第26話  もうひとりのジョンジュン③

 青年は名前を聞かれたとき、躊躇なく

「ジョンジュン」と答えた。

 それは彼の本当の名前ではないのだが、青年は自分のことをジョンジュンだと固く信じていた。

 それは本当の自分の記憶を消され、偽りの記憶を埋め込まれたせいだったのだガ、青年はそれを知らなかった。


 青年の家族は青年が6歳のときに、中国政府に拉致された。

そして青年は、6歳で家族と引き離された。彼はその日から、政府の監視下におかれる重罪人となった。そして研究対象とされ、おぞましい人体実験の対象になった。それは人間の記憶に対する人体実験だった。

 前世の記憶、それが研究対象だったが、最後に研究者たちがしたことは、彼の本当の記憶をすべて消し去り、別の記憶を埋め込むことだった。

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