第8話 王朝の後継者② 暗殺された第一皇子の息子ジョンジュン
K国は建前上は、理想の社会主義国家を目指す労働者のため国であったが、実際は一握りの建国エリートと軍部が実権を握る閉鎖的な国で、国を統治する最高権力者は世襲だった。そしてある意味最高権力者の一族は、王族のようなものだった。それゆへ、国際社会とメディアは最高権力者の一族を『K王朝』と呼んで揶揄した。
暗殺されたK国の第一皇子には、息子がいた。
その名をジョンジュンと云った。美人の母親に似た顔立ちの美青年で、頭も良く、性格も温厚。みなに愛された。
彼の父親もそうだったが、母国での自由がまるで無い後継者としての生活よりも、たとえ貧乏でも自由に好きなことができる、海外での一般人としての生活を、彼は望んだ。しかしその国にとってなによりも大切な、高貴な血を引く青年であったことから、その望みは叶わぬ願いでもあった。なぜなら資格のないものがその国を継ぎ、自由勝手な振る舞いをして、国民を苦しめ、世界平和を乱していたからだ。
国際秩序を無視し、国民を飢えさせてでも異常な軍備拡張に走り、核武装を試みる現在の国家元首を、国際社会は苦々しく思っていたのだ。そして国際社会の中には、秘かにジョンジュンを次の指導者として育てようとする勢力があった。
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