもね。 まさか弾かれると思わなかったよ。」
お互いに距離を取り、隙を伺う様に動きを見るが動けるような隙がない。 頭の中でフィアナがシュミレーションを繰り返していると、突然ギルマスが両手を上げて”降参”のポーズをとった。
「お前がただのガキじゃないって事は分かった。 嬢ちゃんて言ってすまなかったな。 お前は合格だ。 次‥‥は ミーアだっけか? お前だな。」
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