第30話 もう一人のジョンジュン⑦ 秘密の儀式

 人為的に埋め込んだ記憶は、本当の記憶ではないから時間が経つと、いつしか消えてしまうという特性があった。継続的に記憶を埋め込む必要があった。リー・ルイたち主治医はその治療のために、その閉ざされた場所に配置されていた。

 本当は毎日記憶を埋め込み、記憶を強固なものにするべきなのだが、いつからか

主治医たちは、毎日記憶を埋め込むことは、しなくなるのだった。

 毎日記憶を埋め込むふりをして、その青年と治療室で過ごすが、主治医たちは、その人為的な記憶が何日の間、持続するかに、むしろ興味をもった。そして青年が徐々に記憶を取り戻しその美しい瞳に本来の輝きを取り戻す瞬間を、主治医たちは、秘かに待ち望んだ。主治医たちがその手で、青年の心に鍵をかけ、閉じ込めた記憶なのに、彼の記憶が戻る瞬間を待ち望むのだった。

 記憶がもどり聖なるものへと青年が変わる瞬間を、恋人を待つかのように待ち望んだ。そしてそれはいつしか秘密の儀式となるのだった。

 主治医たちは記憶を取り戻した青年と半日ほど聖なる満ち足りた時間を過ごし、

そしてまた上層部に気づかれぬうちに、青年に別の人間の記憶を埋め込むのだった。

 リー・ルイもいつしか他の主治医たちと同じように、その心の悪循環に陥っていた。



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