第32話 二人のパンチェン・ラマ11世②

「あなたが来ることはわかっていました」

と、チベットの聖なる寺の主は振り向くと、リー・ルイにそう言った。

 彼はリー・ルイに静かに歩み寄り、膝まづくリー・ルイの肩に片方の手を置いた。そしてリー・ルイに顔を近づけ、リー・ルイの瞳をじっと覗き込むように見詰めた。

「もうひとりの私は、元気なようですね」

と、彼は少し笑いながら言った。しかしその瞳は冷たく、青白い炎が揺らめいているようだった。

 彼から伝わってくるその感触は氷の鋭い剣のようだった。

 鋼と柔、二人のパンチェン・ラマに実際に会ってみて、リー・ルイが感じる印象はそうだった。

「そうです、私と彼は正反対」

 なおもチベットのパンチェン・ラマはリー・ルイに顔を近づけた。

「でも彼は私の一部であり、私も彼の一部なのです」

そしてリー・ルイの耳元へ顔をちかづけ囁くように言った。

「わたしたちはツイン・ソウルなのだから」

そして彼の唇がかすかに耳に触れた。

「認めれば良いのです。あなたは私の分身、もう一人のパンチェン・ラマを

愛していると・・・。それだけでずっと心が楽になるはずです」



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