　モナリザの上司である　みなから「ボス」と呼ばれていた男は、モナリザに仕事の内容を話すとき、

「君は俳優なので、この任務を新しいドラマ撮影だと思えばいい。今回は女性役を引き受けたと考えて、これからの２年間その役になりきって生活するだけのことだ。君の演技力を伸ばすこともできるはずだ」

と、言った。

「ただ準備期間はたったひと月しかない。

　君は役の上でも女装の経験は皆無だから、一から学ばなければならないはずだ。　女性らしいしぐさを完璧にマスターし、声のトーンも変え、誰からも疑われないレベルにまでならなければならない。任務を遂行するには中途半端な女装ではダメなんだ。だから出来ることはすべて君にしてもらう。君にはつらいこともあるだろうが、頑張ってほしい。

　ただ君も得るものが多いはずだ。

　君の遺伝性の病気についても、研究費を惜しまず新しい治療法を研究してくれるそうだ。　

　我々も君をバックアップするために、もっとも優秀なスタッフをそろえたつもりだ。だから後は、君次第だ」