概要
岩田屋町で起きた失踪事件の末、僕は「彼女」を失う。
「××」くぐもった声で秋穂が言った。
「なに?」
「私のこと、好き?」
「好きだよ」と僕は言った。
「どのくらい?」
「秋穂が想像しているよりも、ずっと」
「いつから、好き?」
「はじめて会った時から」
「嘘」
僕は少し笑った。
兄貴の失踪、秋穂のアルバイト先の先輩の中谷優子と、その彼氏、川島疾風が行方不明になった。
彼らの足取りを追っていくうちに、陳腐だけれど、僕は「愛」について考えていく。お姫様と用心棒、好きな女の子の歪み、奴隷としての僕、正当な正義の血筋、やくざ、小さな神様……。
あずきが僕を見た。
「何があったのか知らないし、あたしは前にも言ったけど行人くんの夢とか意見とか別に聞きたくない。でも、一つだけ言わせてほしいの。私が憧れた関係は行人くんと秋穂さんだから。だから、
「なに?」
「私のこと、好き?」
「好きだよ」と僕は言った。
「どのくらい?」
「秋穂が想像しているよりも、ずっと」
「いつから、好き?」
「はじめて会った時から」
「嘘」
僕は少し笑った。
兄貴の失踪、秋穂のアルバイト先の先輩の中谷優子と、その彼氏、川島疾風が行方不明になった。
彼らの足取りを追っていくうちに、陳腐だけれど、僕は「愛」について考えていく。お姫様と用心棒、好きな女の子の歪み、奴隷としての僕、正当な正義の血筋、やくざ、小さな神様……。
あずきが僕を見た。
「何があったのか知らないし、あたしは前にも言ったけど行人くんの夢とか意見とか別に聞きたくない。でも、一つだけ言わせてほしいの。私が憧れた関係は行人くんと秋穂さんだから。だから、
おすすめレビュー
新着おすすめレビュー
- ★★★ Excellent!!!姫を支える用心棒が、一歩踏み出して共に並んで歩こうとするまでの物語
同作者の作品、
「あの海に落ちた月に触れる」
「眠る少女」
の次に本作を読ませていただきました。
前作それぞれの登場人物が多数登場し、絡み合ったり意外な面を見せたり…と、作品の枠を超えて楽しめる、「岩田屋町」青春群像劇の中の一作です。
登場人物は多数いるんですが、それぞれが他者との関わりや自分自身に向き合って進んでいく方向が、互いに織りあって大きな物語を形成していく様が、実に凄いんです。
「ここでそう絡んでくるのか!」と、嬉しい驚きを何度も味わえます。
本作の主人公は、「あの海〜」でも主人公だった少年、行人。
まだ中学生だった彼が、六年経って、一番好きな女の子に会いに行くまでの物語。
…続きを読む - ★★★ Excellent!!!本当の大切さに気づくのは失くしそうになった時ではありませんか?
「あの海に落ちた月に触れる」から6年。
この「南風に背中を押されて触れる」では、
15歳だった少年は21歳になっています。
相変わらず軽薄さを纏って、
一番大切な人には触れられずにいる、行人。
けれど、様々な事柄や事件によって
まさに押し出される様にして、
やっと自分の本当に大切な人や心と向き合わなければならなくなるのです。
人が本当に動き出す時と言うのは、
大切なものを失くしそうな時なのかもしれません。
他の郷倉四季さんの作品を読んだものとしては、
知っている登場人物が思わぬ形で関わってくるのが、この作品だと思います。
いえ、この作品から読んだ人にとっては
私とは違って、この作品…続きを読む